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ヒゲダン「エルダーフラワー」の普遍的な真実 / tayori「ゴースト」が描く、喪失の先にある愛

再生数急上昇ソング定点観測
6分前2026年04月10日 9:05

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで3月27日から4月2日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

文 / 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、1位にHANAの「Bad Girl」のパフォーマンスビデオが登場した。花が壁一面に飾られた空間で、バンドセットを背にしたメンバーがエネルギッシュかつ楽しそうにパフォーマンスする姿が印象的だ。

17位にはBTSの「2.0」がランクインした。今作は3月20日にリリースされたニューアルバム「ARIRANG」の収録曲。MVは2003年公開の韓国映画「オールド・ボーイ」をオマージュしたアクションシーンなど、武骨でクールなBTSを楽しめる内容となっている。

24位には久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」40th Anniversary Celebration Movieが登場した。この映像にはAI、三浦大知、EXILE ATSUSHI、亀梨和也、KREVA、松下洸平ら総勢20組の著名人が参加し、それぞれが久保田への“お祝いパフォーマンス”を展開。リレー形式でつながれていく構成により、世代やジャンルを超えたリスペクトと祝福の空気が映像全体に流れている。

36位には乃木坂46の「君ばかり」がランクインした。作詞作曲を担当したのは、バナナマン扮するフォークデュオ・赤えんぴつのおーちゃん(設楽統)で、ほかのアーティストへの楽曲提供は今回が初となる。MVには乃木坂46のメンバーだけでなく、赤えんぴつの2人も出演している。

日韓の人気アーティストの楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。

Official髭男dism「エルダーフラワー」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場16位

Official髭男dismの「エルダーフラワー」は、綾瀬はるか主演の映画「人はなぜラブレターを書くのか」の主題歌として書き下ろされたバラードだ。

「人はなぜラブレターを書くのか」は、2000年3月に発生した営団地下鉄日比谷線・中目黒駅構内の脱線衝突事故を背景とする物語。事故で犠牲になった当時17歳の高校生・富久信介さんの家族のもとに、20年後、彼にひそかに恋をしていた女性から1通のラブレターが届いたという実話をもとに描かれる。綾瀬は、初恋相手である信介への思いを24年ぶりに手紙にしたためる主人公・寺田ナズナを演じた。

楽曲はこの物語と深く呼応していて、大切な存在への無償の愛と、その思いが時間を越えて受け継がれていく様が描かれている。「何ひとつ不自由などかけさせまい」と誓いながらも、気付けば自分が支えられていたという実感は、失って初めて見える絆を示しているのだろう。また「言葉で作る花束」は、もう直接は届かない相手に対して、それでも思いを届けようとする行為であり、映画における“ラブレターを書く理由”そのものと重なる。

さらに「写真や思い出じゃ足りないから」という一節には、過去に留めるのではなく、今もなお生き続けていてほしいという切実な願いがにじむ。それは、ナズナが手紙を書くことで信介との時間を現在へと引き寄せる姿とも響き合う。「幸せは枯れはしない」という言葉の通り、その愛は誰かから誰かへと受け渡され、やがて「永遠に愛」として未来へと息づいていく。この楽曲は“思いは時間や距離を越えて届き続ける”という普遍的な真実を、静かに、そして確かに伝えている。

tayori「ゴースト」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場74位

「ゴースト」はtayoriが昨年9月にリリースした最新アルバム「magic」の収録曲。これは曲自体もそうだが、MVがとにかく切ない。亡くなった愛犬・ハルが飼い主のスズカを思い続ける視点から、喪失の先にある愛の形がアニメーションで描かれているのだ。「ひとりぼっち あてのない亡霊」としてさまようハルは、居場所を失いながらも、「君の街をさまよう」という歌詞の通り、思いだけはまっすぐスズカへと向かっている。再会は夢の中に限られるが、「鮮やかによみがえる」記憶によって、2人の時間が今も確かに息づいているところが、観る者の涙を誘う。

「言い残した言葉なんて 一つも思い浮かばない」という一節は、後悔のなさ、すべてを注ぎきった愛の証だろう。それでも「笑わせたくてさ」と願う姿には、離れてもなお寄り添い続けようとする優しさがにじむ。「出逢う度に恋をする」というフレーズも印象的で、記憶の中で何度でも関係が更新されていく感覚が、愛の持続性を柔らかく伝えている。

一方で、「振り向かないままの世界」という現実の冷たさも描かれるが、その中で差し込む「一筋の光」はスズカの存在そのものだ。触れられなくなった今でも「君と踊っていたいな」と願う気持ちは、過去に閉じることなく現在へと伸びていく。失われた命が、愛として生き続けていく――そんな目に見えないけれど確かにある思いが、この楽曲の余韻をより深いものにしている。

ぴーなた「アンタに言ってんの!!! feat. 重音テト」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場81位

音楽コラボSNS・nanaで昨年開催された「ボカロP”ぴーなた”楽曲提供オーディション」で、1位を獲得した受賞者にぴーなたが提供した「アンタに言ってんの!!!」。この楽曲を重音テトが歌唱したバージョンのMVが3月20日に公開され、見事ウィークリーチャートへのランクインを果たした。

今作は攻撃的な言葉の奥に、承認欲求と自己嫌悪が同時に渦巻く内面を描いた楽曲だ。「アンタに言ってんの!」と繰り返されるフレーズは他者への苛立ちのようでいて、実際には自分自身へ向けた苛立ちやあきらめも含んでいる。「凡ミスなんて平常運転」「毎回同じ失敗を繰り返して学ばない」といった言葉からは、自分を客観視しつつも変われないもどかしさが浮かび上がる。

また、「共感して欲しいんでしょ?」「かけて欲しい言葉用意して?」という皮肉は、他者との関係性への不信と同時に、“わかってほしい”という欲求の裏返しでもある。さらに「アタシを映す鏡」という表現が示すように、相手は単なる他者ではなく、自分の未熟さや弱さを映し出す存在でもあるのだろう。

全体を通して、感情の起伏や言葉の反復がそのまま思考の混乱を体現しており、整理されない感情を抱えたままでも前に進もうとする衝動が描かれている。強がりと本音がせめぎ合うその不安定さこそが、この楽曲のリアリティであり魅力になっている。

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