CY8ERが1月10日に東京・日本武道館でワンマンライブ「CY8ERなりの横浜アリーナ」を開催。本公演をもって解散した。
2016年12月24日に前身グループBPM15Qから改名する形で結成されたCY8ERは、“大人たちの事情“に巻き込まれずに自分たちの夢のステージで最高のエンドロールを迎えたいという思いをもって活動してきたセルフプロデュースのアイドルグループ。プロデューサー兼所属事務所の代表である苺りなはむ(ex. BiS、ex. アキシブproject)に小犬丸ぽち、ましろ、病夢やみい、藤城アンナを加えた5人で2020年1月にビクターエンタテインメントからメジャーデビューを果たしたが、同年7月に行った無料配信ライブ「伝えたいこと」の中でラストライブの開催を発表してアイドルシーンに衝撃を与えた。
ラストライブの会場である武道館は、CY8ERが「いつかここでワンマンを」とファンと約束した夢の舞台。また、りなはむがかつて所属したBiSが立てなかったステージでもあり、「CY8ERなりの横浜アリーナ」というライブタイトルには、武道館を目標としていたBiSが神奈川・横浜アリーナで解散ライブ「BiSなりの武道館」を行ったことへのリスペクトが込められている。開催直前、新型コロナウイルス感染拡大に伴い政府が緊急事態宣言を発出するという困難にも見舞われたが、5人の最後の姿を見届けるべく、当日の武道館には数多くのファンが来場。会場の周囲には元メンバー・なぁたんコロ虫を含め、グループを愛する人々から送られたスタンド花がいくつも飾られた。
16:17頃、場内に延々と流れていたBiSの楽曲がフェイドアウトし、ファンが点灯させたペンライトの光がフロアを色鮮やかに染め上げると、オープニング映像がスタートする。「Overture」が流れる中、勢いよく噴出された白い煙で完全に覆われたステージ。その煙が徐々に立ち消えると、そこには5人の姿があった。「ここでさよなら」と歌う「マイライフ」でパフォーマンスを開始し、武道館とは思えないほどの凄まじい重低音で観客を驚かせたCY8ERは、BPM15Q時代からの楽曲「ドキドキパリラルラ」、中田ヤスタカ提供曲「恋愛リアリティー症」といったアッパーチューンの数々を次々と繰り出していく。舞台演出を担当するのはhuez。無数のレーザーが会場を飛び交い、ステージはVJで鮮やかに彩られた。
5人は「トーキョー・イノベーター」「もしもしじゃぽん」「トーキョーアイデンティティ」とカラフルなサウンドの楽曲を円滑につなげていき、ラップ曲「beat」でラストライブにかける思いを特別なリリックでぶちまける。「恋夏」ではライブに向けて実施されたクラウドファンディングの「爪痕コース」に出資したファンの写真がメンバーの背後でクルクルと回転して観客の笑いを誘う場面も。その後、BPM15Q時代からの代表曲「はくちゅーむ」、“死”をテーマにした「デッドボーイ、デッドガール」に続いて、5人が幻想的な「ユメゾラココロ」を歌い終えると、一瞬の静寂が訪れた。観客が拍手を送る中、CY8ERはエモーショナルな「ばいばい。」でパフォーマンスを続行し、「グルグルコンティニュー」「ハローニュージェネレーション」を続けて披露。横一列に並んで歌う「東京少女」でライブ前半を締めくくり、一旦ステージから退場した。
KOTONOHOUSEが手がけたクラブサウンドに合わせてhuezの照明演出が会場を彩ったショーケースを挟み、ステージに戻った5人は「東京ラットシティ」でライブを再開。やみいがソロパフォーマンスで魅せる「幽霊屋敷」、BPM15Q時代から引き継がれた「HANNARI」と新旧の楽曲を織り交ぜて届けていく。凶暴な音で武道館を揺らした「MCMCDANCE」で来場者と記念撮影した5人は、「ネクストドア。」をクールにパフォーマンスしたあと、「タイムトリップ」を皮切りにセンチメンタルなメッセージが込められた楽曲を畳みかける。「スペースタイム」では、スクリーンに映し出されたメンバーの姿にリアルタイムでエフェクトがかかる演出が観客を驚かせた。
別れを歌った歌詞がスクリーンに映し出された「GOOD LUCK」や「約束」に続いて、「かくしぇーむ」で再びテンションを引き上げたCY8ERは、観客にクラップを促しながら「サマー」をパフォーマンスして会場に熱気を生み出すと、ゴールに向かってラストスパートをかけていく。「最後のCY8ERです。今しかない今だから絶対に後悔しない今を選んでください!」というりなはむの言葉から「ごーしゅー!」をエネルギッシュに歌い、CY8ERの始まりの曲「リミックスタート」につなげた5人は、「エンドロール」「コクハクワープ」と思い出深いナンバーを連発。マイクを通さずにタイトルコールすると「さよならフラッシュバック」へなだれ込む。楽曲の盛り上がりに合わせて場内の照明が一斉に点灯するという演出がファンの心を揺さぶり、スクリーンには感極まったましろの表情が大きく映し出された。
会場が再び暗転して始まったのは昨年12月発売のベストアルバムに収録された新曲「時をとめて」。ダークなサウンドに乗せて「まだまだあなただけの特別でいたいよ 普通の女の子に戻るなんて嫌だよ」「あぁ 神様 時をとめて」と特別な今が続くことを願う言葉が歌われる中、オープニング同様、ステージには白い煙が立ち込める。煙が失せると、もうそこに5人の姿はない。そして5色のスポットライトがステージを照らし、メンバーの不在を強調する中、会場で販売されたラストシングル収録の新曲「Hometown」へ。スクリーンには事前収録された5人の歌唱映像が映し出され、そこにフロアの映像が重ねられた。
観客が無人のステージに拍手を送る中、「Everything's Gonna Be Alright」をBGMとしたエンディング映像が始まり、思い出の写真の数々が投影されていく。ライブ中に撮影された写真が最後に映し出されたあと、CY8ERの世界観を表現した美しいアニメーション映像が流れると、りなはむの「思いだして 未来を!」というメッセージとともにライブは終演。ここに至るまでどれほどの積み重ねがあったのかと思わせるほど圧倒的に作り込まれた演出によりCY8ERはほぼMCなし、アンコールなしでファンに思いを伝え切り、グループの歴史に幕を下ろした。
CY8ER「CY8ERなりの横浜アリーナ」
2021年1月10日 日本武道館 セットリスト
01. Overture
02. マイライフ
03. ドキドキパリラルラ
04. 恋愛リアリティー症
05. トーキョー・イノベーター
06. もしもしじゃぽん
07. トーキョーアイデンティティ
08. beat
09. カタオモイワズライ
10. 恋夏
11. はくちゅーむ
12. デッドボーイ、デッドガール
13. ユメゾラココロ
14. ばいばい。
15. グルグルコンティニュー
16. ハローニュージェネレーション
17. 東京少女
18. huez × KOTONOHOUSE ショーケース
19. 東京ラットシティ
20. 幽霊屋敷
21. HANNARI
22. MCMCDANCE
23. ネクストドア。
24. タイムトリップ
25. スポットライトセオリー
26. スペースタイム
27. GOOD LUCK
28. 手と手
29. 約束
30. かくしぇーむ
31. サマー
32. ごーしゅー!
33. リミックスタート
34. エンドロール
35. コクハクワープ
36. さよならフラッシュバック
37. 時をとめて
38. Hometown