音楽事務所WACKの代表を務めていた渡辺淳之介が退任したのは2024年7月。彼は現在拠点をイギリス・ロンドンに移し、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジで起業家精神を学ぶ大学院生として生活しつつ、WACKオーナーとして各グループと関わっている。本コラムはそんな渡辺からの近況報告を受けて、WACKの今後を示すインタビューに発展した本人による独白をまとめた記事だ。
渡辺から届いた1通のメッセージ「渡辺淳之介の敗北宣言」をプロローグとして紹介した序編に続き、本稿には渡辺に行った取材での発言を掲載。ここにはWACK所属グループにまつわる重大な発表が含まれる。
海外での新たな挑戦に向け準備を進めながら、自身とWACKの現状を見つめ直す渡辺。過去の成功に頼れない現代の音楽シーンでの“敗北宣言”を経て下した、ある決断とは?
題字 / 渡辺淳之介 取材・構成 / 田中和宏
WACK“第1章”終了のお知らせ
メッセージと重複する部分も出てきますが、正直に話します。僕はもうお手上げです。僕がこれまでやってきたWACKのやり方、元BiSのチャントモンキーが言っていた「WACKは顔じゃない」や、BiSHが常に言っていた「踊れない、歌えないけど私たちは上を目指す」に始まるWACKのジャイアントキリングの魔法は、もう現代において完全に効力を持たなくなりました。Twitter(現X)ネイティブだった僕らは、インスタ時代、TikTok時代に完全に乗り遅れました。「TikTokなんてダセえ」と思って使っていなかったのも事実だし、全部甘えです。
K-POPがアジアンポップのスタンダードになって、本当の意味で血のにじむような努力を10年続けてきたアイドルが「スタンダード」になった今、僕らのやり方はただの時代遅れでした。BiSHの快進撃を目の当たりにし、「NHK紅白歌合戦」出場も東京ドーム公演も達成して、自分の実績にあぐらをかいて、本当にWACKのことを何も変えなかった。そのずっと前からK-POPの波は来ていたし、わかっていたのに、すべて見て見ぬふりをして、日本のぬるま湯、ファンのぬるま湯に浸かり続けた。今のWACKはもちろん集客も落ちてるし、ストーリーも更新されていない。これはグループのせいでも誰かのせいでもなくて、全部僕の戦略負け、僕の怠慢です。だから2026年内でWACKの第1章を終わらせます。
WACK所属グループ消滅へ
具体的にはGANG PARADE、KiSS KiSS、ExWHYZ、ASP、BiTE A SHOCKが2026年内で解散します。豆柴の大群はクロちゃん(安田大サーカス)のプロデュースで、タワーレコードとWACKの共同プロジェクトなのでマネージメント業務も継続しますが、僕の管轄ではなくなります。つまりすべてが僕から離れることになるので、“渡辺淳之介印”がついた既存グループは、2026年を境にすべてなくなります。
先日、松隈(ケンタ)さんと話したんですけど、印象的な話がありました。「淳之介がいかにいろいろなものを受け止めてくれていたか、離れてみて初めてわかった」って。メンバー、スタッフ、ファンから湧き上がるいろんな意見を「全部煙に巻いてたお前ってすげえな」という。それも含めて、すべて僕の責任で、WACK第1章を終わらせます。これが一番きれいな終わり方だと思っています。
初期BiSが活動していたときにプー・ルイが、僕と、BiSのサウンドプロデューサーの松隈ケンタのことを「魔法使い」と表現してくれたことがあるんです。「ブスで歌も踊りもうまくない私たちを横浜アリーナまで連れてってくれるなんて、渡辺さんと松隈さんは魔法使いみたいだ」って。あのときは本当にうれしかった。がむしゃらな子たちを、僕らも必死にBiSが輝くように文字通り一体となってやってきました。もちろん当時やってきたことが間違いだとは思っていないんですけど、今の時代ではその魔法がもう効かないんです。だから今回、お手上げになりました。
2026年3月に“最後の”合宿オーディション開催
来年3月に合宿オーディションをやります。これがWACKとして最後の合宿になる可能性が高いです。解散が決まっているグループのメンバーも、まだWACKに残りたいと思ってくれるなら参加OKです。そして、元WACKのメンバーにも伝えたいことがあります。もしもまたWACKでやりたいと思う人がいたら、合宿に参加できます。別のグループで活動している人は事務所の許可さえ取れれば誰でも参加できます。過去に在籍していた全員を対象としたシード枠を用意しているので、オーディションには合宿からの参加になります。
なぜ元メンバーを呼ぶのかと言えば、僕自身、ロンドンに来て考え方が変わったんです。昔は「一度辞めたやつはもういい」と思ってたけど、人は変わるんです。僕自身、大学にほぼ行ってなくて単位がもちろん取れず、通常4年のところを6年かけて卒業したような人間ですけど、今はイギリスの大学院まで進学して、無遅刻無欠席、フル単位を取れてる。人間は環境を変えれば、本当に変わることだってある。脱退したって、何年経っても「もう一度やりたい」と思ったらチャンスはあると思うんです。不祥事なんかもそうですけど、日本は一度レッテルを貼られたら終わりみたいな風潮があるけど、僕はそれを信じたくないんですよね。
メンバーに求めるもの、目指す方向性は変わらないです。僕ともし一緒にやるんだったら、「もう1回、根性見せろよ!」ってことです。僕自身にも言えることですが、何回でもやり直せばいいんです。もう1回、挑戦したいならすればいいし、偏見なく見ます。可能性を見たいだけなんです。
合宿で何をするか決めてないんですけど、ニコニコ生放送さんにも入ってもらう予定です。恒例のデスソース入りのごはんだって、マラソンだってあると思います。それは僕が人の苦しんでいる顔を見るのが好きだから(笑)。でもこれまでのブートキャンプ的な内容ではなくて、“参加者の自主性”が大事になってくる気がします。僕が考えている今後のプロジェクトに関しても同じで、いかに自分で考えて行動できるかが大事になってくるので、それを確認できるような内容にしたいと思います。第1章の終わりとして、これまでのWACKがしてきたことと、これからのWACKが目指すものがミックスした内容になりそうです。
もちろん新規のオーディション参加者も募集します。参加したい人はぜひ応募してください。これまでより求めるハードルは上がる気がしますけど、これまでと同じく、「自分を変えたい」という人も応募してほしいです。僕自身、音楽業界に入るまで、何かに真剣に打ち込んだことがなかった。つばさレコーズに就職して、当時の社長から「お前みたいな人間を待ってた」と言われたのが、すごくうれしかったんです。ハードな環境ではあったけど居心地がよかったし、楽しかった。本当に感謝してるんです。だから、応募してくる子たちに言いたいのは、「今は何もなくていい」ということ。だけど、変わりたい気持ちがあって、本当に自分が活動に打ち込めると思える場所がWACKにあるのであれば、ぜひ来てほしいです。とはいえ、フィールドは海外にもなりますし、ただ歌って踊ればいいと言うことではないことは覚悟しておいてほしいなとは思います。
あと、合宿とは別で「一芸オーディション」もやってます。何か1つでも秀でている人なら年齢不問、オーディション用の撮り下ろし映像を送ってもらうだけで審査します。合宿とは選考基準が違うので、一芸の子たちは合宿には参加しません。何かに秀でている人は、努力をしてきた人だと思いますし、素晴らしいと思うんです。ギターがうまい、落語ができる、英語が話せる、足が速いとか、なんでも大丈夫なので、何かに打ち込んできた人たちからの応募を待っています。
WACKメンバーたちへの思い
今までのWACKのメンバーたちには、僕が求めることを言葉できちんと伝えていなくて、ライブはもちろん、レコーディングもすべて実践の場を通じて経験してもらう感じでした。その点については申し訳ないと思っていますが、今はそれだけじゃ足りないと考えています。メンバーの中には「ずっと日本でいい」と思っている人もいると思うけど、そういう人はもうWACKでは活動できないですね。僕は海外に進出したいので、これからのWACKのメンバーたちには今できなくてもいいから、全員英語を勉強してほしいですし、今後WACKにいたい人には僕が「やってほしい」と言ったことをやってもらうことになるわけですけど、WACKに残らないという道を選んだ人は、それをする必要がない。WACKというのはただの“容れ物”であって、それを動かすのが僕なので、僕の希望が最優先されます。だからその子が選んだ道を進む中で、「WACKとの未来はない」というだけの話です。
僕自身、学生時代は好きなことばかりやっていて本当に楽しかった。社会人になって、BiSを始めて、WACKを立ち上げて、批判もあるけど、人から認めてもらえることが多くなったのは、やっぱりがむしゃらにやってきたからこそだと思います。これからもまた、がむしゃらに突き進んで、喜びを感じられるメンバーたちと一緒にやりたい。その思いが合致する子たちだったらいいなと思います。夢を共有して、一緒に夢を叶えていく。BiSHとはそれができた気がしています。全員ががむしゃらにやってきたから、BiSHのメンバーそれぞれの今があるというか。
僕からは離れるけど、豆柴の大群もすごいですよ。プロデューサーやスタッフの気持ちを動かして、これからも活動する道に進むわけですから。だからといって解散するほかのグループたちがどうって、比較する話ではないですよ。みんな本当にがんばってくれました。でもこのままだと、WACKが目指す次のフェーズでは動けなくなったということです。
「WACKを離れたら終わり」なんてことはないし、自分の人生を選ぶのはあくまで自分自身です。これまでも脱退するメンバーを強く引き止めるようなことはありませんでした。僕は自分の判断を大事にしたいから、「今やめるのはもったいないんじゃない」「もうちょっと続けたらいいんじゃない」と言うことはありましたけど、決めるのは本人。自分の人生を選ぶうえで、自らが決めたことに責任を持つ必要がある。それは誰にでも言えることでしょうね。
元WACKメンバーたちに告ぐ
だから元WACKの子たちも、もし参加したいと思う人がいたら来てほしいです。合宿でがむしゃらにやって、「やっぱりこいつらとやりたい」と思わせてほしい。僕はずっと言ってるんですけど、WACKはただのジャンプ台なんです。WACKは単なる自分の夢を叶える場所じゃない。WACKを踏み台にして、自分の夢を叶える場所なんです。だからまずはWACKを利用して有名になって、そこから自分のやりたいことをやってほしいと、WACKの立ち上げ当初から……というより、つばさレコーズ時代のBiSたちにも常々言ってきました。
BiSHの子たちを見てればわかるはずです。 旧BiSの子たちだって誰もうちの会社に残ってない。みんな外で自分の道を歩いている。それが正しい姿だと思います。WACKに残りたいんじゃなくて、WACKを使って自分の夢をつかみたい子だけ来てほしい。それが僕の哲学で、今も一切変わってない。合格できなくても、すでに別で活動している人であればその事務所に戻ればいいし、新たに何かを始めてもいい。僕らは何度でもやり直せると思っています。だからこそ、今回の合宿は、過去・現在・未来の全部がつながる場にしたいんです。元WACKの子たちが誰も応募してこない可能性ももちろんありますし、その可能性のほうが高いですけど(笑)。
SNSを見てると、「もうアイドルやりません」「芸能うんざりです」と言ってた人たちが、限りなく匿名みたいな名前で、本人を匂わせる写真とかアップしていて。結局また別のアイドルグループに入ったり、歌をやったりしている人たちがいることを知ってるからこその、“もう1回”です。もう1回変わりたいと思っている人たちがいるとしたら、WACKはどうかなって。チャンスは何回でもあると思うから。もし合宿に参加するなら、自分の行動をしっかりと見せることがすごく大事です。
K-POPを目指すわけではない
水面下でWACKの第2章と言いましょうか、次の準備を進めています。現役メンバーの中から選抜した子たちが今6人いて、既存グループとは別軸でダンス、歌、英語のトレーニングを積んでいます。レッスン生はほかにもいて、今年、秘密裏に行ったオーディションを通過した8人の研修生もいます。選抜メンバーとレッスン生は、一芸オーディションの合格者と同様、合宿には参加させません。今、いろいろ考えている新しいプロジェクトに直結させるためです。新しいことを始めると言っても、僕が今までやってきたことの延長線上にあるプロジェクトなので、これまでWACKを応援してくれていた人なら、絶対に面白いと思ってもらえるはず。詳細はまだ発表できませんけど、すでに形になり始めています。
今後の課題としては、今の日本のアイドル界で常態化している同じCDを何枚も買わせる施策は、グローバル展開できるものではないです。「CDの売上で広告費が捻出できるからいいや」と思って、これまで取り入れていた手法ですけど、今のワールドスタンダードにおいては自分勝手な売り方だったし、今後は同じCDをたくさん売りたいとは思えなくなりました。見せ方も含めて、またあっと驚く方法でWACKもアーティストの魅力を伝えていきたいと思っています。
勘違いしてほしくないのですが、決して我々はK-POPを目指すわけではないんです。K-POPを「普通のライン」として捉える以上、そこを凌駕する魅力がないと、差別化すらできないってことです。普通のラインに到達できていない、これが今のWACKにおける“お手上げ”の正体かもしれません。
選抜メンバーは当初もっといたんですが、脱落した子がいるのも事実です。これは当たり前のことで、先ほどもお話ししましたが、ずっと日本でいいと思ってる人に今のところ英語ってまったく必要ないですよね? だから必要ないことをやれるわけないんです。だし、自分に必要ないことをやってる時間って本当に自分にとって無駄な時間じゃないですか。でもWACKにいるなら僕が今求めていることを今やってもらわないと継続することが難しい。WACKは僕のやりたいことを実現するための会社なので、僕のやりたいことが、メンバーと合致しないのであれば、やめたほうがいい。合致するのであれば、必死についてきてもらうしかない。
「WACKが変わった」と言う人がいますが、それは当たり前のことです。初期BiSの時代からそうだし、WACKを立ち上げてからもそう。アクションの中身は変わり続けているんです。初期BiSのときはメンバーを全裸で走らせるとか、反社会的なことで人気を獲得した。BiSHでは東京ドームと紅白が目標だったから、全裸で走らせはしなかったけど、違うアプローチを仕掛けてファンにアピールした。みんな勘違いしてるんですけど、僕は変わりながらヒットをずっと模索してるんですよ、業界に入ったときから。
つまり僕が今度新しいグループを作って、世界で売ろうと思ったら、また変わっていかなきゃいけない。同じことを繰り返すのは本当につまらないんですよ。King Gnuの常田大希さんが言ってたんですよね。「俺らがいろんな曲をやるのは、自分の可能性を広げるため。自分の成功体験に基づいて同じような曲をやることほど、つまんないものはない」といったことを。まさにその通りだと思います。
BiSHを始めるときに、「もう一度BiSを始めます」と言いました。それは「もう一度BiSと同じことをやる」という意味ではなかったんですが、よく勘違いされましたし、BiSの曲をやるとみんなが思ってたと思うんですけど、まったくの新曲で勝負したし、「BiS以上のことをやろう」とするにあたって、新しいプロジェクトを始めるなら昔取った杵柄じゃないですけど、使える名前を使ったほうがインパクトが出るから、そういう表現になっただけのことで。同じことを繰り返したら僕自身も面白くないし、誰もワクワクしないし、脳汁も出ないでしょう。
僕は変化することがWACKだと思っているし、僕の興味はどんどん移行していく。だから「このままでいい」と思っている人たちはWACKにはいらないわけです。WACKは僕で、僕がやりたいことをやるのがWACK。メンバーたちは個人事業主であり、やりたいことは自分で決められる。だから辞めたければ辞めればいいんですけど、それを自分以外の誰かのせいにはしないでねって。
地下アイドルシーンはやっぱりぶっ壊れたほうがいい
2024年の夏に音楽ナタリーさんでお話した通り(参照:「渡辺淳之介、WACKやめるってよ」第3話)、地下アイドルシーンはやっぱりぶっ壊れたほうがいいと思っています。と言いつつ、実はインスタやXで地下アイドルのことは調べていて、気になる子はフォローしてたんです(笑)。この子はなんでフォロワー多いんだろう?とか、どういう経緯でアイドルやってるのかな?とか、もともとはインフルエンサーだったのかな?とか、客観的に見ると気付くこともあるんですよね。
地下アイドルシーンはぶっ壊れたほうがいいと思うんですけど、やっぱりトレンドもあるから。古くはPerfumeに始まる秋葉原シーンの流れがあり、そこにももいろクローバー(現ももいろクローバーZ)が乗っかって、ももクロは一気に地上に行った。当時、PASSPO☆とかのいわゆるプラチナム勢がいて、BELLRING少女ハートみたいな個人プロデューサーのグループがいて。僕は初期BiSのときつばさレコーズにいましたが個人商店みたいなものだったんでその枠組みにいて、いわゆる素人感みたいなものが売りだった。それが十数年続いて、BiSHがその最後だったんじゃないかなと思っています。トレンドが切り替わり、今はWACKとは真逆(笑)のKAWAII系アイドルが台頭している。
変な話ですけど、潮目が変わるときって、バタフライエフェクトみたいなことが起こってるんですよね。その起点にあるのが、SKY-HIこと日高光啓さんだと思うんです。日高さんがプロデュースするBE:FIRSTがシーンの流れを変えて、これまで許容されていた“ヘタウマ”に市民権がなくなってきたように感じたんですよね。全員が“ウマウマ”のグループが増えてきて全員が“ウマウマ”で当たり前になったことで僕がやってきたことは今、通用しなくなったなあと思います。
でも、この“ウマウマ”な状況が正直に言うとちょっと面白くないとも思うんです。アイドルシーンだけじゃないですよ。YouTube、Instagram、TikTokで超絶技巧のギタリストとかドラマー、ダンサーが簡単に見つかりますよね。そしてそれが当たり前の世界にいる。僕がやってきたことは「いかにニッチを攻めて、差別化するか」。そこはずっと変わっていないんです。地下アイドルを知らなかった時代、初期BiSはAKB48と比べるとアイドルアイドルできてないから、「アイドル研究会」という体にして、アイドルを目指すというD.I.Y.感、素人感のある子たちが目標を目指すストーリーを作れたし、当時のトレンドになった。けど、先ほどもお話した通り、そのシーンはもう壊れちゃった。
BiSHはジャパニーズドリームだったと思いますよ。彼女たちの成功があったからこそ、夢をあきらめられないのも事実です。ただ僕がやったロールモデルは、今だと通用しないんですよね。僕は誰かをロールモデルにしたことはなくて、お手本にしたいと思う人たちの動きを分析して、どうしたら近道ができるかを試行錯誤しながらやってたんで、変な形で活動してたとは思いますが、それがオリジナルになったというか。だからBiSHをロールモデルにされちゃうと、「それは違うんじゃないかな」と思うわけです。東大を目指してがんばったら東大に合格できないように、もっと上を目指さないと目標は超えられない。
地下アイドルは狭いコミュニティの中で褒められることが多いから自己満足に陥りやすいんですよね。お客さんからも「WACKは変わってしまった、メンバーがかわいそう」とか言われるのは、僕としては不本意で。ずっと変わってきたのが僕であり、ずっとどうやったらみんなに気付いてもらえるか試行錯誤して手を変え品を変えプロモーションしてきたのがWACKなので、はっきり言うなら「何も見えてないなお前」って感じはすごくします。
僕がついていけてないところもありますけど、アイドルシーンの二極化がすごいですね。SNS起点で成功している人たちがいる一方で、BiSHがいた頃ブイブイ言わせてたのにすっかり元気がなくなってしまった人たちもいますよね。中間層がごっそりいないという話は、以前もしたと思うんですけど(参照:「2014年の渡辺淳之介」)、あぐらをかいていたのはWACKだけじゃなかった、とも言えると思います。当時LIQUIDROOMとかZeppクラスの会場でライブができていたグループだって、今はまったくそんなところじゃできなくて、200~300人の箱で活動していることも多いんじゃないでしょうか。WACKはBiSHのおかげで延命しただけ。BiSHが終わった瞬間、WACK全体の集客が急激に減ったのも事実としてあります。BiSHのついでにほかのグループを見てくれていた人たちが、きっと夢から覚めちゃったんでしょうね。
※近日公開の後編へ続く。


