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Perfumeのっちが「都市伝説解体センター」墓場文庫に直撃!少人数なゲーム開発のリアルに迫りました

のっちさん
7分前2025年12月23日 3:02

ミステリーアドベンチャーゲーム「都市伝説解体センター」をテーマにした今回の「のっちはゲームがしたい!」。前編ではキャラクターデザインのラフや、実際の開発画面など、ほかでは見られないものをいろいろ見せてもらいましたが、後編では開発チームである墓場文庫のメンバー4人と、集英社ゲームズの林真理プロデューサーにのっちさんがインタビューをします。小規模なゲーム開発ならではの、これまでの連載とはひと味違ったエピソードを聞かせてもらいました。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 文 / 橋本尚平 撮影 / はぎひさこ ヘアメイク(のっち) / 大須賀昌子 題字 / のっち

集英社ゲームズが目指すのは、ゲームから新しいクリエイターを育てること

のっち えっ、墓場文庫さんって、これで全員なんですか!?

ハフハフ・おでーん かなり小さいチームでやってます。

のっち (称えるように拍手をしながら)皆さんはそれぞれ、どういう仕事をされてるんですか?

MOCHIKIN プログラムをメインでやらせていただいてます。

おでーん グラフィックを担当しております。

きっきゃわー シナリオとかキャラクターデザインとか、諸々やらせてもらってます。

あだP BGMやSEを担当しております。

のっち よろしくお願いします! 確かに今の役職を聞いたら、この4人だけでひと通りゲームが作れそうですね。

林真理 インディーゲームの開発をしてるチームには普通サウンドプロデューサーはいないんですよ。サウンドは外に出すことが多いから、4人なのにサウンドもいるのはすごく珍しい。

のっち なるほど、そこが墓場文庫らしさなんですね。そして林さんが集英社ゲームズでプロデューサーをされていると……あの、恥ずかしながら集英社ゲームズさんがどんな会社なのかよく知らなかったんですけど、今日ここに来たら、めちゃくちゃしっかりしたゲーム会社が現れて驚きました(笑)。

 もともと集英社ゲームズができる前に、集英社の新規事業部で、数人でゲームの仕事を始めたんですけど、それを本気でやりましょうってことでこの会社になったんです。今は60名近くいるので、その意味ではちゃんとしたパブリッシャーというか、ゲーム販売会社になってきた感じですね。

のっち ゲーム事業というのは、どういったことをされているのですか? 集英社ゲームズさんならではのことが、何かあるんですか?

 僕らがやろうとしてるのは「ゲームから新しいクリエイターを育てる」ということで。マンガがヒットしてアニメ化やゲーム化する例はたくさんありますが、ゲームを起点にアニメやマンガ、小説が作られるようにしたいなと。そういうクリエイターの尖った才能を世界中のゲームファンにお届けするのが、集英社ゲームズの目指す未来なんです。

のっち まさに墓場文庫さんのことですね!

 そうです。墓場文庫のタイトルをローカライズして海外に持って行って、彼らを世界に広めるというのを僕らはやらせてもらっています。なので集英社ゲームズには英語ネイティブはもちろん、中国語やフランス語を話せる人もいるし、たまに何を話しているのかわからない海外の言葉が聞こえてきます(笑)。

のっち 墓場文庫さんは「集英社ゲームズに所属」という扱いになるんですか?

おでーん 所属しているわけではないんです。墓場文庫はあくまで独立した個人のクリエイターが集まったチームで、会社ではないんですけど、集英社ゲームズさんにパブリッシャーとしてサポートしてもらっているんですよ。

のっち なるほど、1人ひとりはほかの仕事もしているけど、チームとして墓場文庫を組んでいるんですね。どういう経緯でチームになったんですか?

おでーん もともと「和階堂真の事件簿」というゲームを僕とMOCHIKINさんで作ってたんですけど、頓挫していたときにきっきゃわーさんとあだPさんが手伝いに来てくれて、発売後に墓場文庫というチームになったんです。それを「Google Play Indie Games Festival」というコンテストに応募したところ、集英社の賞を受賞して。

 そのときはまだ集英社ゲームズもなかったので、墓場文庫とは「いつか何か一緒にできたらいいですね」と話していて。それが「都市伝説解体センター」が生まれたきっかけですね。

「都市伝説解体センター」と一緒に書かれた、2つのゲームの企画書

のっち 私、「都市伝説解体センター」をやってから、あの世界から抜け出せなくなって(笑)。「同じ開発チームが作ったらしい」ってことで「和階堂真の事件簿」もやったんですけど、どうしてこの硬派でハードボイルドな刑事モノが、あのテンションの高い「都市伝説解体センター」になるんだ?ってビックリしました。

おでーん そこは企画段階で林さんと「どういうところに注力するのがいいか」という話し合いをさせてもらったんですよ。

 前の作品よりもステップアップしてほしかったので、キャラクターの魅力とかストーリーの深みにもっと力を入れましょうという話になって。その結果、僕もびっくりするような個性的なキャラクターがどんどん生まれ始めたんです(笑)。

おでーん 実は開発を始める前に、僕らで3案ぐらいゲームの企画書を作ってまして、そのうちの1つが「都市伝説解体センター」だったんです。ここにその企画書があるんですけど……。

のっち わっ、絵がかわいい! 「回想探偵と黒樫の森」と「ハッピーエンド分岐フラグ」? 気になる! というか、なんか「都市伝説解体センター」だけ絵のタッチが全然違いますね……。

おでーん どういうビジュアルの方向性がいいかを見てもらうために、林さんにこの3案を持っていって、「都市伝説解体センター」がいいんじゃないかってことになったんです。この時点で廻屋渉は、カラーリングがちょっと違うくらいでほぼほぼ今のビジュアルですね。

のっち このタイトルは誰が考えたんですか?

おでーん タイトルは僕なんですけど、ゲームのテーマとかコンセプト、廻屋渉のビジュアルはきっきゃわーさんです。

あだP ラフのときから「すごいね、これいいじゃん」みたいな話になったんだよね。

MOCHIKIN すでにこの時点で廻屋渉が電話をしてる絵なんですよ。

のっち ホントだ! そういう設定は最初からあったんですか?

おでーん 内容とかまだあんまり決まってなかったんですけどね。「電話で事件を解決する」みたいな。最初はコールセンターをイメージしてたから「解体センター」って名前にしたんだと思います。

きっきゃわー もともと、あざみちゃんじゃなくて廻屋くんが動き回って謎を解くゲームを想定してたし。

 この時点で僕は「センターっていうくらいだから数十人が働いてるんだろうな」と思ってました(笑)。

のっち そうだったんですね!

MOCHIKIN でも、僕は絵よりも先にどんでん返しを考えるタイプなんですよ。そっちの企画書に書いてある「ハッピーエンド分岐フラグ」っていうゲームは僕が出した案で、ちゃんと辻褄が合う話も作って、一応どんでん返しも全部考えてたんです。なのに蹴られて「結局見た目かい」って思いました(笑)。

きっきゃわー 恨み節が強い(笑)。

おでーん 選ばれなかった2案は感動系の話だったんですけど、林さんが「『和階堂真の事件簿』を作ったチームだから、ケレン味のある怪しくてどろどろした話のほうが絶対いいよ」って言ってくれて、「都市伝説解体センター」に決まりました。

のっち 名プロデューサー……!

MOCHIKIN でも中身はなんも決まってなかったんですよね。「ハッピーエンド分岐フラグ」のほうはもういろいろ決まってたのに(笑)。

おでーん いやいや、まだ作れるから(笑)。

 作っちゃダメとは言ってないから(笑)。

のっち 「ハッピーエンド分岐フラグ」って、タイトルからしてもう気になるし、やってみたいです!

13言語のローカライズが大変すぎて……

 そして3つの中からどのゲームを作るのかが決まって、次の企画書にはもう「都市伝説解体センター」のロゴが載ってたんですよ。おでーんさんは企画書用の仮ロゴのつもりで作ったんだけど、それを僕がすごく気に入って。おでーんさんはずっと直したがってたのに、最後の最後まで僕が引かなかったのでそのロゴで販売されました(笑)。

のっち 大事なところでバンッて出てくる、あのロゴですよね?

おでーん そうなんです。「ちゃんとした人に頼みましょうよ」って言ったのに(笑)。キービジュアルも、仮で作ったものがそのまま採用されちゃって。

のっち キービジュアルもそうなんだ!

 僕があのロゴを気に入りすぎて、中国語の簡体字と繁体字、英語、ハングルでも作ってもらいました。

のっち 13言語に対応してるってことですけど、そもそも「都市伝説」っていう言葉がない国もあるんじゃないですか?

 言葉自体はありますが、例えば「コトリバコ」は日本で生まれた都市伝説なので、それをどう翻訳するのか、何か近い言葉はないのか、そのまま「コトリバコ」でいくのか、とかそういうことは翻訳者に相談しましたね。

おでーん 翻訳はがんばってやったんですけど、一番割りを食ったのはプログラマーで。13言語の翻訳データを実装していく作業を、MOCHIKINさんが1人でやりました。

のっち ひゃー!

MOCHIKIN 13言語はすごかったね……。

 それはプロデューサーの一番のミスでした(笑)。本当に後悔してるんですけど、「集英社ゲームズを世界に届けたい! できる限りローカライズしてたくさんの人に喜んでもらおう!」と意気込んでたら、それをできるプログラマーが1人しかいなかった。MOCHIKINさんの髪の毛がどんどんボサボサになっていって……(笑)。

おでーん キャラクターの名前も全部、その国の人の名前に変えましたしね。

 あと、アラビア語は右から左に読むから、それも全部直さなきゃいけないんですよ。「あざみ」「ジャスミン」みたいな発言者の名前も、文章の頭にないとおかしいので、右側に移動しないといけない。

のっち その作業をお一人で……大変だ。でも確かに、遊びたいゲームが自分の言語で遊べる特別感ってすごくありますよね。

 そうなんですよね。ただ、分業ができないので、最後にエンジニアさんに負担がかかるというのが、小規模開発の難しいところで……。

MOCHIKIN いや、できると思いますよ。誰も手伝ってくれなかったけど(笑)。

のっち なんでそこまでがんばれたんですか?

MOCHIKIN それは僕も思います(笑)。

おでーん 何回か「もうアカン」ってときがあったよね。

きっきゃわー 失踪の準備をしていたんですよね。

MOCHIKIN 「僕がいなくなったらどうなるんかな?」って軽く脅しながら(笑)。でも、それが小規模開発というものなのかもしれませんね……。

のっち そうなんだ。

きっきゃわー 変なまとめ方をしたら誤解を生むからやめて(笑)。

大きいゲームではできない、小規模なゲーム開発ならではの魅力

のっち ちなみに、センター長は最初の企画書から見た目がほとんど変わってませんけど、初期案からガラッと変わったキャラクターもいるんですか?

きっきゃわー (ラフスケッチを見せながら)記事に載せるとネタバレになっちゃうかもしれないけど、これが●●●の最初の案ですね。

のっち あー! カッコいい。今のデザインと全然違います。

きっきゃわー 最初はもうちょっとキレのある顔立ちだったし、洋服も変わりました。

おでーん このキャラは途中で設定が二転三転したんですよ。僕らは作りながらストーリーをガッツリ変えることも多いから、その都度デザインも変えていきました。

 大きいゲームを作っていると、仕様変更するのがすごく大変なんですよ。1つ何かを変えようとしたら、数十人の作業が一旦ストップする。でもここは4人しかいないので、4人とも「いいよ」と言えば変更できるんです。

のっち そこが小規模なゲーム開発ならではの魅力なんですね。

 ちなみに、ゲーム内に「トシカイくん」ってキャラクターが出てくるじゃないですか。あれってもともと、劇中で都市伝説解体センターのマスコットキャラクターとして出すつもりで作られたんですよ。

のっち そうだったんだ!

 さっき話したように、最初はたくさんの人が働いている会社をイメージしてたので。けど小さい探偵事務所みたいな場所に設定が変わったから、彼は一度リストラされたんです。だからゲームには出てこないはずだったけど、あとから復活させたんですよ。そういうことも、話し合いながら変わっていきましたね。

墓場文庫さんからのっちさんにサプライズプレゼント!

 ところで、今日はのっちさんにお見せしたいものがありまして……。

のっち えっ! なんですか?

MOCHIKIN こちらの画面を見ていただきたいんですけど、一瞬なんで見逃さないでください。

のっち あっ! のっちだ! 動いてる!

おでーん のっちさんに「都市伝説解体センター」の世界に入っていただきました。

MOCHIKIN 勝手にここまでしていいのかっていう(笑)。

きっきゃわー 事務所に怒られる覚悟でね(笑)。

のっち センター長がファビュラスって言ってくれた! すごい! うれしい!

おでーん そして、今のシーンをプレートにしてきました。墓場文庫からのプレゼントです。

のっち えー! カッコいい! ありがとうございます! これって「Spending all my time」の衣装ですよね。めちゃくちゃかわいいです。

おでーん 一番「都市伝説解体センター」っぽい曲かなと。

のっち 確かに。ミュージックビデオで私たち、超能力者の養成センターみたいなところに閉じ込められてるんですよね。ありがとうございます! 宝物にします! ちなみにこれ、どれくらい時間がかかったんですか?

おでーん これくらいの尺なら2日ですね。

 映像のほうはね。それをうちのグッズチームがプレートにする時間も合わせたら、1週間くらいでした。

のっち 最初に私のイラストを描いてくださってから、それをドット絵にするんですよね?

 そうですね。まず、きっきゃわーさんが線画で描かれて、それをおでーんさんに渡して。

おでーん そこからドットを1点1点、ポチポチ押していくという作業になります。

のっち それにビックリしたんですよ。ボタンひとつでドン!でドット絵に加工できちゃうツールもあるじゃないですか。それは使わずに全部手作業なんですね。この連載で前に月ノ美兎ちゃんと対談したときに「体調が悪いときに『都市伝説解体センター』をやろうとしたら、ドット絵の情報量がすごすぎて、その苦労を思うと吐き気がしてきてできなかった」みたいなことを言っていて。

きっきゃわー すごい感受性(笑)。

のっち それを聞いて私は「これを1人で描いてるとか、さすがにそこまで大変なことはしてないんじゃないかな」と思ってたんですけど、美兎ちゃんの吐き気は嘘じゃなかった(笑)。

おでーん お手伝いしてくれる方もいたので、完全に1人ではないんですけどね。

 でもおでーんさん、後半は肩にシップを貼りまくってたね(笑)。

おでーん 腱鞘炎って、進行すると肩のあたりに激痛が走るようになるんですよ。

のっち さっきラフを見せてもらったときに、色数を絞って4色だけで描いてるって聞いたんですけど、この私の絵も4色なんですか?

おでーん そうですね。赤は別扱いにしてるんですけど、主線の黒と、白、ブルー、肌色の4色です。暗いシーンの4色と、明るいシーンの4色の、2種類のカラーパレットがあって。

のっち 4色でなんでも表現できるものなんですか?

おでーん 大変は大変です(笑)。でもその分、「このゲームはこの色」というイメージをユーザーさんに刷り込めるんです。おかげさまでファンアートをいっぱい描いていただいてるんですけど、みんな同じ色なので、一発で「都市伝説解体センター」だってわかるのはありがたいですよね。

のっち そうそう、YouTubeのサムネを見てると「都市伝説解体センター」の実況はすぐわかる。

SNS描写がリアルは理由は?

のっち 「都市伝説解体センター」はSNSのリアルな描写も面白くて。あの書き込みは誰が文章を考えたんですか?

あだP メインはきっきゃわーさんじゃないですか?

きっきゃわー 軸を作ってもらって、それに全員で肉付けをする感じでやっています。

のっち いろんな人が、いろんなことを書き込んでるじゃないですか。それを読んだジャスミンの返しも面白いし。

MOCHIKIN 僕たちの間でこういうシナリオシートを共有してて、ネタとかを思いついたらメモ帳的に書き込んでるんです。左側の青紫がSNSの投稿で、それに対するあざみちゃんの反応がピンク、ジャスミンの反応が水色ですね。

のっち うわー、ものすごい文量!

おでーん これでも削ったんですよ。情報を盛りすぎちゃって。

きっきゃわー 会話量もだいぶ減らしましたね。

 SNSを作ることになったときに「あんまりリアルにしないで、疑似的なSNSを用意したら?」って話をしたんですけど、できてあがってきたら本物のSNSみたいになってて(笑)。話を進めるのに必要ないような書き込みも読みたくなるから、それがやり込み要素になってるんですよね。

のっち やっぱり、もともとSNSをよく見られているからリアルに書けるんですか?

MOCHIKIN いや、研究したんです。コロナ禍の時期に、SNSが荒れ気味でしゃべりづらくなったから、内々でコミュニティツールを使って集まってたんですよ。ちなみにその場所の名前が「墓場」で、墓場文庫の由来になってるんですけど。そのときの経験から「ネットって荒れると怖いよね。それを表現できたら面白いんじゃないかな」と思ったのが、このゲームにSNSを取り入れた始まりで。

きっきゃわー どういう書き込みばっかりだと居心地が悪くて、読んでてしんどいかっていう。

のっち 「SNSでの噂から都市伝説が生まれる」という内容ですけど、そのアイデアはどっちが先に生まれたんですか? 「ゲームの中にSNSを作ろう」なのか、「都市伝説って、人が作るものだよね」なのか。

きっきゃわー 都市伝説が先かな?

おでーん 最初は「和階堂真の事件簿」みたいに、普通に現場の探索だけで解決していくゲームだったんですけど、やっぱり単調になっちゃうので、別の方向性から事件について調べられないかと思ったときに「噂のもとといえばSNSじゃないか」ということで、途中からSNS調査のシーンを加えました。

のっち 月ノ美兎さんが実況してるときに「SNSに書き込んでいる人のアイコンを覚えてる」って言ってたんですけど、このアイコンの人はこういう書き込みをする、という設定はそろえてたんですか?

おでーん いや、ランダムなんですよ。

のっち そうか(笑)。

きっきゃわー あえてランダムにしてるはずなのに、癖のあるポストが同じアイコンになることはちょこちょこある。

MOCHIKIN 「このアイコンの人、いかにもこういうセリフ言いそうだよね」というイメージがあるから。

のっち そうそう、だから目に止まるんですよ(笑)。

おでーん MOCHIKINさんのアイコンの人もゲームの中にいるよね。

MOCHIKIN 2カ所ね。めちゃくちゃ悪いことを言ってる(笑)。

のっち それって実際にXとかで使ってるアイコンですか?

MOCHIKIN そうです。SNSを作り始めたときに、僕がテストデータとして適当に入れていたものが残っていて(笑)。

のっち また仮のデータが採用されてる(笑)。面白いなー。ぜひ見つけたいです!

シンセサイザーをまったく触ったことがなかったんですよ

のっち BGMはどのタイミングで作るんですか?

あだP 僕は普段は会社員をしてるので、稼働できるのが18時からなんです。でもみんなは昼間からガッツリ作業してるので、自分がプレイすると新しい画面ができてるんですよ。だからそこに新しく音楽を入れていく、みたいな。

のっち 曲のイメージは、どうやって決めてるんですか?

あだP 最初に大まかな方向性について話し合って。今回は「ストレンジャー・シングス 未知の世界」とか、アルフレッド・ヒッチコックとかの雰囲気を参考にしていこうということになりました。最初に作った曲だけ、おでーんさんと相談しながらだったんですけど。

のっち どの曲ですか?

あだP 探索中の曲ですね。僕はバキバキの電子音楽を作るのは初めてで、そもそもシンセサイザーをまったく触ったことがなかったんですよ。

のっち あの爆上げ音楽!(笑) いつも作ってるのはああいう曲じゃないんですね。

おでーん もともとジャズ畑の人間で、生楽器のほうが得意なんですよ。

あだP 「和階堂真の事件簿」がジャズっぽい曲だったから、今回もそうなのかと思ったら、おでーんさんから「電子音楽にしたい」と言われたんです。「僕、シンセいじったことないですよ?」って返したけど、やってくれと。おでーんさんはDJの経験もあって知見があるので、「違う、そうじゃない」って言われながら作ったので相当鍛えられました(笑)。

おでーん すみません(笑)。あだPさんのセンスなら、電子音楽を作れるはずと思ったんですね。

あだP 当時はずっと、アヴィーチーのようなEDMのヒット曲を「こんな感じにすればいいのか」とか考えながら延々聴いてました。案外みんな「いいね」って言ってくれるし、初めて作ったけどなんとかなってよかったです。

 あだPさんはシンセサイザーの曲作りを勉強するために、学校に通ったんですよ。

あだP はい。会社員やりながらスクールに通いました。

のっち へー! すごい!

あだP ちょっと自慢させてください。このサントラ、Billboard JAPANのダウンロードアルバムチャートで2位に入りまして。すみません、これだけは今日どうしても言いたくて(笑)。

のっち 私も大好きです!

 最初はサントラを出す予定はなかったんですよ。でもBGMも反響が大きかったので、音楽配信サービスで聴けるようにしてくれる会社さんを大急ぎで探したんです。

のっち リリースしようと思って、すぐに動けるところも少人数チームのいいところですね。

みんなの質問、のっちが代わりに聞いてきますのコーナー!

のっち ここからは読者の皆さんがXに書き込んでくれた、墓場文庫さんと林さんへの質問を聞いていきます。まずはしらすこさんから。

私は怖がりでホラーゲームはなるべくやりたくないのですが、都市伝説解体センターはギリ大丈夫でした。どなたか怖さ判定をされたりしていたのでしょうか?絶妙な怖さの秘密が知りたいです。

おでーん 最初に林さんから「ホラーが苦手な人が楽しめなくなるから、ホラーにするのはやめよう」って言われてて。オカルトがテーマだから怖い要素はあるんですけど、ホラーではないつもりなんです。

 「都市伝説のゲームを作ります」って言うと「集英社ゲームズがホラーゲームを作り始めた」って誤解が広まっちゃうかもしれません。だからメディアさんには「これはミステリーです。ホラーじゃありません」って必ず説明をしていました。それでもホラーと認識されてしまうこともありましたが……。

MOCHIKIN やりたかったのは「あざみちゃんを怖い目に合わせる」ことで、さっきあだPも言っていたように、参考にしていたのはヒッチコックのような昔の映画の怖がらせ方なんですよ。いきなりドーン!って驚かせるみたいなことはしない。

のっち いや、ちょっとありましたよね?(笑)

MOCHIKIN すみません、あります(笑)。

きっきゃわー 各話に1カ所ずつくらいは怖いシーンがあるけど、それも抑えに抑えた結果で。第4話に出てきた“蛭塚村のジジイ”が一番怖い、くらいに抑えてます(笑)。

あだP あのおじいちゃん、人気が高いんですよ。

MOCHIKIN LINEスタンプを作ったときに冗談半分でおじいちゃんの絵を入れたんですけど、初週の記録を見たら一番使われてた(笑)。

きっきゃわー あのおじいちゃん、最初はもうちょっとゆっくり歩いて出てくるはずだったんだよね。なんか気付いたらシャコン!って出てくるようになってたけど。

おでーん 残像を残しながら出てくるアニメーションに僕がしちゃって(笑)。でもそれ以外のシーンは、意識して「これから怖いのが来ますよ」の時間をちょっと作ってます。

のっち 怖いのは苦手だけど、ギリ堪えられました。私はビックリ系よりむしろ、じわじわ怖がらせる心霊モノみたいなのが苦手で。でもこのゲームはそういう人にも勧められるなと思います。あと、ゲームオーバーがないことも人に勧めやすいですね。

 ゲームを全然やったことない人とか、最近ゲームから離れちゃった人たちにプレイしてほしいというのが墓場文庫のコンセプトにあるんですよ。あと、ミステリーなので最後の大オチまでやってほしい、途中でやめてほしくない、というのもあり、易しいゲームにすることにしたんです。

のっち なるほどなー。じゃあ、続きましてひよこさんからです。

センター長さんの解体ポーズなど、印象的なポーズがありますが、どのように決まったのですか?みなさんで色々ポージングしてみたのでしょうか?

おでーん 解体ポーズは、特撮ヒーローの変身シーンをイメージして僕が勝手に作りました。推理モノはどうしても地味になりがちだから、ケレン味のある気持ちいいシーンを作ろうと思って。でもあとになって考えたら、直接影響されていたものが1つあったんですよ。Perfumeの「ポリゴンウェイヴ」の振付なんですけど。

のっち ああ! 顔の前で三角形を作るポーズ! そういえば確かに! あれ印象的だったんですよ。

おでーん 考えてるときは完全に無意識だったけど、その可能性はあるなって。

きっきゃわー あのポーズだけが浮かないように、派手なカットインをどんどん足しました。「これでもまだ地味じゃない?」って。

おでーん 後ろの「天眼錠(アイ・オープナー)」も最初はなかったしね。

 ピラミッドが下からせり上がってきたときは「なんだこれ?」って思いました(笑)。ほかのメンバーはあれを最初に見たときにどう思ったの?

MOCHIKIN 吟味している余裕がないので、上がってきた案には全部「いいやん、いいやん」って答えてました(笑)。たぶんボツにした案はほぼないです。

のっち すごい(笑)。そうしてあの激アツ演出ができあがったんですね! 次は、ゆめnoŋさんからの質問です。

2周目だからこそ気付く伏線も多いと思うのですが、あまり気付かれてないけどあそこも…みたいなところはありますか?

おでーん 難しいな。

MOCHIKIN あるといえばいっぱいあるんですけど。

きっきゃわー 手帳の中にも細かいネタを仕込んでるんですけど、ここで「まだ気付かれてない」と言っても「いや知ってましたけど?」っていう人がいる可能性はあります。

のっち 「そんなこと別に意識してないのに、お客さんが勝手にすごい伏線だと思ってくれた」みたいなところはありますか?

おでーん それはめっちゃあります。

きっきゃわー 「あ、そう思ってもらえるんなら、そっちのほうがいいかもしれないです」みたいな(笑)。

 「2周目だからこそ気付く伏線」で言うと、ゲーム開始直後の本棚のシーンで重要なキーワードが出てきてるんですよ。そういう「ここでもう出てんじゃん!」っていうのは、わざとやってるんだろうなと思ってました。

おでーん 本棚にはネタバレが入ってますね。

きっきゃわー 先に全部ちゃんと出さないとフェアじゃないと思ってるので、なるべく隠さないように堂々と出しています。

のっち 自分でプレイしたあとに、ほかの人がやってる配信を観ると、けっこうびっくりします……。

きっきゃわー なんも知らないでやっている配信者さん観て、ハラハラしますよね(笑)。

のっち こちらは甘味きなさんからの質問です。

ドット絵にするのが1番大変だったキャラ、または楽しかったキャラは誰なのか知りたいです

おでーん あざみはたぶん両方で、特に袖のフリルのひらひらを毎回描かないといけないんのが大変だけど楽しかったです。“フリルハイ”というか、無心になって描くので。

きっきゃわー フリルハイあるよね。めちゃくちゃわかる(笑)。

のっち しんどさゆえの楽しさ、ありますよね。フリルハイ(笑)。続いてクックさんからです。

世の中に都市伝説って山ほどありますが、続編をつくるとしたら採用したい都市伝説は何ですか??

おでーん 1つに絞るのは難しいですが、次は世界の都市伝説をやってみたいですね。あとは歴史ミステリーっぽいものとか。

 ほかの国に宣伝しに行くと、現地の人から「うちの国の都市伝説を入れてください」ってすごく言われるんです。

のっち 海外の都市伝説を知る機会って、あんまりないですよね。

 でもいろんな国に根付いてるものがあるみたいで。

きっきゃわー 今回入れたかったけど入れられなかったUMAシリーズとかね。ビッグフットみたいな謎の生き物は、あざみちゃんと対峙させ甲斐がある(笑)。

MOCHIKIN たぶんジャスミンがビッグフットと戦うんだろうな。

のっち 続編に限らずで、墓場文庫として次にどういうものを作りたいとかありますか?

 僕は会社から次を作れと言われ始めてるんですが、墓場文庫が売れっ子になりすぎて手が空いてないんですよ。だから何をやるかはまだ白紙で、続編をやるのか新規をやるのかも決まってなくて。4人が落ち着いてきて「こういうのをやりたいね」となったら、それを進めていきたいなと思っています。

おでーん のっちさんは続編があったらやりたいですか?

のっち 絶対にやりたいです。

おでーん じゃあ作りますか?

あだP いや困るぞあとで(笑)。

 「言質取ったぞ」って言われて(笑)。実際に続編が出たら「のっちさんのおかげだ」になりそう。

きっきゃわー それは間違いない。

のっち 楽しみです!(笑) 今日はお話を聞いているだけで楽しくって。皆さんが本当に仲がいいのが伝わってきたし、だからこその旨味が凝縮された、どれだけ噛んでも味がするみたいな作品になったんだなってわかりました。ありがとうございました!

のっちさんの取材後記

こんにちは、のっちです!

年の瀬ですね~。
今年は遊びたいゲームのリリースがいーっぱいありました! 発売日が待ち遠しくてウキウキしながら過ごしましたが、じっくり遊びたい長編ゲームだったりで、なかなか触れずでしたねえ。

でも、隙間隙間でゲームは遊んでます!
のっちが今年一番遊んだゲームは「Minecraft」(通称マイクラ)でした!
ブロックで出来た、ランダムに生成される果てのない世界で、冒険、建築、なんでも創造してなんでもできちゃうゲームです。

マイクラって自由な分、性格が出て面白いです。
冒険に行きたい人、町を発展させたい人、装備をしっかり持っていく人、体一つで冒険に行く人。

わたしは、整地するのが好きで、山を崩して道をつくり、畑、牧場、伐採場、採石場を作って、自動釣り機で釣りをしたり、無限に鉄が収穫できるトラップを作ったり。
とにかくずーーっと町のインフラを整えます。それが楽しくて、全っ然冒険に行かない!!!

私は、ゲームの中までも、インドア……。

ゲームなんだから羽目外そうぜ!!とかしたいですけどね、、マイクラの楽しみはマジで人それぞれですからね、そこがいいです。

あと「Minecraft」の生みの親は「ノッチ」さんですからね!笑
こんにちはノッチさん! わたしです! のっちです!


さて! 今回は集英社ゲームズ林真理プロデューサーと、墓場文庫の皆さんにお話を伺ってきました!

こんなおもろいゲームを、どうやって4人でつくるねん!!
と、思ってそれぞれの持ち場を聞くと、綺麗に分担されてて、まあ確かにできるか、と納得してしまいましたが、にしても、作業量と考えたり決めたりすることの量が多分すんごい。

皆さんめちゃめちゃ仲良くてお話聞いてるだけで楽しかったです! ずっと聞いていたい!
私の大好きな、ド派手な「解体」シーンの成り立ちも面白かったなあ。
それから、サプライズのセンター長さんとのコラボレーションも嬉しすぎました!! ありがとうございます! 飾らせていただいてます! 動いてた~感動。涙。ファビュラス~。

次回作の話はまだこれからです、とニコニコ話す林さんを見て、メンバーと作品が大事にされてるなあと感じて、ファンとしてはなんだか嬉しかったですね。
皆さま本当にお忙しい中、お時間いただきまして、ありがとうございました!!!!


「のっちはゲームがしたい!」今回をもって一旦終了! さみしー。

ナタリーさんとゲームの連載をするにあたって、どんな形にするかなって話で、わたしはご存知インドアのコミュよわ人間なので、一人で黙々とこうやって文章書くかな~とか思っていたんですが、なんとゲーム会社にお邪魔してクリエイターさんに直接お話を聞くことになり、恐れ、慄き。私は、まず相談をしにファミ通編集部に行かせてもらいましたね、懐かしい!

それから、3年。色んなゲームの色んな凄い方々にお会いして、直接お話を聞き、それぞれの作品や仕事への向き合い方に感銘を受け、毎回の取材が刺激的で、書籍化していただいたりもして貴重な体験をさせていただきました。

今振り返ると、元々好きなゲームをつくった人に会うにあたって、自分なりにもっと好きになってからお話を聞きたくて、好きなポイントを能動的に探しながらゲームに向き合っていて。
なんか、好きなものや人の、好きなところを増やしていくって滅茶苦茶素敵なことじゃん、と思って。なんかそれは訓練な気もするし。
「好きなとこ探し」はゲームに限らず、人生のテーマにしていきたいです。
上手く伝えられてるでしょうか?

また皆さんとお会いできる時には、でっけえ人間になって、帰ってきたいと思っているので、その時にはまたそれぞれの好きなものについて話したり、わたしのゲーム話や人生の話でも聞いてやってください。
皆さま本当にありがとうございました!
いつも取材後記長くてごめんね!
最後まで読んでくれるあなた! まじでありがとう!!! 愛!! またね!!

のっち

読者の皆様へ

すでにご存知の方も多いと思いますが、Perfumeは2026年よりしばらくコールドスリープに入ることになりました。これに伴い、「のっちはゲームがしたい!」も今回をもって一旦最終回とさせていただきます。

「ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行く」というコンセプトで2020年にスタートしたこの連載は、取材相手に聞いてみたい質問を読者の皆さんから募ったりと、本当にたくさんの人たちの協力でできあがっていました。

これまで連載を読んでくださった皆さん、そしてご協力いただいたすべての方に、心から感謝申し上げます。

コールドスリープから目覚めたら、すぐに“コンティニュー”して、また皆さんと一緒にゲームの話で盛り上がれることでしょう。その日を楽しみに待っていてくださいね!

(当連載のインタビューパートを書籍化した「のっちはゲームがしたい!の本」がKADOKAWAより発売中です。コールドスリープ中のお供に、ぜひご購入ください)

Perfume最新情報

12月31日に放送される「第76回NHK紅白歌合戦」への、Perfumeの2年ぶり17回目の出場が決定しました。これがコールドスリープ前最後のパフォーマンスとなります。ぜひ、その瞬間をテレビで見届けてください。

©Hakababunko / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES.

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本日放送「CDTVライブ!ライブ!」クリスマス特番のタイムテーブル公開!星野源、スキズ、HANA、Perfume、なにわ男子の歌唱時間は

8日
「anan」2476号 Perfume スペシャルエディション表紙 Ⓒanan/マガジンハウス

Perfumeがふわもこ衣装で「anan」表紙に登場、ドレスアップした“コールドスリープ”グラビアも

11日
「CDTVライブ!ライブ!」ロゴ ©TBS

「CDTVライブ!」星野源、キンプリ、HANA、なにわ男子、back number、Perfumeら総勢22組の歌唱曲発表

12日
かしゆか

Perfumeかしゆか「news zero」に今夜再び出演、能登半島地震から約2年の石川へ

13日