サザンオールスターズが9月23日、茨城・国営ひたち海浜公園で行われた音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」に出演。このフェスの大トリとしてライブを行った。
最後の夏フェス、“史上最大”の目撃者
今年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」は開催25周年を記念し、8月に千葉・千葉市蘇我スポーツ公園で5日間、9月に国営ひたち海浜公園で5日間、計10日間の日程で行われた。なお、国営ひたち海浜公園で「ロッキン」が行われるのは2019年以来5年ぶりのこと。このメモリアルな「ロッキン」に花を添える形で最終日のヘッドライナーを務めることになったサザンは、出演発表時に今回が「最後の夏フェス出演」となることをアナウンスし、大きな話題を集めた。
この“夏フェス卒業”宣言は、平均年齢68歳のサザンオールスターズが夏の野外でライブをすることの現実と向き合いつつ、後進のミュージシャンに今後の夏フェスの未来を託そうという思いを込めたもの。そんなバンドの決断を受け、「ロッキン」の事務局はサザンオールスターズの持ち時間を100分に設定した。これは「ロッキン」に出演するアーティストの単独での出演時間としては最長の記録となった。また、会場へ足を運べない人のために全国332館の映画館、611スクリーンという規模でライブビューイングも開催。全席がソールドアウトしたこの催しはライブビューイング史上最大規模であり、最大動員数の記録を打ち立てた。
「このステージに立てるのを楽しみにして参りました」
サザンのライブスタート時刻が間近に迫ると、自然発生的に拍手が湧き起こった会場。大きな期待感に包まれるGRASS STAGEに姿を見せたメンバーは手をつないで5万人に挨拶をし、「女呼んでブギ」で“最後の夏フェス”の幕を開けた。軽快なリズムに乗って歌声を響かせる桑田佳祐(Vo, G)は曲中「ひたちなかにお集まりの皆さん、ありがとう!」と言ってオーディエンスを歓迎。曲終わりには「皆さんに会えるのを、このステージに立てるのを楽しみにして参りました。サザンオールスターズです!」と名乗りを上げた。そんな自己紹介を経て届けられた2曲目は新曲の「ジャンヌ・ダルクによろしく」。曲が始まるなり、ステージ後方の巨大ビジョンには「SOUTHERN ALL STARS」という文字が映し出される。大きく掲げられたバンド名を背負ったメンバーは無骨で力強いロックサウンドを高らかに鳴らし、その唯一無二のバンドアンサンブルでひたちなかに集う5万人の“夏の魂”を熱く鼓舞してみせた。
オーディエンスの小気味よい手拍子の音が演奏を彩った「My Foreplay Music」を経て、「海」では桑田と原由子(Key)の柔らかなハーモニーにサックスの音色が優しく寄り添う。続けてバンドが届けたのは三線の音色が聴き手を南国へと誘う「神の島遥か国」。桑田が「後は踊ろうparadise」という歌詞に合わせて“この場所”を指差すと観衆はゆったりとしたハンドウェーブで楽しく音に乗り、大海と見紛うほどの雄大な光景を作り上げた。
ヒットメドレーに止まぬ歓声
暮れゆく空をバックに、バンドはその後も「栄光の男」「愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~」「いとしのエリー」とヒット曲の数々を惜しみなく連投。イントロが鳴るたびに歓喜の声が上がるという盛り上がりの中、桑田は色とりどりの歌声で楽曲の世界観を鮮やかに浮き上がらせ、オーディエンスの耳を大いに楽しませる。また「思い過ごしも恋のうち」ではデビュー当時の歌唱映像がビジョンに映し出され、今現在のメンバーの姿とオーバーラップするという粋なひと幕も。心踊る演出の中でバンドが歩んできた長い道のりも感じさせつつ、ライブは進んでゆく。
9曲を終えてMCの時間を設けると、桑田は改めてこの場に集まったファン、全国各地のライブビューイング会場からライブを楽しむファンへ向けて感謝の意を表し、夏フェスへの出演はこれが最後になることを伝えた。そして桑田はこの日同じステージに立った後輩バンド、後輩グループの名前を次々に挙げていき、バックステージで交流したことを明かす。「ヤバイTシャツ屋さん、好き? 楽屋で話しちゃった。Creepy Nutsもね。最近の若い子はいいね」。朗らかな声色で語られるエピソードの数々にオーディエンスが沸き立ったところで桑田はコール&レスポンスを求めて一体感を誘い、「東京VICTORY」でライブを後半へと進めていく。直前のコール&レスポンスでの勢いそのまま、オーディエンスによる「Wow wow」のシンガロングが会場全体の熱をグッと引き上げると、桑田もそれに応えるかのように終盤で熱いシャウトを響かせた。
夏の終わりの大放水
そして斎藤誠(G)のカッティングギターの音色が「恋のブギウギナイト」の始まりを告げれば、サザンオールスターズが繰り広げるショーはよりディープに、よりカラフルに展開していく。ライブ初披露となったこの曲では無数のレーザーがGRASS STAGEの巨大な空間を飛び交い、艶やかに舞う女性ダンサーやアクロバティックなフロア技を決めるブレイクダンサーが観る者を混沌のダンスフロアへと誘う。涼やかな声色で曲を歌い上げる桑田は「ロッキン最高」「今夜はありがとう」と歌詞をアレンジし、スタイリッシュにステップを刻んでみせた。「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」からシームレスに突入した「マチルダBABY」で花火がスパークする中熱いプレイを見せたバンドは「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」でさらに勢いを加速させ、桑田は「もっといけますか皆さん! 皆さんを愛しています!」と熱い言葉でオーディエンスを鼓舞する。ステージ上から放たれるタイトなバンドアンサンブルに、5万人は拳を力強く上げて応え、会場は大きな一体感に包まれた。
ライブも佳境へと差し掛かったそのとき、桑田はゆったりとしたメロディに乗せて「夏フェスは暑すぎて おじいさんとおばあさんは goodbye」「泣かないで渋谷さん 皆さんこれからもよろしく」というメッセージ、そして「緑黄色社会の皆さん、ヤバT、WANIMA、ももクロ、クリーピー、イエモンもよろしくね」という後輩たちへのエールを歌い上げた。GRASS STAGEが感動的なムードに包まれたのも束の間、オーディエンスが待ち望んだ「みんなのうた」へと突入すると、桑田はお決まりの大放水をファンにお見舞い。ラストのサビでは「君の体 また濡れる」と歌って“おかわり”の放水もしてみせ、「おじいさんとおばあさんは goodbye」と歌い上げたばかりとは思えないほどの大暴れでファンを熱狂させた。そして「マンピーのG★SPOT」でライブ本編は締めくくられ、サザンオールスターズにしか作り上げることのできない甘やかでちょっと危険な狂騒の中、ひたちなかの夜空に花火が打ち上がる。演奏の音が鳴り止んでもオーディエンスの熱狂は冷めやらず、鑑賞エリアからは即座にアンコールを求める声が上がった。
未来へのバトンを後輩に託して
熱烈なアンコールに応える形ですぐにステージに戻ったバンドがここで届けたのは「希望の轍」。イントロで原が奏でた美しい調べに会場は大きく沸き立ち、桑田が高らかに響かせる歌声に心地よさそうに身を委ねた。そしてそのまま「勝手にシンドバッド」へと突入すると、桑田は楽曲のクライマックスでこの日の公演に出演した全アーティストであるヤバイTシャツ屋さん、ももいろクローバーZ、緑黄色社会、Creepy Nuts、WANIMA、THE YELLOW MONKEYをステージに呼び込んだ。最大級のサプライズに会場がこの日一番の熱狂に包まれる中、桑田にマイクを向けられたR-指定(Creepy Nuts)やKENTA(WANIMA)は破顔しながら歌声を乗せる。桑田のリクエストによって吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)が曲を締めくくると、最後に桑田は「玉井さん!」と呼んで玉井詩織(ももいろクローバーZ)に挨拶を託した。両親がサザンオールスターズのファンで、「栞のテーマ」から詩織という名前を授かった玉井。昨年行われた「茅ヶ崎ライブ」の際に桑田から贈られた野球帽を被った彼女は「桑田さんのおかげで詩織という名前になりました。ありがとうございます!」と万感の表情で思いを伝える。夏フェス最後のステージで後進のアーティストたちと感動を分かち合い、未来へのバトンを力強く託したサザンオールスターズ。最後に桑田は「いったん我々は卒業させていただきますけども、本当に若い、素晴らしいアーティストたちにこれからがんばっていただいて、今後も素晴らしいこのフェスが、素晴らしくあるように、信じております」とメッセージを送り、ひたちなかのステージをあとにした。
セットリスト
サザンオールスターズ「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」2024年9月23日 国営ひたち海浜公園
01. 女呼んでブギ
02. ジャンヌ・ダルクによろしく
03. My Foreplay Music
04. 海
05. 神の島遥か国
06. 栄光の男
07. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~
08. いとしのエリー
09. 思い過ごしも恋のうち
10. 東京VICTORY
11. 真夏の果実
12. 恋のブギウギナイト
13. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
14. マチルダBABY
15. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
16. みんなのうた
17. マンピーのG★SPOT
<アンコール>
18. 希望の轍
19. 勝手にシンドバッド