YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月23日から10月29日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、2位にMrs. GREEN APPLEの「シンデレラ」が登場した。これは9月に発売されたアルバム「POPS」の収録曲で、MVの企画・監督・脚本を手がけたのはメンバーの大森元貴。思い描いていた理想のシンデレラ像と、現実の自分とのギャップを描いた楽曲で、その世界観をアニメーションと実写を織り交ぜながらドラマチックに映し出している。
14位にはILLITの「You’re Under Arrest」がランクインした。今作は5thミニアルバム「BREAK EVEN」のリード曲。MVでは、思わせぶりな態度で自分たちの心を振り回した相手を、ブラックエージェントに扮したメンバーが追跡する様子がコミカルに描かれている。
19位に登場したのはsupercellの「LEGENDS」だ。今作はポケモンと初音ミクのコラボプロジェクト「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑」のために、ryo(supercell)が書き下ろした楽曲。ゲームソフト「Pokémon LEGENDS Z-A」から着想を得て制作され、MVでは初音ミクがストリンダーやゴリランダーとともにバンド演奏を繰り広げる。なお、10月23日に公開されたsupercellの「1996」も75位にランクイン。こちらは幻のポケモン・ミュウを探す子供たちの冒険を描いたアニメーション作品となっている。
22位にはYAOの「ありふれた世界の果てに (feat. Awich, CHICO CARLITO, ONE OK ROCK & Paledusk)」が登場した。MVには宮沢氷魚、森カンナ、山田孝之らが出演しており、沖縄の雄大な自然と、そこで暮らす人々の日常を交差させた映像が印象的だ。
バンド、ガールズグループ、ボカロなど、多種多様な新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
M!LK「ザッツ!超常」ダンスパフォーマンスムービー
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場1位
軽快なディスコサウンドにコミカルな振付をかけ合わせ、M!LKが持ち前のエンタテインメント性を存分に発揮している。
テレビアニメ「超巡!超条先輩」のオープニングテーマとしてオンエア中の「ザッツ!超常」は、弾むリズムと遊び心に満ちたメロディが印象的な1曲。このダンスパフォーマンスムービーでは、アニメに基づいてデザインされたレトロな警察官風の衣装に身を包んだ5人が、鮮やかなLED映像を背に躍動する。
サビでは両手を右に振る親しみやすい振付で見る者を引き込み、サビ終わりの間奏ではメンバーの吉田仁人と塩﨑太智が切れ味鋭いソロダンスを披露。ユーモラスな動きの合間に高度な技術を織り交ぜ、パフォーマンスに心地よい緩急を生み出している。楽しさとスキルが絶妙なバランスで共存する、M!LKの魅力が凝縮された映像だ。
KEY TO LIT「KEY TERUYA2 ~キテルヤツ~」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場3位
12月9日にCDリリースされるKEY TO LITのデビュー曲「KEY TERUYA2 ~キテルヤツ~」は、仲間との絆を旗印に、まだ見ぬ世界へと漕ぎ出す5人の出航宣言だ。「まずは 絆」「ずっと 仲間」という歌詞が象徴するように、にぎやかなメロディに乗せて未来への決意を高らかに歌い上げる。
MVは「日の出」をテーマに制作され、天上天下の世界をイメージしたセットで5人が躍動感あふれるダンスを繰り広げる。メンバーの個性が際立つソロカットに、目まぐるしい画面転換やコラージュ、CGが入り乱れ、まるで万華鏡の中で打ち上げ花火が始まったかのよう。1分22秒からの盆踊りを思わせる振付も印象的で、気付けば観る者まで彼らの祭りに巻き込まれている。
次々と景色が移り変わっても、5人の存在感が映像全体を力強く貫いている。そんな頼もしさを携えて、KEY TO LITは自分たちだけの夜明けを迎えようとしている。
BABYMONSTER「DESERVE」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場20位
「DESERVE」はBABYMONSTERが10月23日に配信シングルとしてリリースした楽曲。同日にYouTubeで公開されたMVは、それからわずか11日半で再生数が1億回を超えた。
別れを歌いながら、相手の幸せを願う。その矛盾するような優しさが、この曲に切なさと温かさをもたらしている。レトロな質感をまとったシンセサイザーが記憶の扉をそっと開き、抑えた歌声が少しずつ熱を帯びて、サビではせきを切ったように感情があふれ出す。
MVでは、暗い廊下にたたずむ姿や、雨に打たれる場面、火花が舞う光景などを織り交ぜ、1本の映画を思わせる物語が紡がれる。派手なダンスや強烈なビートで圧倒するのではなく、視線や表情の揺らぎで心の奥を見せていく演出が印象的だ。雨は飲み込んだ言葉のように降り注ぎ、火花は消しきれない思いのように夜を照らす。静けさと爆発力を併せ持つ歌声によって、過ぎ去った恋の残像が鮮やかによみがえる。


