世界最大級の韓国カルチャーフェスティバル「KCON」の香港公演参加のため初の海外遠征を経験したライターの岸野恵加が、事前準備から到着後の過ごし方、現地の熱気までを詳細にレポートするこのコラム。準備編に続く後編にあたる本稿では、深夜便を経て現地に到着してから帰国するまでの模様をお届けする。早朝到着後の過ごし方、チケット発券、SHOWだけじゃない「KCON」の楽しみ方から現地ファンの熱気まで、さまざまなトピックをレポート。ジャンルに限らず、数多くのライブに足を運んできた筆者が感じた日本公演と海外公演の違いもつづられているので、海外遠征を検討している人はぜひ参考にしてほしい。
取材・文・撮影 / 岸野恵加
深夜便でいざ香港、早朝到着後の過ごし方
年度末ということもあり、日々取材と大量の原稿執筆、子供たちのあれこれ、さらに地獄の確定申告に追われ、嵐のように過ぎ去っていった3月。香港の現地情報や「KCON HONG KONG 2024」のリサーチはほぼ行えずに、出発当日の3月30日を迎えました。昼からはDAY1のステージの一部がYouTubeで生配信されていたので、それを観ながら現地での過ごし方をイメージ。「明日はもうここにいるんだな」と、不思議な気持ちになりました。
フライトは人生初の深夜便。到着した23時でも、羽田空港は多くの人々でにぎわっています。25時台出発のはずが1時間近く遅れ、朦朧としながら離陸の瞬間を迎えました。香港までは約4時間20分。空気で膨らませられるネックピローのおかげで首を痛めることなく爆睡できたので、飛行機で安眠できない方にはオススメです。
東京は3月後半になってもまだ肌寒い日々が続いていましたが、香港に到着すると、湿気を含むムワッとした生ぬるい空気が迎えてくれました。最高気温は28℃。さっそく半袖に着替え、駆けつけ1杯、空港内にある「何洪記粥麺専家」にて海老ワンタン麺を。私は海老ワンタン麺に目がなくさまざまなお店に足繁く通っているのですが、本場の味は格別。到着直後にありつけて、幸せボルテージが早くもMAXまで上昇してしまいました(ちなみにおいしすぎたので、夜のイベント後にもまた食べました)。
大正解のホテル&e-SIM選び
空港内を歩いていたら、どこからともなく「キャー!」と黄色い悲鳴が。同行者のサトコちゃんと一緒に向かってみると、保安検査場の前にK-POPファンと思しき人々が集っていました。どうやら数分前に、DAY1に出演していたaespaがここを通った様子。ニアミスを残念に思うも、さっそく海外公演にやってきた実感が高まりさらにテンションが上がりました。その後Regal Airport Hotelに向かい、荷物を預けます。深夜フライトを経てヘトヘトなところ、すぐに身軽になれたので、空港から直結のホテルを選んだのは大正解でした。この時点でまだ朝9時。「KCON HONG KONG 2024」はコンベンションエリアが10時にオープンしますが、少し街を散策してから向かおうと、電車に乗って中環駅へ。足ツボマッサージを受けて疲れを癒しました。
気になるネット環境ですが、e-SIMはとても使い勝手がよく、到着してすぐにサクサクの5Gネット回線でストレスフリーでした。現地ではGoogleマップを常に使っていたので、容量無制限にして大正解。そのおかげで目的地にスムーズに移動できたことも、今回の旅の充実度をさらに上げてくれた気がしています。お昼は中環の「croque」でサンドイッチをテイクアウト。カリカリのピリ辛ベーコンが美味!
会場到着、チケット発券へ
13時頃、「KCON」の会場であるAsia World-Expoへ到着。電車を降りて会場までの連絡通路からは、海が見えて開放感抜群です。通路にはファンによる応援広告が多数飾られていて、JO1、ATEEZのグループ広告のほか、aespaのウィンターさん、ZEROBASEONEのジャン・ハオさん、JO1の木全翔也さんをフィーチャーした広告も掲出されていました。
公演のチケットは電子?紙?と気になるところですが、今回のチケットは紙発券。現地にある機械へ事前に指定していた番号を入力することで、簡単にプリントすることができました。
SHOWだけじゃない!「KCON」ブースを楽しむ
「KCON」はSHOW、MEET&GREET、コンベンションがそれぞれ別のホールで行われます。ホール2に設けられたコンベンションエリアには、さまざまな企業やアーティストのブースのほか、ミニライブが行われる「KCON STAGE」と、ダンス企画が行われる「DANCE ALL DAY」の2つのステージが配置されていました。
場内を回ると、アーティストのグッズやサインを展示したエリアや、ファンがメッセージを記入した付箋が集まったボード、アーティストの写真と合成した記念写真が撮れるコーナーなど、多様なブースが用意されています。
ZEROBASEONEとJO1は、ファンによるブースも。ZEROBASEONE のブースはタイミングが合わず中に入れなかったのですが、JO1のブースにお邪魔させてもらうと、現地ファンによる装飾や、手作りのカプセルトイまでが並び、愛にあふれた空間が広がっていました。運営に携わる皆さんはとても温かく、「こんなにも日本のアーティストが海を越えて愛されているんだなあ……」と、熱い思いが込み上げてきました。
ソンムル交換、スペシャルステージ、“HAOBIN”バッグ…
「KCON STAGE」では、xikersとJO1を立て続けに鑑賞。開演20分前くらいに入りましたが、前から5列目くらいとかなりステージ近くの位置で観ることができました。開演を待つ間、サトコちゃんに現地のATINYの方が話しかけてきて、寄せ書きへの記入を求めるひと幕も。ソンムル(プレゼント)を渡し合ったりして、温かい交流が生まれる様がとてもほほえましかったです。
数曲のライブパフォーマンスとトークで構成される「KCON STAGE」。初めて観ることができたxikersは、事務所の先輩・ATEEZの「BOUNCY (K-HOT CHILLI PEPPERS)」をさすがのキレのよさでカバーしていて、エネルギッシュなパフォーマンスに魅了されました。JO1のステージでは、昨年の「KCON LA 2023」で披露して伝説のパフォーマンスと化していたSEVENTEEN「Super」のカバーを生で観られたことに感激。その後、休憩しながら少し遠目に眺めたHYOLYN様は、圧倒的ディーヴァすぎて光を放っていました。
ちなみにコンベンション会場のビジョンでは、TWSがさわやかに「plot twist」を踊る韓国の免税店SHINSEGAE DUTY FREEのCMが頻繁に流れていたため、私が「KCON HONG KONG 2024」のことを思い返すと、この曲が必ず脳内に流れる仕様になっております(TWSはDAY1への出演だったので、本番のステージは観られていません)。
SHOWの開演まで会場周辺を散策していると、現地のZEROSE(ZEROBASEONEファンの呼称)による豪華な自作フォトスポットがずらりと並んでいました。この日はとにかく、ZEROSEの熱量に感服し通し。駅の通路のみならず、会場内のそこかしこに中国出身であるジャン・ハオさんの応援広告が掲出されていたし、ジャン・ハオさんとソン・ハンビンさんのコンビを示す「HAOBIN(ハオビン)」と書かれたバッグを持っている人も多数見かけました。
日中はさほど混雑していませんでしたが、開演時間の19時が近付くにつれ、17時頃から人が増えてきて、コンビニもトイレも大行列。トイレは早めに済ませることをオススメします! もはやコンビニの列に並ぶのは大変そうだったので、小腹がすいたとき用に買っていたハリボーのグミを、お腹がすいた私は一気食いしてしまいました。
SHOW本番!現地で感じた「日本公演」との違い
いよいよSHOWの会場となるホール1へ入場。サトコちゃんはPRESALEでチケットを購入していたので、席は別々です。手荷物検査はとても入念に行われ、巾着の中身までもしっかり開けてチェックされる徹底ぶりでした。会場内は飲食不可なのですが、水のみ持ち込みOK。ただしなぜかペットボトルのキャップだけ捨てることを命じられます。係の方の中国語を理解するのに苦心した私はあたふたして、水を少しこぼしてしまいました……。
詳細な公演内容やセットリストは音楽ナタリー掲載のライブレポートをご覧いただくとして、この記事では客席で感じたことを記していこうと思います。日本と大きく異なる点が、アリーナ席もスタンド席も、全員が着席したまま鑑賞すること。これは体力的には助かりましたが、リズムに乗せて体を揺らしたい勢としては寂しさも覚えました。
最大収容人数1万4000人のホールは満員。オペラグラスを忘れてしまったのですが、最後列から2列目でも、メインステージもセンターステージも肉眼でよく見えました。スマホでの撮影は7割ほどの人がしていた感覚で、撮影に没頭する人が多いからか、ペンライトを持っている人が日本より少なめな印象。興味深かったのが、出演していないアーティストのペンライトを持ってきている人をちらほらと見かけたことです。パッと見渡しただけでも、TWICE、TOMORROW X TOGETHER、TRESUREのペンライトを観測しました。真相はわかりませんが、香港では特定のグループというより、K-POP全体のファンという人が多いということなのでしょうか。また拍手をするよりも歓声を届けようと大きな声を出すファンが多かったようにも感じました。
DAY6、JO1、ZEROBASEONE、ATEEZ…スターを迎えるファンの熱狂
個人的には、完全体で3年ぶりにカムバックしたばかりのDAY6を観られたのがとてもうれしかったです。公私ともにサバイバルオーディション番組を観る機会が多いのですが、DAY6の楽曲が課題曲として使われることがとても多く、それをきっかけによく聴くようになっていたのでした。何度聴いたかわからない名曲「Time of Our Life」を生で聴けて震え、新曲「Welcome to the Show」は会場が一体となってシンガロングする景色に大感激。あまりDAY6を知らなかったというサトコちゃんも「頭から曲が離れなくなった!」と言っていました。
JO1もデビュー5年目の余裕を感じさせるパフォーマンスと、自分たちのことを知らない人をもファンにさせてやると言わんばかりの気迫に見惚れました。そしてSHOWでもZEROSEの熱をとても感じ、この日はMCが“ハオビン”コンビだったので、2人がステージに上がるたびに割れんばかりの歓声が起きます。客席ではZEROBASEONEのファンダムが配布したと思われるオリジナルのLEDライトや、光を放つ幕のような斬新な応援グッズを掲げる方がそこかしこに。あの幕はどんな構造なんだろう……近くで見てみたかったです。トリはATEEZ。2月にご本人たちにインタビューさせていただく機会があったのですが、そのときに語っていただいた音楽とステージへの愛に満ちあふれるパフォーマンスでした。前の席にソンファさんの熱狂的なファンの方がいて、常に「ソンファ、I LOVE YOU!!」と絶叫していたので、だんだん喉が心配に。
公演時間は約2時間半。規制退場などはなく、スムーズに場外に出られました。振り返ってみると、「SHOW」本編はもちろん、コンベンションエリアのステージで、とても近い距離で気軽にアーティストのライブを観られたことが強く印象に残りました。5月10日から12日まで開催される「KCON JAPAN 2024」でもコンベンションエリアに「KCON STAGE」などのステージが設けられるようなので、イベントに参加する方はあの臨場感をぜひ味わってみていただきたいです(海外公演よりも混雑が予想されますが……)。
準備から当日まで、やってよかったこと
翌日も夕方のフライトまで、フェリーに乗ったり飲茶を食べたり、限られた時間でしたが香港の街を堪能。とても滞在1日半とは思えない、濃く充実した時間を過ごせました。やっておいてよかったことは、発券に必要な情報やタイムテーブル、気になったお店のWebページなど、あらゆる情報をスクリーンショットして画像フォルダにまとめておくこと。またモバイルバッテリーは必須です。とにかくスマホが命綱なので、絶対に紛失してはならぬ、と神経を尖らせていました。
初の海外ライブを経験してみて実感したのは、撮影禁止など制約が多い日本のライブには、演者と観客が音楽に全集中するからこそ生まれる唯一無二の輝きがあるということ。一方で海外ならではの盛り上がりや、ひと味違うモードでステージに臨むアーティストの姿を見られるのも新鮮な経験で、また浴びたいな、という気持ちも膨らみました。次回は本場韓国でのK-POPコンサートにも挑戦したいし、いつか「Coachella」など欧米のフェスにもチャレンジしてみたいという野望も生まれました。