8月19日と20日に、千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセと大阪・舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)で音楽フェスティバル「SUMMER SONIC 2023」が開催された。今年のサマソニは史上最速で東京・大阪の両会場の全券種が完売。声出しを解禁した4年ぶりの通常開催ということもあり、過酷な暑さに見舞われながらも例年以上の盛り上がりとなった。
音楽ナタリーでは幕張公演の2日間と、その前夜祭として千葉・幕張メッセで8月18日夜から開催されたオールナイトイベント「SONICMANIA」について3本の記事に分けてレポート。この記事では幕張公演2日目の模様を、国内アーティストのライブを中心に伝える。
MARINE STAGE
2日目のMARINE STAGEはジャニーズWESTのライブでスタート。生バンドの演奏をバックに「ええじゃないか」「ズンドコ パラダイス」「WEST NIGHT」とにぎやかな曲を畳み掛け、炎天下でお祭り騒ぎを繰り広げた。「ANS」では神山智洋がギターを掻き鳴らし、ラストナンバー「証拠」のアウトロで重岡大毅が「俺らこれからも歌い続けるから! 歌い続けてたら、またみんなに会える気がするから!」と絶叫して観客との再会を誓っていた。
夏空にピッタリのさわやかなロックチューンで、フェスらしいムードを作り出したのはマカロニえんぴつ。はっとり(Vo, G)がノエル・ギャラガーのシグネチャーモデルのES-335を弾いたり、Oasisへのオマージュを盛り込んだ「恋人ごっこ」を演奏したりと、この日のライブからはどことなく、同日に同じステージに立つリアム・ギャラガーへのリスペクトを感じさせた。はっとりは最後に「わりとはっきりしないことを歌ってきました。なぜかって? はっきりした答えなんか、あなたは最初から知っているからです」と観客に語りかけ、手拍子が湧くアリーナに「なんでもないよ、」を届けた。
メンバーのアサヒがちょうどこの日に誕生日だったTREASUREは、黒で統一した衣装で登場。7月発売の2ndアルバム「REBOOT」に収録されたダンスチューン「BONA BONA」を日本で初めてパフォーマンスし、力強さと繊細さを兼ね備えたダンスで観客を魅了した。会場が海のそばということで、海にピッタリの曲として「Hello」を歌った彼らは、それを皮切りにポップチューンを連発。スタジアムを笑顔で満たして持ち時間を終えた。
続くsumikaはリハーサル段階で「Jasmine」「絶叫セレナーデ」を演奏し、ライブ開始を待つ観客を喜ばせる。片岡健太(Vo, G)が初出演となるサマソニでのステージをここに始めると宣言し、「フィクション」で本番開始。「Lovers」では片岡のベルトが緩みパンツがずり落ちそうになるというハプニングがありつつ、続いて炎天下の中で熱狂する観客をさらに盛り上げるように「ふっかつのじゅもん」が届けられた。その後も彼らはOasisにも通ずるUKロックテイストの「New World」などを披露。片岡は「自分があまり好きでない」という話をしていたが、2002年のサマソニに観客として初めて訪れてからの思い出を振り返り、「やっと! サマソニのステージに立ってます! そんな自分が大好きです!」と喜びを爆発させた。
リアム・ギャラガーはOasis「Fuckin' in the Bushes」をオープニングSEにして登場し、1曲目にOasisの名曲「Morning Glory」を披露していきなりの大合唱を誘う。ドラマーはリアムの息子ジーン・ギャラガーで、バスドラのヘッドには不慣れなカタカナで「スパンク(Spank)」と書かれていた。リアムは「Wall of Glass」などソロ曲も歌唱しつつ、曲の合間には「アリガトウゴザイマス」「カンパイ」と日本語も披露。「Stand By Me」「Wonderwall」「Champagne Supernova」などのOasis曲もふんだんに交えたセットリストでライブを展開し、非英語圏の日本人が大多数を占めるスタジアムでは珍しく、英語詞での大合唱を巻き起こした。
大トリを務めたケンドリック・ラマーは、デニムエプロンを着たケンドリックと似た顔のダンサーたちがシアトリカルに踊る前で、ミニマルな演出でライブを展開。コンセプチュアルな1つのアート作品のようなステージで、満員のスタジアムを圧倒した。アリーナのオーディエンスは大声でコール&レスポンスに応え、会場は熱気でいっぱいに。「Savior」でライブが終わり、夜空に大輪の花火が打ち上がる中、ケンドリックは観客に「I will be back」と約束した。
MOUNTAIN STAGE
オープニングアクトとして登場したMETALVERSEは、「BABYMETALとは異なる世界線を描く」というコンセプトの新プロジェクト。メンバー構成などは事前に明かされていなかったが、「新たな物語が始まる」という映像のあと、覆面バンドをバックにステージに上がったのは5人だった。1曲目こそBABYMETALのようなメタルだったが、2曲目は多国籍な雰囲気のエレクトロポップで、3曲目はビッグバンド風。ボーカルが「みんな一緒にスイングしよう!」と呼びかけるなど、BABYMETALとは似て非なる異次元の存在であることを窺わせた。
イギリスの2人組ユニット・Nova Twinsが妖艶なる“ヴァイタルロック”で観客を熱狂させたあと、ももいろクローバーZの出番に。ももクロは2012年に初出演したサマソニの大阪公演がファンの間で“伝説”と呼ばれている。それは雷雨の影響でタイムテーブルが変更になったこと、直前でヘッドライナー・ジャミロクワイの出演キャンセルがあり、キャパシティを大幅に超える観客がももクロのライブになだれ込んだという出来事だ。そんな“伝説”から11年ぶりにサマソニ出演したももクロは、マーティ・フリードマンを含むダウンタウンももクロバンドを率いて登場。11年前にも披露した「BIONIC CHERRY」でライブをスタートさせ、「ココ☆ナツ」では「キャンプはさいたま」という歌詞をライブは「サマソニ」に言い換ええた。布袋寅泰提供による「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」では“ももポーズ”を手で作り、観客とジャンプ。結成15周年を迎えたベテランアイドルは、「労働讃歌」「行くぜっ!怪盗少女」とキラーチューンを畳みかけ、大観衆に笑顔を届けた。
MOUNTAIN STAGEのトリを飾ったのは、2012年に当時のサマソニ史上最年少での初出演を果たし、2017年にはMARIN STAGEの舞台を踏んだBABYMETAL。オープニングを飾る「BABYMETAL DEATH」でいきなり激しいモッシュを生み出した彼女たちは、「ギミチョコ!!」「PA PA YA」「Distortion」とアグレッシブなナンバーを畳みかける。リリースされたばかりの和風メタル「メタり!! (feat. Tom Morello)」では、4月から加わったMOMOMETAL(Scream, Dance)が「躍る阿呆に見る阿呆」と口上を述べ、スクリーンにトム・モレロの映像が流れるなど見どころ満載のライブが続く。同じく和テイストたっぷりの「メギツネ」ではSU-METAL(Vo, Dance)の「なめたらいかんぜよ」のセリフが決まり、お祭り騒ぎの盛り上がりに。3人は初期ナンバー「ヘドバンギャー!!」、超高BPMの「Road of Resistance」のあと、ラストに「イジメ、ダメ、ゼッタイ」を投下。フロアに大規模な“ウォールオブデス”が形成され、観客がぶつかりあってからサークルモッシュに転じていくという盛り上がりを見せた。
SONIC STAGE
2日目の夕方のSONIC STAGEは、ちゃんみな、Awich、AIというフィメールラッパー / シンガーたちが連続で登場する、この部分だけで1つのフェスが作れそうなタイムテーブルになった。
ちゃんみなはブラス隊を含むバンドと何人もの男女ダンサーを率いた大人数で、作り込まれたエンタテインメント性あふれるステージを展開。終盤のMCで、初めて出演したサマソニでまだ数少なかったファンに恥ずかしい思いをさせてしまったと思っていること、しかし去年のサマソニではフロアの後ろの方まで手のひらを見せてくれたことを語り、その昨年の出来事があったから作れたというギターロックナンバー「I'm Not OK」を披露すると、観客の挙げた手が会場いっぱいに広がっていった。
Awichのライブには、「ALI BABA」でMFS、「Link Up」でMonyHorse、「GILA GILA」でJP THE WAVY、「RASEN in OKINAWA」でCHICO CARLITOと、さまざまなゲストが続々登場。ラストにSuglawd FamiliarとCHICO CARLITOが加わって「Longiness」が始まると、入場規制がかかった満員のSONIC STAGEで大合唱が沸き起こった。
さらに続くAIのステージでも、Awichは1曲目「Not So Different Remix」で客演。Awichが「私は何度もAIさんに助けてもらいました。AIさんがいなければここに立ってません。高校生のときにAIさんがデビューしたのを見て、この人に近付きたいと思いながらがんばってきました」「私はラップのクイーンと言われるようになったけど、人間として、女として、母として本当のクイーン中のクイーンがこの人です」とAIに感謝の気持ちを述べたあとで、LANAを加えた3人で「Bad Bitch 美学」を披露した。
BEACH STAGE
猛暑ながら時折、海風が吹き抜けるBEACH STAGEではOriginal Loveがライブを行った。田島貴男(Vo, G)は「暑いから気を付けて」と観客に気配りをしつつ、1993年のリリースから30年を迎える人気曲「接吻」などを披露。演奏に切れ間に浜辺からの波音が聞こえるという抜群のロケーションでソウルフルなステージを展開した。
PACIFIC STAGE
PACIFIC STAGEにはバンドを引き連れたDa-iCEが登場し、「CITRUS」でライブをスタート。ライブ中盤、「ダンデライオン」をゆったり届けたあと、ダンサブルな「Pioneer」でクールなパフォーマンスを見せる。その後、彼らは“お酒”と大きく書かれた容器で酒を煽るような仕草を見せて、「ハイボールブギ」を熱唱。コミカルなMCでフロアを湧かせつつ、タオルを振り回して盛り上がるサマーチューン「スターマイン」を打ち上げ、骨太ロックチューン「Kartell」でパワフルにライブを締めくくった。