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KEN THE 390が13人のラッパー、オーガナイザーとの対話を回想

KEN THE 390
16分前2024年11月27日 10:03

2023年8月にスタートした連載「ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390」。「B-BOY PARK」(BBP)の時代から、MCバトルの隆盛を現場で見届けてきたKEN THE 390がホストとなり、フリースタイルバトルに縁の深いゲストたちと、バトルの“過去・現在・未来”を語り合ってきた。

これまでに登場したKREVA、漢 a.k.a. GAMI、FORK、MC正社員、DOTAMA、T-Pablow、Zeebra、サイプレス上野、輪入道、R-指定、Authority、怨念JAPというゲストに加え、12月19日に刊行が決定した書籍版では、数多のMCバトルで名試合を繰り広げてきた呂布カルマとの対談を行っている。

連載の締めくくりとなる今回は、企画の発案者でもあるKEN THE 390自身が、各ゲストとのエピソードを振り返った。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 斎藤大嗣 ヘアメイク(KEN THE 390) / 佐藤和哉(amis)

フリースタイルであることが大事

──2023年にスタートした「ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390」全ゲストとの対談が終わりました。企画を振り返っての感触は?

自分がバトルに出ていたときを思い出すことが多かったですね。MCバトルに出たときのドキドキ感というか、ザワザワ感がフラッシュバックしました(笑)。

──KENさんがプレイヤーだった時代の話も多く登場しましたからね。

MCがバトルについて考えていることって、すごく言語化しづらいと思ってたんですね。それは自分自身の経験も含めて。だけど、みんなそれぞれの言葉で体験を話してくれることで、納得できることも多かったし、MCバトルに対する解像度がすごく上がりました。特に興味深かったのは、やっぱりみんな「フリースタイルであることが大事」だと話していたこと。

──“即興だからこその魅力”は皆さんお話しされていましたね。修練や経験も含めたうえではあるんだけど、基本的に出場者が即興で、“手ぶら”で挑む文化というのは、改めてすごいなと。

“ひらめいた瞬間のバイブス”“フリースタイルだからこその熱”が、MCバトルでは誰しも大事に感じることなんだなって。リスナーだけじゃなくて、やってる本人もバトルならではの瞬発力やサプライズに期待をしているし、自分も審査をするときにそれを重視するのは、やっぱり間違ってなかったと思いました。僕も自分のバトルを振り返ると、スタートの時点でどう着地するかは、まったく見えてないんですよね。見切り発車がラスト2小節ぐらいまで続く。

──その電車、もはやほぼ到着してる(笑)。

ははは! でもそこで「着地できる」と確信できるのは、やっぱりノッてるときなんですよね。もちろん経験値もあるけど、自分のマインドが盛り上がってるときほど「着地できる」と思いながらラップできるし、自信があればゴールで自分の言いたいことがバチッとハマるビジョンが見える。だから、メンタルの部分はすごく大きいのかなと思いました。結局“最後はメンタル”なのかもしれないですね……と言うと身も蓋もないけど(笑)。でもパブロ(T-Pablow)の「俺は負けるはずないと思ってた」という発言や、あとAuthorityがマインドセットをしてたと話していたように、そういうメンタルの部分が最後の鍵になるのかなと思ったし、「言うべき言葉が自分にはある」と信じられる人間がやっぱり強いのかなと。

──「言うべきことがある」というのはすごく大事な気がしました。当然だけど、言うことがないと、基本的にバトルというコミュニケーションは成り立たないし、下手でも言いたいことがあふれているラップには心をつかまれるという。そしてキャリアを重ねてポジションが変わったときに、その“言うべきこと”が変化する人も、しない人もいるのが興味深い事実で。例えば、呂布カルマさんは書籍版の対談で話されたように、まったく変わらない。

呂布カルマは、今のようにバラエティに引っ張りだこになっても、ずっとマインドは変わらないし、さらに“お茶の間の人”であることを逆手に取る柔軟性もある。そうやって自分の置かれている立場を把握して、自己認識がブレないから、バトルの中で最強の存在でいられるんだと思いましたね。結局のところラップはラッパー自身と切り離せないんだなとわかりました。「自分は誰であるか」「普段はどういう活動をしているか」「何を考えているか」を全部背負ってバトルの場に立つ様こそが、醍醐味なのかなって。パブロも「いかにMCバトルで人生が変わったか」ということを中心に話してくれたけど、その背景も込みで彼のバトルじゃないですか。

──T-Pablowさんは呂布カルマさんとは逆に、チャレンジャーからキングになる過程でマインドやスタンスが変化していったと思うし、その一連こそが彼の物語や強さの一端になるという。だから“いかに強くなっていったのか”がインタビューの肝になりました。

「こんな10代を送ってるヤツがいるんだ」の先に、“どれだけフレックスしてるか”“どんな家庭を築いたのか”という事実をラップして、それに観客が沸くというのは、みんながパブロの在り方を知りたいからだし、知りたいと思わせるだけの魅力があるということですよね。生き様が作品だけじゃなくて、バトルの強さにもつながる。そんなカルチャー、ほかにはそうそうないと思うし、魅力的ですよね。

MCバトルはヒップホップと連綿とつながっている

──今回、連載に登場した13人の人選について振り返ると、どんな所感がありますか?

もちろん話を聞きたい人はもっとたくさんいるんだけど、オリジネーターに近いKREVAさんから、今も現場に登場することの多いDOTAMAくんや呂布カルマ、20代のAuthorityまで、限られた回数の中ですごくバランスが取れた人選になったと思いますね。しかもプレイヤーだけじゃなくて、MC正社員くんや怨念JAPのような裏方の話が聞けたのもすごく重要だった。その中で“共通するもの”“それぞれの違い”、“変わっていくもの”“変わらないもの”が、全体を通して見えると思いますね。

──興味深かったエピソードはなんですか?

すべて興味深かったけど、中でもKREVAさんの「バトルのパフォーマンスでブレイキンに影響を受けた」という話は新鮮でしたね。BBPでのポージングとかアピールは、ブレイキンのバトル由来だったという話はすごく合点がいったし、“B-BOYのダンスバトル”という、ヒップホップの中で一番原初的な部分が、MCバトルにも脈々と引き継がれているんだなって。「バトルはヒップホップじゃない」「あれはスポーツだ」みたいに言われることも多いけど、それでもヒップホップの根源的な部分から引き継がれている要素が確実にあると感じました。

──MCバトルは、日本の中で独特の発展を遂げた部分もあり、それを解き明かしたいというのも、今回の連載のテーマではあったんですが、映画「8 Mile」のように、海外からの影響は当然だけど多分に大きかったんだなと思いました。

MCバトルがどうして今の形になっていったのか、なぜターン性がスタンダードになったのか、その流れを知らない人も増えているのかなと思うんですよね。

──ブームになってからもすでに10年近くが経つわけですからね。

だから、この連載では「MCバトルはヒップホップと連綿とつながっているものだし、ポッと出の文化ではない」ということが伝えられたかなと思います。もっと深いカルチャーであって、いろんなものが絡み合って生まれたアートだなって。やっぱり消費されるだけのものだったら、「高ラ」(「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」)や「ダンジョン」(「フリースタイルダンジョン」)で起きたブームが過ぎたら忘れられていたと思うし。実際に今よりも全然注目されない時期もあったわけで。

──やってることは基本的に同じなのに、2000年代のMCバトルは今に比べてアンダーグラウンドな存在で、その注目されていない時期に、KENさんもフロントラインにいました。

そうですね。でも、アンダーグラウンドの中ですごくグツグツした状況が生まれていて、それがテレビによって一気に噴出したことでブームになったという流れは、当事者の証言として形にしたかった。そしてその文化がなんでブームになって、ブームになるまでにはどんな過程があり、なぜ定番となったかには絶対に理由があるわけだし、それが今回の連載で伝わればいいなと。

──歴史的な背景も証言として形になったと思いますね。

そういう歴史のうえにパブロやAuthorityのような世代がいるのが、今回の連載の中で実感したことですね……っていうのを、僕のような世代が言うと、下の世代に対して恩着せがましいウザい先輩みたいになっちゃうけど(笑)。でも、それこそカルマや漢(漢 a.k.a. GAMI)さん、輪入道、DOTAMAくんのように、今もバトルに出て、下手すりゃ10代とぶつかる人もいるわけじゃないですか。「MCバトルはスポーツだ」と毀誉褒貶を含めてよく言われるけど、そんな競技ってほかにないですよね。

──馬術とかダーツぐらいですよね。

そうそう。そんなに多くはないと思うし、だからこそ稀有なことだなって。バトルの歴史自体がまだ浅いから40代ぐらいが一番上だけど、これから先になると60代と20代が戦うようなこともあると思うんですよ。そこでどんな化学反応が生まれるかは、単純に楽しみですよね。

一定のルールのあるゲームだから気楽に始められる

──例えばUMB(「ULTIMATE MC BATTLE」)の覇者であり、「ダンジョン」のラスボスであり、「BATTLE SUMMIT II」でも優勝された般若さんのように、ほかにもお話を聞きたい人はたくさんいたんですが、それはこの連載の第2弾が進んだときに、改めてお話を伺えればと。ただ、晋平太さんの登場が叶わなかったのがすごく残念。体調の都合で仕方ないですが、あれだけバトルに出続けて、実績を残して、クオリティを落とさないで最前線にいるのは彼ぐらいしかいないから、その証言は残したいなと。

もう20年ぐらいバトルの現役ですからね。

──ちなみに晋平太さんと戦ったことは?

2005年、両国国技館で行われたBBPのMCバトルで当たってますね。でもたぶんその1回だけかな。あのときは晋平太が優勝、COMA-CHIが準優勝、俺がベスト4だったんですよね。俺は準決勝で晋平太に負けたんですけど、観客の反応がけっこう割れたんですよ。

──あのときのBBPは客判定を取り入れてましたね。

それで司会が客にもう1回判定を求めたんですけど、そのときに晋平太は「もっと沸けよ!」みたいなジェスチャーをしたんです。当時の俺は「バトルの内容で決めようぜ。客を煽るなんてダセえな」と思って、なんのアクションもせずにじっとしてたら、再判定で負けて(笑)。

──ははは!

「俺もちゃんと観客に呼びかければいけたかもな」って(笑)。バトルの内容はあまり覚えてないんだけど、晋平太のそのアピールはすごく覚えてますね。

──あのバトルは土俵の上で行われましたね。だからCOMA-CHIさんは女性でありながら土俵に上がったという。

大相撲用に使う土俵と、レプリカの土俵があるらしくて、レプリカには女性も上がれるんですよね。「ヒールだけは脱いでください。穴ができるから」と言われてましたけど(笑)。

──その流れで言うと、今回の連載で女性のラッパーにお話を伺えなかったのも、かなり残念です。

COMA-CHIやRUMIさんのように、俺と同じ時期にバトルに出てた人もいるし、ちゃんみなのように「高ラ」で名前を上げてスターダムに上るアーティストもいますからね。

──UMBの福岡大会で優勝して本選にも出場した椿さんはMCバトルに積極的に参加されているし、何らかの形でお話は伺いたいなと思っていて。

ヒップホップシーン全体を見渡すとAwichを筆頭に女性ラッパーがすごく増えているし、これからもっと増えると思うんですよ。だから、MCバトルに出る女性ラッパーも、より多くなっていくと思う。

──#KTちゃんのようにバトルで知名度を上げた人もいますしね。

悪い意味ではなくて、シンプルに「一旗あげたい」と思ったときに、その選択肢としてMCバトルもあると思うんですよね。ブーム以降はMCバトルを登竜門としてチョイスする人はいたと思うし、ラップを通して世に出るきっかけの1つに、MCバトルは大きく寄与していると思います。男女関係なく。

──インタビューでも話に出ましたが、“エントリーすればステージに上がれる”のがMCバトルですからね。

ラップが流行した理由には、“フレックス”“異性の話”“お金”みたいな、ある程度のテーマや大枠が存在していて、それをいかに面白く話すか、いかに自分のものとしてラップするかというゲーム性も重要だったと思うんですよね。MCバトルも、“いかに相手より自分が優れているか”を面白く表現するゲームという側面が強いと思う。だから、もしバトルを難しく考えて一歩が踏み出せない人がいるなら、一定のルールのあるゲームだから気楽に始められるんだよ、みんなそんなに気負わずに始めてるからさ、ということがわかってもらえるとうれしいですね。一方で、そうやって手軽に参入できる分野だから敷居は低いけど、ずっと注目されるほど甘い世界ではない。

──ラッキーパンチは何度も当たらないですからね。

そこで腐ったり辞めちゃう人も少なくないけど、残る人は、やっぱり修練もしてるだろうし、面白さをつかんでるんだろうなというのも、この連載のメッセージになったかなって。

“全員がシーンの参加者である”というのがヒップホップのいいところ

──一方、“MCバトルの新人発掘”という側面は、以前よりも難しくなっているというのも、今回の連載で話題になったことで。

自分をアピールする方法が増えていくなかで、ほかの方法を取る人も増えたと思うんですよね。MCバトルに加えて、そこで活躍する人をメディアがフォローアップするみたいな、現場とメディアの両軸で新しいラッパーを注目させる仕組みができるといいですよね。

──今回の連載でいえば、ZeebraさんがFSL(FREE STYLE LEAGUE)の炎上について率直に語ってくださったのもうれしかったです。

ネットでの議論も含めて、やっぱりヒップホップには議論する文化というのが、しっかり残っているんだなと思いましたね。僕としてはBBPのディスカッションを思い出したんですよ。

──初期のBBPでは、代々木公園でのライブやダンスに加えて、パネルディスカッションがありましたね。

アーティストだけが話すんじゃなくて、ファンやヘッズも参加してヒップホップについての意見交換をする時間が、BBPのプログラムにはあって。それはほかの音楽イベントでは考えられないですよね。

──ロックフェスで「ロックとは何か?」みたいな意見交換をする企画はないですよね。

そういうディスカッションパートだけじゃなくて、2003年にFORKさんと般若さんのバトルで進行が止まったときも、司会のRYUさんがお客さんに「お前はどう思う?」と尋ねる場面があったんですよ。何かトラブルが起きたときに、発言を促したり、いろんな意見を取り入れる空気が自然発生する、“全員がシーンの参加者である”というのが、ヒップホップのいいところだと思うんですよね。

──MCバトルのシステムがブラッシュアップされていく過程にも、プレイヤーや運営だけではなく、リスナーの反応も大きかったというのが、漢さんをはじめ、今回の連載でも明らかになったことで。

だから、そこにも“ヒップホップ的な要素”が反映されたということですよね。また、もし若いラッパーの参入が減ってるんだとしたら、MCバトルと流行のヒップホップとの乖離も影響してるのかなと。それはサウンドや感覚の部分で。

──よく「現行の楽曲はトラップ以降のサウンドが中心」「MCバトルはブーンバップが中心」と言われますね。それは一面的な判断ではあるんだけど、ただトラップとブーンバップという概念が、ある意味では“新旧”を象徴するものとして捉えられて、MCバトルは比較的オールドなビート感が中心になっている部分もあります。

ただ、サウンド的にブーンバップが伝統的なヒップホップかというと、またそれも違うと思うんですよね。あれは特に90年代的なヒップホップの流行の形だと思うし。

──80年代だともっとTR-808(Rolandが1980年に発売したリズムマシン)がドラムとベースの基本なってたりするから、むしろより古典的なヒップホップのほうが、サウンド構造的には今に近いですからね。

ヒップホップのサウンドは時代とともに流行が変わっていくものだし、特に最新のヒップホップに影響を受けてるような若い子は、ブーンバップが多いからという部分で、MCバトルと離れてる可能性もあるなって。だから、MCバトルも例えばオートチューンを使ったり、ビートやBPMも流行に合わせるような、今の美意識を取り入れたり、流行とバトルの溝を埋めるような作業があってもいいと思うし、そのギャップの解消が、MCバトルシーンの課題なのかなと思いますね。現行のビート感がもっと前に出るバトルがあれば、そこにコミットする若いラッパーも増えて、そのバトルのノリをそのまま楽曲のほうにもスライドできる可能性もあると思うし。

──選択肢も多いほうがいいですしね。

そう。サウンドは趣味や興味の問題でもあるから、自分のふさわしいところをチョイスすればいいし、それができれば規模も広がると思う。

MCバトルの中毒性と“圧”

──「MCバトルを卒業した」と宣言する人にも今回の連載に登場していただいたけど、ほとんどの人が「(今後MCバトルに出る)可能性はゼロではない」と話していたのも興味深くて。KENさんもそうですか?

ゼロではないですね。僕が改めて出るとしたら……なんかめちゃくちゃ炎上するような事案を起こして、そのステートメントとか説明を発表する場として出るみたいな(笑)。

──目的が独特すぎるし、怖いよ(笑)。

ははは! それは冗談としても、やっぱりバトルに出ること自体にも、改めて興味が湧いた部分もある。同じ即興でも、フリースタイルの興奮とMCバトルの興奮は違うんですよね。やっぱりMCバトルは自分でわかるぐらいアドレナリンが出るんです。精神的なプレッシャーがかかる中で、ラップで勝ち筋が見えたり、着地点をひらめいた瞬間は、最高に興奮するし、勝った瞬間だけじゃなくて、ヴァースごとにアドレナリンがドバドバ出る。あのときの快感は、ほかのことではなかなか味わえないし、中毒性がありますよね。だからパブロが「自分に気合いを入れたくてバトルに出た」という気持ちはすごくわかる。

──ライブとは違う快感や興奮があると。

「あいつには勝ちたい」「みっともない負け方はできない」とか、いろんな“圧”がバトルにはかかるわけですけど、バトルに勝つと、その圧が一気に開くんですよね。逆に負けてその圧が抜けなかったときは、すごくモヤモヤした気持ちがずっと残る。トーナメントで上にいけばいくほど名勝負が生まれやすいのは、ノッてるという部分以外にも、お互いに圧がかかってるから、その相乗効果で、という部分はありますよね。

“自分自身のやり方”を発見できた人が、最終的に強くなる

──「BATTLE SUMMIT II」決勝の般若 VS Benjazzy戦は、お互いに興奮度と精度が高まっていくのが観てる側にも伝わってきたし、それにはそういう理由があったのかもしれないですね。最後に、この連載を読んでバトルに興味を持った人へのメッセージをお伺いして、ひとまずこの連載を閉じたいと思います。

全員が全員、考えてることや方法論が違うということが伝わるとうれしいですね。バトル強者と言われる人はみんな考え方が違うし、MCバトルには必勝法や大きな定番のスタイルがあるわけではなくて、“自分自身のやり方”を発見することができた人こそが、最終的に強くなるんだと、改めて理解できました。だから、この連載でみんなが話してる考え方は、むしろ避けてくれたほうがいいのかも(笑)。

──“逆参考書”だったという(笑)。

でも、事実としてそれは大いにあると思うんですよ。確かに、最初は誰かの真似や、システムを参考にしてもいいけれども、結局強くなる、勝てるようになるには、自分のスタイルを発見して、自分の言いたいことが言えるようにならないとダメなのは確かだと思う。そして、それは“自分が自分であることを誇る”という、ヒップホップの考え方や醍醐味でもあると思うんですよね。それがMCバトルにも通底していることが伝わるとうれしいです。

KEN THE 390(ケンザサンキューマル)

ラッパー、音楽レーベル・DREAM BOY主宰。フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年、アルバム「プロローグ」にてデビュー。全国でのライブツアーから、タイ、ベトナム、ペルーなど、海外でのライブも精力的に行う。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員として出演。その的確な審査コメントが話題を呼んだ。近年は、テレビ番組やCMなどのへ出演、さまざまなアーティストへの楽曲提供、舞台の音楽監督、映像作品でのラップ監修、ボーイズグループのプロデュースなど、活動の幅を広げている。12月28日には「KEN THE 390 YEAR-END PARTY 2024 ~TALK & LIVE~」を東京・神楽音で開催。

KEN THE 390 Official

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