甲本ヒロト(Vo, Harmonica / ザ・クロマニヨンズ)と内田勘太郎(G / 憂歌団)によるブルースユニット・ブギ連のライブツアー「ブギ連LIVE『第2回 ブギる心』」が10月11日から19日にかけて東京、愛知、京都、大阪、福岡の全国5会場で開催された。この記事では初日の東京・東京キネマ倶楽部公演の模様をレポートする。
ハーモニカの取り間違えもセッションの一部に
1stアルバム「ブギ連」以来5年ぶりの作品となる2ndアルバム「懲役二秒」を10月2日にリリースしたブギ連。ライブが行われるのも5年ぶりで、会場は2人が紡ぐ高純度のブルースを欲する大勢のファンで超満員となった。開演時刻を迎えると、アルバム「懲役二秒」のオープニングにも入っているエンマコオロギの鳴き声が場内に響き渡る中、オーバーオールを着た甲本と内田がステージへ。インストゥルメンタルのブルースナンバーをギターとハーモニカで奏で、ライブの幕開けを告げた。曲中、高揚感を顔にたたえた甲本が両手を上げたのをきっかけに場内の温度が高まり、客席からクラップが発生。1stアルバムの収録曲「ブルースがなぜ」で甲本が「ブルースがなぜ お前らを呼んだ」と歌いながら客席を指差すと喝采が起こり、2ndアルバムの収録曲「畑の鯛」ではユニークな歌詞に合わせた甲本の手振りに客席から笑い声が漏れる場面も。そのほか、甲本は曲間にシェーのポーズを決めるなどところどころおどけた姿を見せ、ブギ連のひさびさのライブを満喫している様子をうかがわせた。
マディ・ウォーターズら多くのブルースマンが歌ってきた有名曲「Rollin' and Tumblin'」を下敷きにした「オイラ悶絶」からは、内田による唯一無二のスライドギターが炸裂。アドリブを多く盛り込んだ火を吹くようなギターの音色に、甲本も巧みなハーモニカのサウンドを重ねる。セッションするようにアルバムの楽曲をレコーディングしたという2人は、ステージ上でも泥を練るようにして自由にその場限りの音を紡いでいった。途中、甲本が異なるキーのハーモニカを間違えて手にしてしまう瞬間もあったが、それさえも“Show Must Go On”なブギ連のライブの醍醐味へと昇華された。
甲本ヒロト「今日は全部が特等席」
その後も1stアルバムと2ndアルバムの楽曲を織り交ぜながら、濃度の濃いブルースを場内に充満させていくブギ連。時折、甲本は内田の指さばきをじっと見つめ、電光石火のごとく次々に展開されるギターの音色に酔いしれる。MC中、甲本が「ここ、特等席です!」と観客に自慢すると、客席からは「この席もいいよ!」との声が。その声に笑顔を浮かべた甲本は「今日は全部特等席にしてありますので、楽しんで帰ってください」とうれしそうに呼びかけた。
「今日、2人の椅子の距離は勘太郎さんに決めてもらいました。『勘太郎さんの記憶の中、思い出の中で、スリーピーとハミーの距離感どれくらいだった?』と聞いたら『これくらいかな?』と言ったのでこの距離になりました」という甲本の言葉を経て披露されたのは「49号線のブルース(スリーピーとハミー)」。この情緒あふれるブルースナンバーは内田が作詞した2ndアルバムの収録曲の1つで、憂歌団が1976年にスリーピー・ジョン・エスティスとハミー・ニクスンの来日ツアーに帯同したときの思い出がつづられている。甲本の提案により「憂歌団」というワードが使用された「旅してまわった 憂歌団と一緒に」という一節が歌われると、場内に拍手が沸き起こった。さらに2ndアルバムのタイトル曲「懲役二秒」が披露され、会場に帯びる熱がますます増大。続いて甲本と内田は1stアルバムのタイトル曲「ブギ連」で「おれたち ブギ連」と堂々と名乗り、ひとたびステージをあとにした。
鳴り止まない拍手と手拍子に応える形で始まったアンコールでは「波を越えて」が演奏され、甲本は内田が奏でるギターに合わせて歌声ではなく、「ええなあ」という感嘆の声を乗せていった。観客はそんな2人が生み出す至福の時間にじっくりと浸る。再びコオロギの鳴き声が響く中で披露されたラストナンバー「ブラブラ」でも得も言われぬ味わいが会場に広がり、終演後も余韻として観客の胸に残り続けた。
セットリスト
ブギ連LIVE「第2回 ブギる心」2024年10月11日 東京キネマ倶楽部
01. ブギ連ジャイブ
02. ブルースがなぜ
03. やっとられん
04. 畑の鯛
05. オイラ悶絶
06. 闇に無
07. 気まぐれに首が
08. トッポい世界
09. バットマン・ブルース
10. 軽はずみの恋
11. あさってベイビイ
12. 黄金虫
13. 49号線のブルース(スリーピーとハミー)
14. 懲役二秒
15. ブギ連
<アンコール>
16. 波を越えて
17. ブラブラ