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嵐が歌うのは、5人の歩んできた歴史や関係性だ / 依存的な快楽「ブレインロット」の恐ろしさ

再生数急上昇ソング定点観測
13分前2026年03月13日 9:05

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月27日から3月5日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

文 / 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、1位にAdoの「ビバリウム」が登場した。2⽉26⽇に発売された⾃伝的ノンフィクション⼩説「ビバリウム Adoと私」を元に作られた楽曲で、⾃⼰否定に苦しみながらもどこかに光を求めるAdoの⼼の叫びを昇華させた歌詞が切実さを際立たせている。Adoにとって初の“実写MV”で、楽曲内の言葉や残響を表現した約300カットの迫力ある映像に仕上がっている。

2位にはHANAの「ALL IN」がランクインした。メンバー全員で作詞・作曲に初挑戦した今作は、彼女たちらしい力強さとクールさが「全部bet」という歌詞とともに詰め込まれている。

13位に登場したのは、BLACKPINKのミニアルバム「DEADLINE」のリードトラック「GO」だ。2月27日のMV公開から10日間で4500万回再生を達成し、破竹の勢いを見せている。

29位には宝鐘マリン&星街すいせいの「Chatter Chatter」がランクインした。ホロライブプロダクションに所属する人気Vtuber同士によるコラボ楽曲で、キャラクター性を生かしたテンポのいいボーカルワークと、にぎやかな世界観が印象的だ。

歌い手、ダンスボーカルグループ、Vtuberなど、さまざまな女性アーティストの新曲が並んだ今週は下記の3曲をピックアップする。

嵐「Five」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場8位

本日3月13日に始まる5大ドームツアーの最終公演をもって活動を終了する嵐が、約5年ぶりとなる新曲「Five」のMVを3月5日に公開し、5日間で850万再生を突破した。

このMVはストーリー性よりも、メンバーの表情や動きに焦点を当てた構成が印象的だ。ソロショットと全員が並ぶシーンが繰り返されることで、それぞれの個性と、この5人だからこそ成立するバランスのよさが際立つ。YouTubeのコメント欄には「嵐が動くと日本が元気になる」「嵐は終わるのではなく、永遠を始めるんだ」など、嵐が活動していることへの喜びやグループの存在の大きさを感じさせる声が多数寄せられた。

タイトルが示す通り、「Five」は“メンバー5人”そのものをテーマにした楽曲と言える。歌詞には長い年月をともに歩んできた仲間との絆や、互いに支え合いながら前へ進んでいく姿が描かれている。個々の道は違っても、集まれば1つの力になるというメッセージが根底にあり、グループとして歩んできた歴史や関係性を重ねて読むことができる。

また「どんなときでも肩を並べて分かち合った日々が / 未完成な僕たちにチカラをくれた」「幸せのかたちは少しだけ姿を変えていま / 同じ時間を刻んでいるそれぞれの空の下で」といったフレーズからは、これまでの時間を振り返りながらも未来へ進もうとする前向きな視点が感じられる。過去の経験が現在の自分たちを形作り、そこから新しい景色を一緒に見に行こうとする。そんな意思が伝わってくるこの曲は、同時に嵐というグループのアイデンティティを高い解像度で示した快作だ。

東京真中「ブレインロット」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場16位

東京真中の新曲「ブレインロット」は、TikTokやYouTubeなどのショート動画を過剰に見続けることで集中力や思考力が低下する状態を指すネットスラング「Brain rot(脳が腐る)」をタイトルに掲げた楽曲。作品全体で描かれているのは、強い刺激や快楽に少しずつ溺れていく現代的な感覚である。

冒頭の「用法容量度外視 合法 Doping time」というフレーズは、本来守るべき節度を無視して刺激を摂取している状態を示す言葉だ。ただしそれは違法なものではなく、先述したSNSや動画コンテンツなど日常に潜む依存的な快楽を思わせる。「死体のようで脳はHappy Happy Happy Dance」という対比は、体は疲弊しているのに脳だけが快楽に踊らされているアンバランスな状態を表現しているのだろう。また「『ちょっとだけ休憩』で終われたら訳ないわ」という一節からは、軽い息抜きのつもりだった行為が、いつの間にか抜け出せないループへと変わっていく心理が浮かび上がる。「Nope, too late」「Brain rot もう止められない」という言葉は、危険だとわかっていても止められない状態を象徴している。楽曲やMVを含め“脳の依存”という危うさが、オリジナリティあふれる言葉と世界観で鮮やかに描き出されている。

暴飲暴食P「うそつきマカロン」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場42位

暴飲暴食Pの新曲「うそつきマカロン」は、「相手の理想に合わせて形作られていく自分」と、その過程で生まれる違和感や自己の喪失を描いた楽曲だ。主人公は相手の目に映る「甘いものが好き」「リボンやチュールが似合う」といったかわいらしいイメージを受け入れながらも、それが本当の自分なのかという疑問を抱いている。本当はマカロンが好きではないにもかかわらず、相手がくれたマカロンを「吐きそうな甘さを飲み込んで」と歌う場面は、期待に応えるために自分の本音を押し殺してしまう姿を表現しているように思える。

サビで繰り返される「マカロンになるよ」という言葉は、相手が望む存在へと自分を変えていこうとする決意の表れだ。しかし「たくさん噛んで 一部にしてね」というフレーズが示すように、それは相手に消費され、やがて自分自身が失われていくことも意味している。「自分がいなくなったって本望」という言葉からは、愛されるためなら自己を手放しても構わないという、危うい感情が浮かび上がる。

やがて物語が進むにつれ、相手が主人公のことを実はほとんど知らないという事実が明らかになる。好きな香りや花、ブランド、嫌いな色や曜日など、「ひとつも知らないだろうけど」と語られる部分は、相手が見ているのが実在の人物ではなく、自分の理想像でしかないことを示している。それでも相手は「運命」や「絶対」と信じて疑わない。その認識のずれが、歌詞全体にほのかな皮肉と不安を漂わせている。

そして最後に語られる「マカロンは好きじゃないけど / それも知らないみたいだけど」という一節が、この物語の核心を突く。甘くかわいらしいマカロンのイメージの裏側で、恋愛の中で自分が失われていく怖さと、他者の視線によって形成されるアイデンティティの危うさが繊細に描写されている。

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