近年、海外のヒップホップシーンでは、Twitchなどのプラットフォームで自分自身の動画を配信する動画配信者(ストリーマー)が欠かせない存在となっています。日本でもVtuberをはじめとして、配信の人気はここ数年で高まっていますが、海外では音楽と配信を組み合わせた企画がエンタメとして確立されており、特にアメリカのヒップホップと配信者は強固に接続。ヒップホップメディアでは、ラッパーのニュースと並んで配信者の話題がメインで扱われており、配信そのものがメインストリームとなっています。
配信というプラットフォームでの編集も予定調和もないイベントは、視聴者を熱中させ、カルチャーをともに作っていくという体験を与えます。この記事では、海外で配信の文化がいかにして盛り上がり、ヒップホップと結び付いていったかをたどりつつ、dominguapや「ラフスタ」など、日本のシーンの最前線で活躍するヒップホップ配信者も紹介します。
文 / YOSHI
コロナ禍が生んだ配信文化の盛り上がり
徐々に増加していったTwitchのストリーマー
2020年にコロナ禍になると、これまでのエンタテインメントはまったく様子を変えました。ライブは中止になり、自宅待機が求められる日々です。毎日家にいるという環境で、人々は外に出ずに楽しめるエンタメを求めるようになっていきました。配信はそうした状況で盛り上がりを見せたエンタメの1つです。もともと2020年以前から配信は存在していたし、特別なものでもありませんでしたが、若い世代がお金を使わずに熱狂できるものとして、少しずつ身近なものになっていきました。
配信をあまり観ない人にとって、Twitchというプラットフォームはあまり聞きなじみのない言葉かもしれません。このプラットフォームではゲーム実況や雑談など、さまざまなコンテンツが配信されています。2013年から徐々に増加していったTwitchのストリーマー、そして視聴者ですが、コロナ禍に入った瞬間に異常なスパイクを見せています。
それまではYouTuberが大きな存在でしたが、外出せずに家の中で使える時間が多くなったことで、好きなコンテンツクリエイターの動画も見尽くされていくようになりました。YouTuberの裾野が拡大するとともに、Twitchの配信者に視聴者がスライドしていきました。
配信の面白さは “青春の追体験”
日本で配信というと、Vtuberの存在が頭にまず浮かぶ人が多いでしょう。「配信=スパチャで稼ぐ」という認識の人もいるでしょうが、実際はもっといろんな文化が配信の中で成り立っています。ヒップホップと配信の結び付きを説明する前に、配信にどういった面白さがあるかをカナダの配信者xQcの事例から解説します。
xQcは、もともとアクションシューティングゲーム「オーバーウォッチ」のプロゲーマーとして活動していましたが、問題発言が原因で所属チームを退団したあと、Twitchなどのプラットフォームで配信者としての道を切り開きます。FPSの元プロであるxQcは、「Fortnite」などのゲームをプレイしてファンを獲得。その一方でFPSゲーム以外のコンテンツにも興味を持ち、Twitch界に新しい風を吹かせていきます。
多くの配信者がコロナ禍でゲームをプレイし、「Fortnite」がピークを迎える中、xQcが始めたのはチェスでした。チェスの競技人口は8億人以上と言われ、chess.comというオンラインチェスのプラットフォームには2000万人以上のプレイヤーがいます。オンライン上で24時間いつでも対戦でき、シンプルながら奥深いチェスに彼はハマっていきました。
上の動画はHikaru Nakamuraという早指しチェスのプロが、xQcのミスを見て悶絶している映像です。チェスのルール自体はちょっとがんばれば、すぐに覚えられるので、こうしたコンテンツはすぐに人気になっていきました。その後、xQcはコラボ配信などを通してchess.comがホストする大会に出場。Hikaru Nakamuraにチェスを教えてもらいながら配信者や有名人と戦います。配信の面白さは、こうした過程を楽しむことにこそあり、“青春の追体験”とも言われます。視聴者は配信者が上達していく様子を楽しみ、配信者が大会に出場すれば、みんなで応援するのです。
配信が生み出す文化祭のような盛り上がり
またxQcは、ゲーム「グランド・セフト・オート」(GTA)の超巨大なRP(ロールプレイ)サーバー・NoPixelに参加します。先ほどのチェス配信を大会に向かって努力する「部活動」と例えると、これから紹介するRPサーバーは「文化祭」のようなものです。
「GTA」は、本当にいろいろなことができるゲームです。まるで実際の街のように人間関係も存在しており、警察、飲食店経営、釣り、カーディーラー、救急隊、ギャングなど、いろいろな職業をしながらお金を稼ぐことができます。2020年後半、xQcを含む著名人がこのRPサーバーに参加すると、とてつもない盛り上がりとなりました。初対面の人同士が即興のコントを作り上げていくスタイルで、ほかのゲーム配信と違ってストーリー性があるため、ドラマのように続けて配信を観る必要があり、視聴者の時間を限りなく配信に閉じ込めました。その日の配信のまとめはYouTube上にクリップとして立て続けに投稿され、1人称視点のドラマが連日公開されました。配信者として力を付ければ自分もドラマの一部になれるという可能性もあり、一大ムーブメントを起こします。
デトロイトのラッパー、ティー・グリズリーはRPサーバーで、自分を中心としたコミュニティを作ることに成功しました。実際の世界でジュエリーを盗んで捕まっていた人が、「GTA」で銃を持ってギャングを演じていますからリアリティが違います。このサーバーは、有料のメンバーシップなどの参加資格を得た人のみ参加することができ、ファンクラブ的な存在として機能しました。月間リスナー600万人と根強いファンベースを持つティー・グリズリーですが、「GTA」での収入が音楽を超えたとも話しており、その規模の大きさがうかがえます。
後述しますが、その波は日本にもストグラ(ストリートグラフィティロールプレイ。「GTA」をベースにしたメタバース×ロールプレイのコンテンツ)という形で訪れ、Vtuber、配信者、アーティスト、声優などを巻き込んだ大きなものに発展していきます。このようにゲームと配信を通したコンテンツは、一方的に体験を与える存在から、喜怒哀楽を分かち合ったり、1つのストーリーや企画を一緒に作り上げたりするものに少しずつ変化していったことがわかります。
ラッパーとつながり始める配信者
「Fortnite」人気とラッパーのリンク
ここからはラッパーと配信者のつながりの歴史を見ていきましょう。2018年に同時接続者数60万人を超えるとんでもないコラボ配信がありました。当時人気No.1配信者だったNinjaとラッパーのドレイクによる「Fortnite」でのコラボです。ドレイクの楽曲「Hotline Bling」のくねくねしたダンスのミームネタは、そのままエモート(ゲーム内で使えるキャラクターの動き)として利用できるようになり、キッズたちを熱狂させました。
この「Fortnite」という空間は、大人が立ち寄れないキッズだけの世界で、煽りあり、暴言あり、なんでもありのユートピアでした。「Fortniteキッズは~」のように子供っぽさをバカにする代名詞でもありましたが、ドレイクがNinjaとコラボするということはヒップホップシーンが「Fortnite」の存在を認め、歩み寄っていく最初の一歩だったかもしれません。
「Fortnite」のユーザーやチャンネルは2017年から2018年にかけて爆発的に増加しますが、2019年から少しずつ配信者が増加する一方、視聴者は減少するという需要減・供給増の現象に直面していきます。2019年10月に一時視聴者が爆増しているのは、ブラックホール事件というゲーム内イベントで一時的に「Fortnite」がプレイできなくなるという演出であり、次のチャプターが始まる前の準備期間でしたが、数字を見る限りそこで立て直しはできなかったようで、現状維持がやっと。コロナ禍で一気に回復したのがわかります。このコロナ禍の波を受け、一気に人気ストリーマーになったのが日本でも愛されているアイ・ショー・スピードだったりします。
2020年4月には「Fortnite」内でトラヴィス・スコットのライブイベント「ASTRONOMICAL」が開催されました。これはトラヴィス・スコットという巨大なファンベースを持つアーティストと、「Fortnite」に付随するゲームカルチャーが触れた衝撃的なイベントでした。リアルでのライブができない音楽業界にとっての希望として、連日ニュースで取り上げられていましたし、リアルタイムで経験した自分も時代の変化を画面越しで実感しました。宇宙でライブ見たのはこれが初めてでしたね。
ただ「Fortnite」とそれに準ずるゲーム配信文化が、ヒップホップと完全につながったというにはまだ少し早く、文化として2つのカルチャーがより強固なコネクションを持つのはもう少しあとの話です。
ラッパーコラボの重要人物、アディン・ロス
コロナ禍で特に人気だったゲームとして「Fortnite」のほかに「2K」(NBAのゲーム)があります。アディン・ロスは「2K」をプレイする配信者で、視聴者は彼が賭けをしながら戦う試合に熱狂。バスケ選手のブロニー・ジェームズと試合をする中で父親のレブロン・ジェームズが登場するシーンがあるのですが、その奇跡的な遭遇の切り抜きが爆発的に広がり、人気になりました。
彼は勢いそのままに著名人とコラボをするようになり、一躍メディアのような存在に。2021年にリル・ティージェイとコラボしてラッパーとのコネクションを深めると、トリー・レーンズが彼の配信でフリースタイルを披露して、それもバイラル。アディン・ロスはヒップホップコミュニティとゲームコミュニティを強く結び付けた開拓者の1人になりました。
彼はラッパーが地力を証明するフリースタイルを披露する場を配信に用意すると同時に、ラッパーをバレないようにおちょくるスタイルで人気を得ました。おちょくりがバレて、ラッパーの機嫌が悪くなるケースもありつつ、それはそれで視聴者が盛り上がります。そうしたおちょくりのやりすぎで、ポロGとアディン・ロスがビーフ状態にあるというニュースも一時期流れていました。アディン・ロスがポロGに「Twitch知ってる?」と聞いて、ポロGが「よく知らないけど、お前らが変なことしてんのはわかるよ」と即答したシーンは切り抜きでも有名です。
ラッパーであり、配信者としても活動しているDDGも、アディン・ロスについて、ヒップホップと配信を結び付けた第一人者と評価しています。もちろん過去にも配信者とラッパーのコラボはありましたが、自分の配信スタイルを貫いてラッパーを自分のフィールドに出演させるフォーマットを確立したのはアディン・ロスにほかならないでしょう。
カイ・セナットが提示した配信とヒップホップの新しい形
ImDontaiやZIASなどリアクション動画でヒップホップシーンに貢献していた人もいましたが、彼らも次第にYouTuberからTwitchでの配信者にシフトチェンジし、配信でできることの幅を活用する時代になっていきます。その代表的な存在が、カイ・セナットという超エンタテイナーです。最もTwitchでフォロワーが多い男であり、今や2000万人近いフォロワーが彼を支えています。彼は配信者というより企画屋であり、YouTuberとして成功を収めたのち、配信の世界へ降り立つと瞬く間に人気を獲得しました。YouTube上で映画を作ったり、コントをやったり、ドキュメンタリーを作ったりと、はちきれんばかりのエナジーで企画に取り組み、視聴者を楽しませています。
アイ・ショー・スピードがギャングサインをさせられそうになったところをカイに電話で止められる友情シーンは日本でもバイラルしていましたよね。スピードが行き当たりばったりの熱血系としたら、カイは自らの企画で熱血を披露するクレバー熱血という感じでしょうか。配信に100%のエネルギーをぶつけるスタイルが海外でも注目を浴びるようになり、カイは2022年からリル・ベイビーや21サヴェージらとコラボを始めると、その規格外の明るさで一気にヒップホップシーンにも受け入れられ、今ではシーンに欠かせない存在となりました。
昨年3月にプレイボーイ・カーティの「I AM MUSIC」がリリースされたときのリアルタイム配信は伝説でしょう。リリース直前にプレイボーイ・カーティからカイに電話がかかってきて、車の中で新曲を聴いている様子が配信で共有されたことで視聴者のボルテージが一気に上がりました。トラヴィス・スコットのアルバム「ASTROWORLD」が2018年にリリースされたときのことを皆さん覚えていますか? 配信と同時に1曲目から聴き始めたら、3曲目にシークレットでドレイクが参加していて、さらにビートチェンジが来たときの驚きを。あの興奮がカイの配信だとリアルタイムでみんなと味わえるんです。
ヒップホップ配信のゲームチェンジャー・プラークボーイマックス
そしてヒップホップと配信を語るうえで外せないのが、2021年頃に活動を開始したプラークボーイマックスです。彼は完全にゲームチェンジャーでした。彼が登場するまでの配信者はゲームと少なからず結び付いていましたが、マックスはヒップホップをメインとした企画を作り上げ、シーンをアンダーグラウンドから支えた重要人物です。
レーザー・ディム700が人気になるきっかけとなったラッパーを競わせる企画「SONG WARS」や、セントラル・シー登場回は同接12万を記録したパフォーマンス配信企画「In The Booth」。マックスはエンジニアとしての技量を生かし、ヒップホップと配信を結び付けた企画をいくつも誕生させ、そこからヒット曲を生み出すことを可能にしました。アディン・ロスが配信とヒップホップの新しい形を提示したと考えると、マックスは配信がプロモーターとして最も重要な機関であることを世間に証明した人物と言えます。
距離のあった日本での配信×ヒップホップ
コロナ禍での日本のヒップホップ文化
ここからは日本での配信文化について見ていきましょう。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」が終了した2020年、日本のヒップホップシーンは、アメリカほどうまくコロナ禍に対応できていませんでした。ロディ・リッチの「The Box」、トラヴィス・スコットの「Franchise」など、海外のヒップホップアーティストはTikTokを通してヒット曲を生み出して莫大な富を築く一方、日本ではヒップホップ文化とTikTok文化は対立していました。
もちろんその中でも海外文化への理解度が高いアーティストは混沌の中で成功をつかんでいきます。JP THE WAVYの「WAVEBODY」、LEX、Only U、Yung sticky womの「STRANGER」といった楽曲がヘイターの意見をうまく散らし、TikTokでバイラルヒット。BAD HOPの無観客ライブも印象的であり、彼らは「コロナ禍というマイナスをプラスに変換するには?」という問いに答えようとしていたと言えます。しかし、配信とヒップホップの結び付きについて言えば、日本ではコロナ禍でもあまり大きな変化はありませんでした。
そうした中でコロナ前からあった「ニートtokyo」「ラップスタア」、Red Bullによる「64 Bars」「RASEN」といった動画企画が盛り上がり、2022年にスタートした漢 a.k.a. GAMIの「漢kitchen」、Rommy Montanaの「03- performance」など新たな動画企画が生まれると、日本のヒップホップは一気に輝きを取り戻していきました。これらの企画の視聴者が拡大すると、「その企画に出演するためには」と考えて成り上がりのストーリーを設計するアーティストも多くなってきました(関連記事:「ラップスタア」でどう成り上がるか?)。
日本では配信と何が結び付いた?
海外では配信とヒップホップがいち早く結び付きましたが、それはヒップホップがメインストリームで、配信が上昇傾向の一大コミュニティだったからかもしれません。では、日本はどうでしょう。日本は「ニコニコ」という独自の文化の影響力が強く、現在の配信文化にも根強く引き継がれています。逆に「ニコニコ」出身ラッパーの一部は外に居場所を求め、ライブなどを繰り返すことで自分たちの居場所を確立してきました。釈迦坊主が主催していたライブイベント「TOKIO SHARMAN」などはそうした文化の派生とも考えられます。
配信に話を戻しますと、日本ではホロライブ、にじさんじという2大Vtuber事務所の存在は大きいでしょう。コロナ前から人気を獲得していたVtuberという匿名性の高い文化は、ヒップホップとは少し噛み合わせが悪かったかもしれません。同じく匿名性の高い歌い手、ボカロ、イラストレーター、マンガ家などがVtuberの配信文化と近付いていきました。
日本の成功事例:CRカップ
序盤にてxQcを中心に話していた配信で人気が出ていた要素をここでもう一度おさらいします。
- 視聴者が配信者の成長を楽しむコンテンツ(チェスの例)
- 配信者が視聴者と作る一大コンテンツ(「GTA」の例)
この2つの要素は日本でも誕生しました。しかし、それは海外のようにヒップホップ文化と結び付くことはなく、匿名性の高い文化の中で完結した配信になっていたように思います。この2つの要素の日本での事例をそれぞれ見ていきましょう。まず視聴者が配信者の成長を楽しむコンテンツとしては、CRカップ(eスポーツの発展を目的として開催されるCrazy Raccoon主催の大会)が1つの成功例として挙げられます。
2018年に発足したプロゲーミングチームのCrazy Raccoonは、2020年から本格化したCRカップから爆発的な人気を獲得しました。CRカップは招待された配信者がチームとなり、ゲームのトーナメントにて優勝を目指すというものです。プロのeスポーツプレイヤーもコーチとして加わり、本気で優勝に向けて練習をしていきます。プロが配信者に教えて優勝を目指すという構図は、まさにxQcのチェス配信と近いものがありました。2021年には歌い手の天月-あまつき-がストリーマー部門で加入。2025年には山田涼介が加入し、ゲームと親交が深いアーティストを中心に強固なコネクションが作られています。
ただヒップホップにおいてそうした領域のつながりは薄かったようです。唯一その道を推し進めていたのは2022年に自ら「Apex Legends」の大会を開いたOZworldでしょう。彼はプロeスポーツチーム・FENNELに加入して、数多くの挑戦を行いました。ただ視聴者が配信の何に熱狂するかと言えば、大会そのものではなく、そこまでの道のりにあり、配信者と視聴者がともに歩むことが醍醐味でした。そうした熱狂を生み出せていたら、彼の挑戦はもっと歴史に残るものになっていたかもしれません。
成功事例:VCR・ストグラ
配信者が視聴者と作る一大コンテンツとしては、VCR(招待制のゲーマー向けコミュニティ・VAULTROOMとCrazy Raccoonが主催するゲームイベント)やストグラがあり、配信者やVtuber、活動者、さまざまなプレイヤーがごちゃ混ぜで参加した「Rust」というゲームのサーバーが人気を獲得しました。序盤は炎上を繰り返しながらも、何が起こるかわからない配信はたくさんのドラマと笑いを視聴者に届けました。
基本的には誰でも入れるようなサーバー運営であったため、問題点も同時に多くありましたが、VAULTROOMとCrazy Raccoonはそうした状況を整備し、楽しめる環境を作ることに成功します。招待制で配信者が集まる安全性のあるサーバーを用意したことで、事務所の垣根を超えた自由なコラボレーションを実現。上質な切り抜きがYouTube上に連日アップロードされる供給の時代を作り出しました。
日本の配信者SHAKAは、VCRが行われた月では世界で2位の視聴者数を記録(3位はカイ・セナット)。若者を中心に確立された配信エンタメは、数字上でも人気を証明することになりました。また「GTA」のRPサーバーとしてストグラが日本での人気を確立すると、多くの配信者や声優、アーティストが参加しました。ストグラは神奈川・パシフィコ横浜で開催されたイベントが即完売するほどの盛り上がりで、こうしたドラマ的で連続性のあるコンテンツがいかに人気かがうかがえます。
ラッパーとしていち早く配信者のコミュニティを察知して参加したのがralphです。彼はVCR、ストグラに参加しラッパーという一面を生かしたキャラクターで、それまでにない絡みを配信上に作り出し、配信者とラッパーの相性のよさを提示しました。Vtuberの文脈から見ると「ralphがVtuberと絡んでいる」というその部分にだけ目がいくかと思いますし、実際そのような投稿がSNSでも見られている現状です。ただ海外の配信文脈やティー・グリズリーの例を鑑みると、ralphはインターネット上でのラッパーによる居場所作りをかなり早い段階で実行していたことがわかります。最近ではVaVaも参加していますし、少しずつその波は広がっています。
シーンの未来を映し出すdominguap、ラフスタ
アングラシーンの愛され配信者・dominguap
日本のヒップホップとTwitchの結び付きにおいて、dominguapは非常に重要な役割を担っている配信者です。配信界のゲームチェンジャーとなったプラークボーイマックスについて紹介しましたが、その流れを誰よりも早く読み取って日本のシーンに還元したのがdominguapであり、アンダーグラウンドラッパーが未公開曲で対決する企画「MOB SONG WARS」は特に話題を生んでいます。彼はアンダーグラウンドのヒップホップシーンに対して強い思いがあり、それがラッパーとの強い信頼関係につながって、ほかにはない熱量のファンベースを構築しています。
昨年一気にシーンを駆け上がったWorldwide Skippaも、dominguapへの愛をラップしており、dominguapとつながりの強いアーティストにとって、彼の配信は紛れもないフッドとなっています。ABEMAのオーディション番組「RAPSTAR 2025」では配信で注目を浴びたアーティストが途中で敗退していきましたが、それはフッドや実生活に根付いた部分を高く評価する番組との相性の悪さがあったかもしれません。dominguapを中心としたカルチャーは、ラッパーたちが自信を持って自身の出自だと言い切れるほどの居場所となっており、来年以降こうした文化から数多くのスターが誕生するでしょう。
Kamuiとポーザー白石の「ラフスタ」
Kamuiとポーザー白石によるTwitch配信「ラフスタ」も、日本のヒップホップと配信の文化を広げるうえで重要な役割を担っています。ラッパーであるKamuiはプレイヤー視点の言葉と高いエネルギー、ポーザー白石はTikTokでの活動を背景として若者やシーンの空気を配信に持ち込んでいます。
この2人のコンビは、今のヒップホップシーンを即座に反映するメディアとしてdominguapとは違う目線を提供しています。都内にスタジオがあることで、ラッパーが直接足を運ぶことも多く、「In The Booth」企画などではラッパーのリアルなレコーディングの姿を観ることができます。シーンの表で見えている部分だけでなく、1人の人間であるラッパーの素の魅力が配信を通して伝わってきます。
dominguapや「ラフスタ」に注目しておくことで、日本のヒップホップシーンの次のトレンドをチェックすることができるでしょう。
今後のヒップホップ配信、日本で何が流行る?
ラッパーと配信者の二刀流
ここからは日本のヒップホップ配信がどのように移り変わっていくかを考えてみたいと思います。まずはDDGのようなラッパーと配信者の二刀流アーティストの誕生です。エンタテイナーな性格が配信と強くマッチしていた彼は、アーティストチャンネルで300万、ライブ配信者チャンネルで400万という登録者を誇っており、動画配信者を表彰する「ストリーマーアワード」では、Best Music StreamerとBest Breakout Streamerの両方にノミネートされました。
このスタイルで活動ができるアーティストはある程度限られますが、ラップとは別の自分らしさを見つけることができる場合、ラッパーと配信者の活動は相乗効果をもたらすでしょう。DDGの場合は、子供の曲にフィチャーリングで入るなどの家族との絡みや、元カノが自分の曲を聴いている様子を見る配信など、プライベートとラップをつなげたネタで独自性を見出しました。日本のラッパーでもLEXが最近は頻繁にTwitchでの配信を行うようになっており、活動スタイルも変化していっています。日本にも二刀流のスターが近い将来現れるでしょう。
裏方スキルを持つ配信者
ARIatHOMEのようなDJやプラークボーイマックスのようなエンジニアなど、裏方的なタイプの配信者が注目されていることも重要なポイントです。配信の面白さとして、何が起こるかわからない偶然性があり、そうした偶然性に対応するには、裏方的なスキルが有利に働く面があるからでしょう。
2025年の音楽部門の「ストリーマーアワード」には、ARIatHOMEのほか、FaZe KaysanのDJ 2名、ドラマーのKriss Drummer、エンジニアのプラークボーイマックス、ラッパーのDDGがノミネートされており、これまで裏方のイメージを持たれていたプレイヤーがフロントポジションを担っていることがわかります。TikTokでラッパーの素の一面を引き出すDJ CHARIのように、日本にも面白いプレイヤーが数多くいますし、今後そうしたスキルを持つ配信者がさらに生まれてくることを期待しています。
今後配信を始める人へ
とにかく過激なことをして動画で注目を集める時代もありましたが、少しずつ時代は変化しています。配信という文化のリアルタイム性は、ヒップホップと非常に相性がよく、毎日のように面白い企画がスタートしている状況です。プラークボーイマックス、アディン・ロス、FaZe Kaysan、ラカイ、DDGなど配信と音楽、ヒップホップを組み合わせたスターがここ数年で数多く誕生しました。彼らは自分の人柄とスキルをうまく扱い、今までにない視点を提供しています。DJ Akademiksのようにヒップホップゴシップを扱っていた人も、ZIASのようにヒップホップを専門としてリアクション動画を作っていた人も、プレイヤーに関わる人も、少しずつ配信に移っていく中で、ヒップホップシーンに2018年のような熱が戻ろうとしています。
日本ではそうした意味でまだまだ視点が足りないです。今や誰でも配信者になれる時代。Twitchをインストールして、気軽に配信を始めてみましょう。
プロフィール
YOSHI(ヨシ)
ヒップホップ音楽ライター


