ライブイベント「Scramble Fes 2025」が11月16日に東京・Spotify O-EASTで開催された。
大型ライブイベント「ツタロックフェス」を手がけるCEミュージッククリエイティブが2015年に始動させた「Scramble Fes」。今回、ライブナタリーとの共同主催という形で2年ぶり7度目の開催が実現した。ライブはメインステージとサブステージで交互にパフォーマンスが披露されるスタイルで進行し、オープニングアクトを含む計8組が熱演を繰り広げた。
泉大智
オープニングアクトを務めたバンド・TiDEがソウルフルなアーバンポップで会場を温めたのち、トップバッターとしてステージに上がったのは、DISH//のドラマーとして活躍するかたわらソロプロジェクトでも精力的に活動中の泉大智。赤い変形ギターで奏でるアルペジオを皮切りに、バンドメンバーとの轟音ジャムセッションでライブの口火を切ると、サイケデリック色の強いグランジロックナンバーを次々に畳みかける。折に触れて「こういうイベントに呼んでもらいたいとずっと思っていたのでうれしい」との胸中を口にしながら、勢い余って何度もギターの弦を切るなど激情のパフォーマンスを展開した泉。ラストはアコースティックギターを抱え、メロディアスなミディアムナンバー「Shoes」で後続バンドへのバトンをつないだ。
aldo van eyck
続いてサブステージにはaldo van eyckが登場。tomohiro onoue(Vo, G, Tp, Key)、ryunosuke sakaguchi(G, Sax)、masahiro yamashita(B)、dischaaageee(Dr)からなる4ピースバンドは、フロント2人が楽曲ごとに楽器を持ち替えながら、ジャンルレスというよりも全ジャンル網羅型のエクスペリメンタルなサウンドで聴衆を魅了した。ジャジーで都会的なポップスが次の瞬間にはフリーキーなポストロックに展開し、かと思えば延々とインプロビゼーションを繰り広げる。音楽偏差値の高さと衝動的なアバンギャルドさを違和感なく融合させるハイレベルなパフォーマンスで、唯一無二の存在感を存分に発揮した。
Dos Monos
3MCヒップホップクルー・Dos Monosのステージは、ヒリヒリしたギターリフで始まる最新リリース曲「Burn」で幕を開けた。没の繰り出す強烈なビートと荘子itの鬼気迫るライミングが会場の空気を一変させると、2コーラス目でTaiTanが舞台袖から姿を現し、まくし立てるような高速フロウでフロアを沸き立たせる。この日唯一の非バンドアクトである彼らは、重心の低い高密度なラップを聴かせる荘子it、テクニカルかつハイトーンなフロウが冴えわたるTaiTan、伸びやかでエネルギッシュなシャウトを武器とする没による三者三様のスタイルで客席を圧倒。未発表の新曲2曲を含む意欲的なセットリストや、3人がステージ狭しと入り乱れるエモーショナルなパフォーマンス、計算し尽くされた照明演出からなる熱量の高いステージングで、熱狂の空間を創出した。
HOME
アグレッシブなアクトが3組続いたのち、沖縄発の3人組オルタナティブポップバンド・HOMEがサブステージに現れ、明朗かつゴージャスなパフォーマンスで清々しくイベントの折り返しを担った。ボーカル、ギター、PCという変則的な3ピース編成から鳴らされるのは、ミラーボールが似合いそうな80’sムードのディスコポップやテクノポップ、アーバンソウルなどなど。seigetsu(Vo)がロングコートをなびかせながらファルセットを交えたクリアボイスを響かせれば、shun(G)はストイックに空間系ギターで彩りを添え、o-png(PC)がPCとクラッシュシンバルを駆使した変幻自在のトラックでボトムを支える。仲の良さをうかがわせるお茶目なMCでも大いに聴衆を楽しませた。
MONO NO AWARE
実験性と批評性をキャッチーなメロディと超然たるユーモアで包み込む文系ロックバンドの雄・MONO NO AWAREは、挨拶代わりにエスニックガレージ歌謡「異邦人」、レトリカルなダンスポップナンバー「かむかもしかもにどもかも!」を畳みかけ、冒頭から独自の世界観でO-EASTの空気を塗り替える。玉置周啓(Vo, G)の実直なボーカルと控えめにかき鳴らされるギター、ボーカルをしのぐ大音量で鳴らされる加藤成順(G, Cho)のゴールドトップレスポール、竹田綾子(B, Cho)と柳澤豊(Dr, Cho)からなる誠実かつ強靱なリズム隊が混然となった、独特のバンドアンサンブルでオーディエンスの心をがっちりとキャッチ。本番前のサウンドチェックが長引いたことからMCを省略する旨をわざわざ表明した玉置は、「俺は音楽がやりたいです。だから曲をやることを優先させます」との言葉通り、持ち時間いっぱいを使いきって全7曲のセットリストを完遂した。
S.A.R.
サブステージのトリは、santa(Vo)、Imu Sam(G, MC)、Eno(B)、Taro(Key)、may_chang(Dr)からなるオルタナティブソウルバンド・S.A.R.が務めた。活動休止中のAttie(G)を欠きながらも、ゆったりしたチルなグルーヴでフロアを心地よく踊らせ、アダルトかつスタイリッシュなダンスホール空間を演出。リアルタイムオートチューンを駆使したメロウなファンクポップや、エレピサウンドを軸に展開するスウィートソウルなどでオーディエンスを酔わせながらも、Imu Samが演奏中に紛失したコンタクトレンズを探し始めるという元広島東洋カープの達川光男のようなハプニングも発生させるなど、余裕すら感じさせる硬軟織り交ぜたステージングでサブステージアクトを堂々と締めくくった。
BREIMEN
そして本イベントの大トリを務めたのは、オルタナティブファンクポップバンド・BREIMEN。最新リリース曲「銀河」でステージの幕を開けた彼らは、軽快なビートとスリリングなアンサンブルで瞬く間に観客の耳と心を奪った。その1曲目で早くも飛び出したサトウカツシロ(G)の長尺ギターソロを皮切りに、要所要所でいけだゆうた(Key)、ジョージ林(Sax)、So Kanno(Dr)もそれぞれ長尺のソロプレイを披露するなど、ジャムセッション濃度の高い演奏を連発。高木祥太(B, Vo)は軽妙なトークでオーディエンスとのコミュニケーションを楽しみながら、堅実なベースプレイと伸びやかな歌唱でパフォーマンスを牽引した。彼らはキャッチーなファンクチューンやブルースロック、陽気なパーティチューンなどでフロアを揺るがし続けたのち、ドリーミーなシャッフルナンバー「ナイトクルージング」、トロピカルかつフリーキーなダンスチューン「Rolling Stone」を繰り出してフィニッシュ。のべ6時間を超えるイベントに華々しく終止符を打った。
セットリスト
「Scramble Fes 2025」2025年11月16日 Spotify O-EAST
TiDE
01. Day Trip
02. Dawn
03. 祝祭
泉大智
01. nerve impulse
02. Deep Meditation
03. Don't Drown
04. CLOCK
05. 逃避行
06. Long Time
07. 涅槃
08. PUNK!!!!
09. Shoes
aldo van eyck
01. last dance
02. L S Drive Apartment 3F
03. Dahlia
04. pool side
05. Mud
06. Black Box
07. Village steps
08. Plastic Gold
09. Nada
Dos Monos
01. Burn
02. medieval
03. MOUNTAIN D
04. LETSUGOU
05. Lee Merlin
06. 新曲
07. In 20XX
08. Estrus
09. KIDS
10. HI NO TORI
11. Theater D
HOME
01. blind believer
02. Tell Me
03. Plastic Romance
04. Still Dreaming
05. Lucy
06. skin
MONO NO AWARE
01. 異邦人
02. かむかもしかもにどもかも!
03. 幽霊船
04. そこにあったから
05. 東京
06. 同釜
07. 走馬灯
S.A.R.
01. Back to wild
02. MOON
03. Abstract Blue
04. Side by Side
05. Kaminari
06. Cannonball
07. Uptown
08. Strawberry fields
BREIMEN
01. 銀河
02. IWBYL
03. LUCKY STRIKE
04. ODORANAI
05. ナイトクルージング
06. Rolling Stone


