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結成30周年のL'Arc-en-Ciel、東京ドームでファンと迎えた“最高のフィナーレ”

2年以上前2022年05月24日 15:02

L'Arc-en-Cielが結成30周年を締めくくる単独公演「30th L'Anniversary LIVE」を、5月21日と22日の2日間にわたり東京・東京ドームで開催した。

1991年5月30日に大阪・難波ROCKETSで初ライブを行い、産声を上げたL'Arc-en-Ciel。さまざまな変遷を経て30周年という節目を迎えた彼らは、2021年5月に千葉・幕張メッセ国際展示場1~3ホールでアニバーサリーイヤーの幕開けを飾る「30th L'Anniversary Starting Live "L'APPY BIRTHDAY!"」を行い、その後、全国アリーナツアー「30th L'Anniversary TOUR」の開催、「ミライ」「FOREVER」という2作のシングルと過去タイトルのリマスターボックスのリリースと、コロナ禍の中にありながら旺盛な活動を展開してきた。この記事では、そんな華々しい1年の最後を飾った「30th L'Anniversary LIVE」2日目の模様をレポートする。

開演と同時に巨大なスクリーンに映し出されたのは、L'Arc-en-Cielの初ライブ日である「1991.5.30」という日付。続いて歴代のライブタイトル、これまでリリースされてきた作品のジャケット写真や映像などがカウントアップに合わせて浮かび上がり、30年にわたるバンドの軌跡をスタイリッシュに紹介していく。これから始まるライブの構成を暗示するようなムービーに続き、オープニングナンバーとして披露されたのは「ミライ」。hyde(Vo)の伸びやかなボーカル、ken(G)の清涼感のあるギター、tetsuya(B)のメロディアスなベース、yukihiro(Dr)の軽やかなリズムが、希望に満ちたナンバーを奏でる。曲のラストでは、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫という7色のレーザーが放射状に広がり、ドーム内に大きな虹を描き出した。その穏やかな空気も束の間、4人が2曲目として叩き込んだのは、これまではライブのクライマックスの起爆剤として演奏されることが多かった「READY STEADY GO」。yukihiroが刻むタイトな高速のビートに乗せて、hydeは5万人のオーディエンスを挑発するように「Are You Fuckin' Ready?」と叫び、ライブの定番曲を高らかに歌い上げる。さらに彼らは間髪をいれずに、日本語や英語、韓国語など各国の愛を伝える言葉が流れる映像を背に「New World」を勢いよくプレイした。

ドーム内の熱気が十二分に高まったところで、hydeが「よく来たね。30周年の最後を飾る場所にやってきた……まだかわいい声が聞けないのは残念ですけど、手拍子をしたり、ハミングをしたり楽器を鳴らしたり、体中を使って楽しんでいってください」と挨拶する。そして、「一緒に楽園に行きましょう。楽園はどこにあるんでしょうか……ここだろ!?」と宣言。その言葉を証明するように、高揚感たっぷりのダンスチューン「SEVENTH HEAVEN」へとつなげた。儚く耽美な世界観を描き出す「Lies and Truth」に続き、オーディエンスの耳に飛び込んできたのは荘厳で優美なストリングスのアンサンブル。「なんの曲が始まるのか」誰もがそう思ったとき、kenが爪弾く柔らかな旋律が響き、吐息混じりの声でhydeが「瞳の住人」を歌い出す。ドームを包み込むようなtetsuyaのベースラインに乗せて、hydeは愛おしそうな視線を客席に向けながら、ファンから人気の高い1曲を情感たっぷりにパフォーマンスした。

「三十路になりました、L'Arc-en-Cielです。もうすぐ31になってしまいますが、ずいぶん大人になってしまいました」。そう口にしたhydeは、「まだ明るいですね。外が」とかすかに光が差し込むドームの天井を見上げつつ、「だんだん大人の時間になってくるよ。(目の前のこの5万人の観客は)みんなラルクが好きなんですよね。よし……かわいがってあげよう。この感謝、体で返したいと思います」とおっとりした口調ながら刺激的な言葉で観客を煽る。そこから続いたのはエロティックなムードたっぷりの「X X X」。紫と赤の照明に照らされた4人は、艶かしいナンバーを貫禄をたたえながらプレイし、“大人なL'Arc-en-Ciel”の姿を5万人に見せつけた。

メンバーの気合いのこもったパフォーマンスはもちろん、東京ドーム常設の巨大なリボンビジョンを存分に生かした映像も圧倒的だった「30th L'Anniversary LIVE」。狂おしい感情を呼び起こすkenのギターが印象的な「fate」では深い森を彷徨うようなムービーが、おどろおどろしくも切ない「finale」では深海に潜っていくような映像が投影され、楽曲の魅力を視覚的に表現していた。L'Arc-en-Cielのダークな側面をあらわにした2曲の空気を拭い去ったのは、kenの優美なギターソロが魅力の「MY HEART DRAWS A DREAM」。コロナ禍の前であればシンガロングが起きていたパートで観客はハミングを響かせ4人のプレイに応える。tetsuyaは美しいハーモニーに聞き入るようにイヤモニに指先を添え、hydeは観客の声を後押しするように自らの歌声を重ねた。最後にhydeは「笑顔のままの君に逢えると良いな」と、マスクの下に弾けるファンの笑顔に思いを馳せるように目を細めていた。

近年のライブではお馴染みとなっているkenのMCでドーム中が和んだところで、ライブは後半戦へ。kenが「エンジンスタート!」と口にすると、唸るようなエンジン音が轟き、ステージに激しい火柱が上がる。そこからなだれ込んだのは、ライブの定番曲である「Driver's High」だ。疾走する車の映像を背に、hydeはtetsuyaの肩を抱きながら「俺に任せろ!」と、観客の代わりにシンガロングパートをシャウト混じりの声で熱唱。さらに、yukihiroの硬質なドラムが冴えるパンキッシュな「Pretty girl」、tetsuyaのベースソロが曲の口火を切る「STAY AWAY」、バンドの代表曲として広く愛されている「HONEY」というポップな一面を打ち出したナンバーが披露され客席はヒートアップする。しかし、熱気を帯びたムードは、繊細な鍵盤の音色が鳴った瞬間に鎮火する。松明を想起させる炎と、燃え盛る無数のいばらの映像を背に、hydeが鬼気迫るような表情で「いばらの涙」を絶唱。観客はバットマラカスライトを赤く灯し、ダイナミックなサウンドと壮絶な詞世界で構成された楽曲の演出に一役買った。さらに4人は「いばらの涙」での高いテンションを保ったまま、今度は「Shout at the Devil」を投下。hydeは舞台に飛び交う火炎を前に、フラッグを掲げながら怒気を孕んだ声で咆哮し、オーディエンスを圧倒した。

1999年リリースのアルバム「ark」のジャケットで描かれた飛行船がドーム内を回遊する演出を挟み、メンバーはアリーナ後方に設けられたサブステージに移動。コンパクトなステージに集まった4人は、真っ先に客席を見渡し、感慨深そうな表情を浮かべる。hydeは「次の曲は水色かな?」と観客にバットマラカスライトを水色に灯すようにリクエストし、自らはおもむろに傘をさす。そして彼が「Singin' in the Rain」とタイトルコールをすると、観客は予想外の1曲に思わず驚きの歓声を上げた。ジャジーなアプローチが光るナンバーをメンバーは息の合った軽快なアンサンブルで届け、改めてその演奏力の高さを見せつける。ファン投票の上位にランクインしたという「LOST HEAVEN」が披露されたのち、hydeのリクエストで観客が今度はスマホのライトを灯す。「コロナが収束しそうにもかかわらず、世の中は物騒なことになってますが、(目の前には)こんなきれいな景色があるのにね……平和を願って『星空』を聴いてください」とhydeが告げて始まったのは、「争いのない世界へ」と歌うメッセージ性の強いミディアムチューン「星空」。満点の星空のような景色に囲まれながら、4人は祈りを込めるように丁寧に音を紡いでいく。なお、サブステージを離れる際、hydeがyukihiroの肩を抱き、yukihiroがその胸に頭を預けるひと幕も。長い歴史をともに歩んできた2人の絆を感じさせる姿に、観客は温かな拍手を送った。

観客がウェーブをしながらバットマラカスライトの光で虹を作り出す“WAVE GAME”で会場の心がひとつになったあと、ライブはいよいよ最後のブロックへ。ここでメンバーは、tetsuya節が炸裂した希望に満ちた最新曲「FOREVER」と美しくもどこか退廃的なムードに満ちたインディーズ時代の「予感」を続けて演奏するという離れ業をやってのけ、30年間の中で変化した音楽性をオーディエンスに伝えた。続く「Blurry Eyes」でyukihiroが入りのタイミングを間違え、笑顔で謝罪する微笑ましい場面もありつつ、明るい空気の中で「30th L'Anniversary LIVE」は刻一刻と終わりに近付いていく。同曲の間奏でtetsuyaはインターバルで観客が作り出した虹について言及し、「こういうことができるのも虹っていうバンド名だからじゃない? L'Arc-en-Cielって名前をつけてよかったな。30年愛され続けるバンドになれてうれしいな。みんな、ラルクを好きになってくれてありがとう!」と破顔した。

バンドが新たな旅路へと向かうことを示唆するような「GOOD LUCK MY WAY」のあと、メンバーを代表して口を開いたhyde。オーディエンスが見守る中、彼は「どうもありがとう。すごいいい眺めだよ。この眺めを見ながらしばらく酒が飲めるような……この光はただの光じゃなくて、それぞれいろんな背景があってたどりついた光だから、胸に刺さるというか」「みんながいたからここまでたどり着けたと思います」とファンに感謝の思いを伝える。さらに、自身がかつて大きなステージで声が出なくなったこと、tetsuyaが30周年ツアー中にステージから落下してしまったこと、kenが銀テープに打たれたこと、そして完璧主義のyukihiroでもミスをすることがあることを述懐。「(それは)30年やってなかったら見れませんでしたからね」とユーモアを交えつつ、「つらいときにやめていたら悲しい記憶だけ、悔しい記憶だけが残るかもしれないけど、乗り越えたからこんな素敵な景色が待ってたんだなと思って。それはみんながいてくれたから、支えてくれたからだな。連れてきてくれてありがとうございます」と言葉を重ねた。「この30周年、1年間ライブをしてきましたが、世界的にも大変な時期と重なって……僕らも、みんなも大変でしたけど、虹っていうのは雨が止むときにできるんですよ」と告げる。そして、kenが弾く胸に迫るようなアルペジオを皮切りに、hydeはその凜とした声を、tetsuyaは包容力のあるベースラインを、yukihiroは力強いリズムを重ねながら、バンド名を冠した1997年リリースの「虹」を奏でた。客席にはオーディエンスがバットマラカスライトの光で作った虹がかかり、ステージにはライブのオープニング同様に7色の照明からなる鮮やかな虹が生み出される。そして真っ白な羽根がステージに降り注ぐ中、hydeは「終わらない未来を捧げよう」と歌い、kenとtetsuyaはyukihiroのドラムに合わせて最後の音を響かせた。

温かく感動的な空気に包まれながら、kenとyukihiroはステージをあとにし、hydeは何度も投げキッスをして「また会えるまでみんな元気に過ごしてください。次は一緒に歌おうね」とファンとの再会を約束。tetsuyaはステージを端から端まで歩き、「みんな……ラルクを好きになってくれてありがとう! まったねー」と改めて告げる。明るくなったドームでは4人が去ったステージに向けてこの日一番の拍手が送られ、L'Arc-en-Cielのアニバーサリーイヤーは「Driver's High」のワンフレーズである“最高のフィナーレ”を迎えた。

L'Arc-en-Ciel「30th L'Anniversary LIVE」2022年5月22日 東京ドーム公演セットリスト

01. ミライ
02. READY STEADY GO
03. New World
04. SEVENTH HEAVEN
05. Lies and Truth
06. 瞳の住人
07. X X X
08. fate
09. finale
10. MY HEART DRAWS A DREAM
11. Driver's High
12. Pretty girl
13. STAY AWAY
14. HONEY
15. いばらの涙
16. Shout at the Devil
17. Singin' in the Rain
18. LOST HEAVEN
19. 星空
20. FOREVER
21. 予感
22. Blurry Eyes
23. GOOD LUCK MY WAY
24. 虹

Photo by:Takayuki Okada / Toshikazu Oguruma / Hideaki Imamoto / Yuki Kawamoto / Hiroaki Ishikawa

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