YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで7月11日から7月17日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、1位にTWICEの「THIS IS FOR」が登場した。今作は、デビュー10周年を記念してリリースされた4thアルバムの表題曲。YouTubeのコメント欄には「10年間ひとりも欠けることなくTWICEでいてくれてありがとう」などグループやメンバーに対して感謝を伝える声が多数上がっている。
3位にはHANA「Blue Jeans」のMVがランクインした。これは7月16日にリリースされた2ndシングルの表題曲で、等身大の恋心を“Blue Jeans”と“古いスニーカー”に重ねて描いた、HANA初のラブソングだ。MVはドラマ仕立てで、メンバーが演技に初挑戦している。
4位に登場したのはBLACKPINKの約3年ぶりの新曲「JUMP」。7月11日のMV公開から10日間で9000万再生を突破し、破竹の勢いを見せている。
人気ガールズグループの新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
Snow Man「夏色花火」レコーディングビデオ
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場14位
「夏色花火」は7月22日にリリースされた最新シングル「SERIOUS」の初回盤Bと通常盤の収録曲。日本の夏の風景を思い起こさせるような、はかなくも壮大で華麗なミディアムバラードだ。
1番は渡辺翔太のエモーショナルな歌で幕を開け、ラウールの甘くて透明感がある歌声、岩本照による歌詞がまっすぐ伝わってくる中音域の歌唱、そして目黒蓮の優しさと力強さが同居した声でドラマチックな歌詞を紡いでいく。2番は艶っぽいブレスが印象的な阿部亮平から、中性的な柔らかい声の深澤辰哉へとバトンがつながれる。サビを歌うのは、楽曲の世界観を広げる美しい高音の佐久間大介、深みのある大人な歌声の宮舘涼太、そこに絶妙なはかなさをプラスする向井康二。そして大サビでは全員の声が重なり、9人それぞれの表現が一体となってSnow Manならではのハーモニーが完成する。
彼らはダンススキルの高さはもちろんだが、歌声の表現力、個性、一体感も素晴らしいことをこの映像が証明している。
しぐれうい「ひっひっふー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場21位
しぐれういの「ひっひっふー」は、去年9月にリリースされた2ndアルバム「fiction」の収録曲だ。作詞作曲をしたのはボカロPのじん。跳ねるようなギターとベースに乗った、しぐれういとしては珍しい高速ラップが光る、耳に残る楽曲となっている。
出産時の痛みを和らげる呼吸法・ラマーズ法の「ひっひっふー」の掛け声を曲名に採用したのは、イラストレーターとVtuberの二足のわらじを履いている、しぐれうい自身の創作に伴う“産み”の苦しみを表しているのだろう。一方でしぐれういに限らず、家庭と仕事の両立に励む人や、夢を追いかけながら日々努力している人など、日常生活で二足のわらじを履いている人たちに“エール”を送る曲にも感じられる。
今回のMVは学生、会社員、クリエイター、老人などがんばる人々を次々に映していくという内容。手がけたのは、ぽぷりか、おはじき、まごつきの3人からなる映像制作チーム・Hurray!だ。Hurray!はこれまでに「ただ君に晴れ」「だから僕は音楽を辞めた」「雨とカプチーノ」などヨルシカのMVを数多く制作し、2024年には彼らが映像統括をしたオリジナルアニメーション映画「数分間のエールを」が注目を浴びている。映画「数分間のエールを」はMV制作に没頭する高校生と、音楽の道を諦めた教師が織りなす、”モノづくり”の楽しさや苦悩を描いた青春群像劇。「ひっひっふー」のMVの冒頭には「数分間のエールを」の主人公によく似た高校生が一瞬登場する。ぽぷりかは自身のpixivFANBOXでMV制作の裏側を紹介しているので、気になった人はぜひ貴重な絵コンテやメイキング映像なども見てみよう。
MAZZEL「I'm yours, You're mine」パフォーマンスビデオ
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場61位
「I'm yours, You're mine」は、4月リリースの初EP「Royal Straight Flush」に収録されている、KAIRYU、RAN、TAKUTOのユニット曲だ。ピアノの美しい音を軸にしたきらびやかでしっとりとしたR&Bサウンドに、どんなときでも“君”を求めている“僕”の気持ちを歌った、濃度の高いラブソングに仕上がっている。
4月14日発売の「TVガイドdan」vol.55で筆者がMAZZELにインタビューをした際、TAKUTOは「『こういう曲をMAZZELでもやりたいんです』と社長(SKY-HI)に話したことがありまして。(中略)それだけ前からやりたかったテイストの曲を、RANとKAIRYUと一緒に歌えることがすごく嬉しい」と楽曲が生まれた背景や思いを話してくれた。
今回の映像は3人のスキルフルな歌に加えて、大人な表情も堪能できる。RANとTAKUTOが考案した振付は、楽曲の持つ優雅さとしなやかなさを感じさせつつ、随所にキレのある動きを取り入れたことで、緩急の効いた見せ場も生まれている。歌ってよし、踊ってよしのMAZZELらしい快作だ。
