2027年に開学50周年を迎える京都芸術大学が、リブランディング発表会を本日9月2日に大阪の文化施設・VS.で開催。次の50年に向け、坂本龍一の思想や功績を次世代につなぐ「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」(仮)構想を始動させることを発表した。
「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」(仮)は、坂本と親交が深かった京都芸術大学前理事長との縁をきっかけに企画・進行されてきたプロジェクト。坂本が遺した知的・物質的遺産を次世代のアーティストや学生たちへとつなぎ、新たな表現や創作を生み出す創造拠点として、スタジオ、ラウンジ、アーカイブという3つの機能を提供する試みだ。
まずは佐藤卓学長が挨拶とともに、京都芸術大学の新たな愛称“KUA(クア)”とロゴを公開。“KUA”とは京都芸術大学(Kyoto University of the Arts)、ならびに学校法人瓜生山学園(Kyoto Uryuyama Academy)の頭文字を取った略称で、ロゴマークは一滴の墨汁を垂らした際にできた偶然の形を佐藤が自らデザインした。またKUAの“U”には茶碗の底などにある高台が付けられており、大学が“学びの器”となることを表現していると、佐藤らしいデザインへのこだわりを明かした。
徳山豊理事長とプロジェクトプロデューサーである保持壮太郎は、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」(仮)の具体的な構想を解説。まずは坂本が遺した作品や機材などの音楽資産をキャンパス内の施設「瓜生山荘」へと移し、学生や次世代アーティストたちが直接触れられる実験的なスタジオ空間を作るという。スタジオの設計は京都市京セラ美術館の改修で知られる建築設計事務所・ASの青木淳氏と品川雅俊氏が担当。坂本とも共作経験のある音楽家・原摩利彦がリードアーティストとして、このスタジオでしか生まれ得ない未知の音の創出に挑む。
トークセッションパートでは、坂本が映像作家ナム・ジュン・パイクとコラボレーションした1980年代のビデオアート作品「電子の拓本 ALL STAR VIDEO」に多大な影響を受けたという小山薫堂副学長が進行役となり、青木、品川、原が坂本とのエピソードやKUAへの期待について語る。1996年に行われた「Ryuichi Sakamoto Trio World Tour」大阪公演を観て音楽家を志したという原は、「坂本さんが持っておられた機材が教育の場に集まるということで、学生さんたちと一緒に考えながら音楽を作っていきたい」「リアルタイムで音楽を作ってるところを学生たちに見てほしい。音楽が生まれる瞬間を共有できたら」とKUAへの期待を込めて語った。
坂本が所持していた貴重なレコードコレクションも持ち込まれる予定という話に、小山副学長は「坂本龍一がラジオで『CDに衝撃を受けたからレコードを全部捨てた』と言っていた」という話を大学1年生のときに聞いて「これからCDの時代になるんだ」と思いレコードを捨てようとしたという初々しいエピソードを披露。「あのとき坂本さんのマネをして捨てなくてよかった(笑)。そのくらい坂本さんの影響力は大きい」と笑いを誘った。
会見の後半では原、蓮沼執太、東北ユースオーケストラによるスペシャルパフォーマンスも披露された。ライブパートでは、原が音楽を担当する西川美和監督の最新作「わたしの知らない子どもたち」のメインテーマ曲「太陽と子どもたち」ショートバージョンを東北ユースオーケストラとともに初パフォーマンス。東北ユースオーケストラによる坂本の「Aqua」、原、蓮沼、東北ユースオーケストラによる「Kizuna World」も演奏された。さらにこの日が初共演となった原と蓮沼が、モジュラーシンセを用いた即興セッションを披露した。
音楽ナタリーは終演後、原と蓮沼に初共演の感想を聞いた。実は同い年で20年来の友人であったという2人。蓮沼が「ちょっと短かったね」と問いかけると、原も「もうちょっと1つひとつの展開に時間をかけたらさらに楽しめそうな気がしました。まだまだいけるなという感じではありましたね」と手応えを感じた様子だった。
音楽ナタリーのYouTube公式チャンネルでは、会見およびライブの模様と、原と蓮沼によるコメントを収めたダイジェスト動画を後日公開する。


