折坂悠太のホールツアー「呪文ツアー」の最終公演が10月18日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて行われた。「呪文ツアー」は折坂が6月にリリースした4thアルバム「呪文」のリリースツアー。9月18日に宮城・日立システムズホール仙台 シアターホールでスタートし、全国9会場にて行われた。
「今日も今日だけのライブをやりたいと思います」
開演時刻を迎えると、折坂がバンドメンバーのsenoo ricky(Dr)、宮田あずみ(Contrabass)、山内弘太(G)、ハラナツコ(Sax, Flute)とともに舞台に登場。広いステージの中央に身を寄せ合うように設置された楽器や機材の前に着くと、5人は「スペル」でライブの幕を開けた。「坂道」の優雅な演奏へとつなげたのち、折坂はこのツアーを振り返りつつ「昨日も来ていただいた方もいるかもしれませんが、その日その日で違う表情を見せるのが、生きている人間のリアルなんじゃないかと思って。なるべくそれを生のままお届けするというのが、私に何かできることがあるとすればそれぐらいのことだなあという気持ちでライブをやってまいりました」と語る。そして「今日も今日だけのライブをやりたいと思います」と告げ、「人人」「夜香木」「凪」「炎」を続けて演奏。揺らぎのある演奏としなやかな歌声で、観客を魅了していく。「凪」では7色のビビッドな照明が舞台を妖しく照らし、独特のサイケデリアが会場に満ちていった。
会場中を光が包んだ「朝顔」
その後折坂は舞台に座り込みながらギターを奏で、バンドメンバーとともに「信濃路」を演奏。ほのかな郷愁を感じさせるサウンドが長らく鳴り続けたところから、5人はシームレスに「正気」「朝顔」をパフォーマンスし、会場中の観客を終始釘付けにする。「朝顔」後半のサビでは、霧が晴れるように一気に場内が明るくなり、そこに折坂の朗々とした歌声が力強く重なった。さらに「夜学」が続けざまに披露されると、演奏が終わるやいなや客席から歓声が。5人のパフォーマンスをしばらく食い入るように見届けたオーディエンスは、その充足感を大きな拍手で表した。
「努努」で客席にハンドクラップを巻き起こしたのち、折坂が奏でたのは「さびしさ」。マンドリンのキラキラと美しくもはかない音色とともに、たおやかな歌声を届けていく。演奏後に折坂は、ここまでツアーをともに回ってきたバンドメンバーに対する思いを語り「一緒に歩んでくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを言葉にした。「心」「無言」を経て、折坂の語りに導かれるように流れ出したのは「ハチス」の軽やかなイントロだ。甘く豊潤なフレーバーに満ちたソウルサウンドに真摯なメッセージを乗せて届け、深い余韻を残したまま5人はステージをあとにした。
わかりやすくない戦いをする人に
アンコールで1人姿を現した折坂は「それぞれの仕事において、誰も知らないその人の中での抗いとか工夫とかが、ちょっと話が飛ぶかもしれないですが、戦争を避ける道につながるんじゃないかなと思っています。わかりやすくない戦いをする人に歌います」と語り、元ちとせへの提供曲「暁の鐘」を弾き語り。着飾らないまっすぐな歌声が会場中に響き渡り、その声に観客はじっと耳を傾けた。そしてラストは5人で「トーチ」を演奏。アウトロが終わり、客席から湧き起こった拍手を浴びながら、折坂はギターを高く掲げて「渋谷!」と大きく叫ぶ。そうして1カ月にわたる「呪文ツアー」は幕を閉じた。
なお折坂は2025年4月4日に東京・NHKホール、11日に大阪・ザ・シンフォニーホールでワンマンライブ「のこされた者のワルツ」を開催。今回のツアーに参加したバンドメンバーに、yatchi(Piano)、宮坂遼太郎(Per)、波多野敦子(1st Violin, String arrangements)、鈴木絵由子(2nd Violin)、角谷奈緒子(Viola)、多井智紀(Cello)を加えた自身最大の11人編成でパフォーマンスを披露する。チケットぴあでは11月4日23:59まで、チケットの先行予約を受付中。
セットリスト
「呪文ツアー」2024年10月18日 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
01. スペル
02. 坂道
03. 人人
04. 夜香木
05. 凪
06. 炎
07. 信濃路
08. 正気
09. 朝顔
10. 夜学
11. 努努
12. さびしさ
13. 心
14. 無言
15. ハチス
<アンコール>
16. 暁の鐘
17. トーチ
公演情報
折坂悠太「のこされた者のワルツ」
2025年4月4日(金)東京都 NHKホール
2025年4月11日(金)大阪府 ザ・シンフォニーホール