チャラン・ポ・ランタンが7月19~21日に東京・クラブeXにて、結成15周年記念公演「RANTAN-CIRCUS~とおまわりしつつ、とおあまりいつつ~」を開催。この記事では20日のマチネの模様をレポートする。
大道芸人だった姉の小春が高校生だった妹のももを誘い、2009年に結成したチャラン・ポ・ランタン。2014年にavex traxよりメジャーデビューし、2016年には大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマ「進め、たまに逃げても」をリリースするなど、作品をコンスタントに発表しながらライブ活動を続けてきた。2021年に2人は所属事務所ソニー・ミュージックアーティスツから独立し、小春が代表取締役社長、ももが代表取締役副社長となり、合同会社ゲシュタルト商会を設立。そして2024年7月、結成15周年を迎えた。
サーカスの幕が上がる
「RANTAN-CIRCUS」と銘打たれたチャラン・ポ・ランタンの15周年ライブの会場は、360°の円形ステージを2階建ての客席が取り囲み、カラフルなペナントや電飾などが彩る、まさにサーカステントな装い。チャラン・ポ・ランタンの世界観を構成する大きな要素の1つであるサーカスを、2人は15年の活動の中で出会ったバンドメンバーやパフォーマー、スタッフ、そしてファンとともに作り上げた。
開演時間になるとステージにはパントマイムユニット・ゼロコの2人が現れ、チャラン・ポ・ランタン結成時のエピソードを言葉を発さずに表現。新曲「内緒の唄」のメロディが流れる中、小春からもらったぶたのぬいぐるみを持った“もも”のそばで、“小春”がアコーディオンを開くとその蛇腹が光り出し、ライブの始まりを告げるファンファーレが会場に鳴り響いた。アコーディオンを持った小春を先頭にパフォーマーたちが現れる。パレードのようにステージを練り歩き、最後にももが登場すると、チャラン・ポ・ランタンはメジャーデビュー曲「忘れかけてた物語」でチャラン・ポ・ランタン流のサーカスをスタートさせた。
ティーパーティにアクロバット……多彩なステージを展開
Juggler Labyが華麗なジャグリングでサーカスムードを演出した「時計仕掛けの人生」、サーカスがコンセプトのライブには欠かせない「サーカス・サーカス」、バンドメンバーの迫力のあるプレイが光った「潮時」など、チャラン・ポ・ランタンは、この15年間のうちに出会った仲間たちとパフォーマンスを繰り広げていく。「お茶しよ」では、パニエをまくり上げるとティーカップになる仕掛けのある衣装を着たパフォーマーたちがステージをくるくると周り、「ワーカホリック」ではスーツ姿のパフォーマーたちがコミカルに踊り、楽曲の世界観をにぎやかに盛り上げた。人気曲「メビウスの行き止まり」では、ももがアクロバットパフォーマー・SUKE3&SYUに体を預けてアクロバットの大技を披露。観客はこのサーカスを作り上げる一員として、「オイ! オイ! オイ!」と熱い掛け声をステージに送った。
ライブ中盤、誰もいなくなったステージにはゼロコ扮するチャラン・ポ・ランタンのファンが登場。2人はグッズ自慢を繰り広げ最初は張り合っていたものの、最終的には打ち解け肩を組んでステージをあとにするというコミカルな劇を繰り広げた。空中ブランコに見立てたライトが舞う中で届けられた「空中ブランコ乗りのマリー」では、ダンサーの長谷川愛実がエアリアルリングを使って宙を舞い、楽曲の世界観をより強く印象付ける。
ここまでパフォーマーたちと華やかなステージを繰り広げてきたチャラン・ポ・ランタン。東日本大震災時に部屋にこもって小春が作ったという「人生のパレード」からは2人とバンドだけのステージが続く。小春が奏でるアコーディオンの哀愁ただよう音色に乗せ、ももは、ときに切なく、ときに力強く、まるで人生の波のようにドラマチックな歌声でメッセージを紡いだ。コロナ禍に生まれた「空が晴れたら」で繊細な歌声を重ねた2人。続く「ほしいもの」では涙腺を刺激する美しいメロディをももが伸びやかに歌い上げ、小春とバンドメンバーはそれを後押しするように力強い演奏を届けた。
全然儲からない、でもいいんだよ
小春が「私がやりたいことってこういうこと。全然儲からないんだよ(笑)。でもいいんだよ。やりたいことってだいたいそうだろ? そもそもアコーディオンよう長くやってますよね。飽き性で、奇跡的に歌を歌うことだけは続けられた妹とたまたま15年やれて、あなた方とお会いすることができて本当によかった」と15年の活動をしみじみと振り返り、会場は感動的な雰囲気に。まだまだ話し足りない様子の小春が口を開いたところに「ごめん、お待たせー!」とピンクのウィッグをかぶりスパンコールのつなぎに着替えたももが会場中に光を反射させながら登場すると、生真面目な姉にマイペースで陽気な妹という、これぞチャラン・ポ・ランタンとも言える構図に客席からはどっと笑いが起こった。チャラン・ポ・ランタンの魅力の1つでもある、実の姉妹ならではの歯に衣着せぬ軽妙なトークを繰り広げたあと、2人は歌謡曲テイストな新曲「明日には忘れて」を披露。15周年という節目の新曲に期待が高まる中、ももはチャラン・ポ・ランタン流の“ひと夏の恋”の歌を爽快感たっぷりに歌ってみせた。
Coppelia Circusのダンサーたちがセクシーなダンスで盛り上げる「Oppai Boogie」を経て、ライブは終盤戦へ。「みてるよ」で恋愛におけるドロドロとした感情をももが軽快に歌ったあと、小春とバンドが代表曲「進め、たまに逃げても」のイントロを鳴らすと観客のテンションが急上昇。手拍子に乗ってももはエネルギッシュな歌声を響かせ、会場の盛り上がりはピークを迎えた。
この声が出なくなるまで歌いたいよ!
ゼロコの2人がチャラン・ポ・ランタンのこれまでを再びパントマイムで表現し、そっとぶたのぬいぐるみを床において去ると、そのぶたを黒髪おかっぱのウィッグをかぶったももが拾う。そしてチャラン・ポ・ランタンは最新曲「内緒の唄」を披露。チャラン・ポ・ランタンのももと言えばおかっぱヘアだったが、独立を機にその姿は封印しており、ひさしぶりの“おかっぱでぶたを抱えて歌うもも”に会場のファンたちは興奮を隠せない様子で旗を振り、ステージに熱い視線を送った。そのままの姿で「旅立讃歌」「ぽかぽか」を高らかに歌い上げたもも。「楽しかったなあ。みんながここに来るまでどういう人生を送ってきたかは知らないけどさ、たまたま私たちと出会ってくれて、今日を選んでくれて、本当にありがとう」と感謝の思いを伝え、「最高」を歌い始める。小春と観客と掛け合い、心底楽しそうに歌ったももは「15年と言わずに20年、30年、もう声は枯れているけど……この声が出なくなるまで歌いたいよ!」と叫び、大喝采を浴びた。最後にチャラン・ポ・ランタンは2人編成で「今日のさよなら -encore-」を披露する。狂騒の余韻をアコーディオンの物悲しい音色が助長させ、一抹の寂しさを残してサーカスの幕を閉じた。
セットリスト
チャラン・ポ・ランタン結成15周年記念公演「RANTAN-CIRCUS~とおまわりしつつ、とおあまりいつつ~」2024年7月20日マチネ クラブeX
01. はじまりのファンファーレ
02. 忘れかけてた物語
03. 時計仕掛けの人生
04. サーカス・サーカス
05. 脱走
06. 潮時
07. お茶しよ
08. 無神経な女
09. ワーカホリック
10. メビウスの行き止まり
11. 空中ブランコ乗りのマリー
12. 人生のパレード
13. 空が晴れたら
14. ほしいもの
15. 明日には忘れて(新曲)
16. Oppai Boogie
17. みてるよ
18. 進め、たまに逃げても
19. 内緒の唄
20. 旅立讃歌
21. ぽかぽか
22. 最高
23. 今日のさよなら -encore-