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日本語ラップ最前線・BATICAで4月にカマしたラッパーは

EBISU BATICA 15th ANNIVERSARY DAY 4「MATSURI」の様子。
7分前2026年05月16日 3:06

今、最もホットなラッパーが集まる東京の現場と言えば、東京・恵比寿に2011年にオープンし、今年15周年を迎えたEBISU BATICA。シーンのトップを走るラッパーたちが出演してきた日本語ラップの最前線であり、毎月さまざまなパーティが開催されています。この連載では、そんなBATICAのブッキングを担当している店長の一瀬公佑さんが特に印象に残ったパーティやラッパーを毎月紹介。今回は15周年記念興行5DAYSについて振り返っていただきました。

取材・文 / 三浦良純

仙台出身のNeSが見せたライブ力

アニバーサリー初日の「BRIDGETHEGAP」は、千葉のDJ・SOMAさんが主催しているパーティなんですけど、このパーティ自体を楽しみに来たお客さんと、ライブアクトを観に来たお客さんが両方いて、アニバーサリーのパーティとしてあるべき姿だと思いました。原島"ど真ん中"宙芳さんとかShoma fr,dambosoundとか盛り上げ上手なDJがたくさん出ていて、ずっといい音楽と空気が流れていましたね。

ライブアクトで言うと、宮城県仙台市出身で現在は神奈川を拠点にしているNeSさんがこのパーティと相性がよくて。彼は同じ東北のYELLASOMA、YOUNG GAGA GG DIORらとともにFAMILY BUSINE$$として活動しているラッパーで、もともとBATICAに頻繁に出ているわけではないんですが、その中であれだけの立ち回りができるのは、やっぱりライブを積み重ねてきたからだろうなと。

出順はNeSさん、Kee Roozさん、Neetzさんという流れだったんですけど、ここでこんなに盛り上がって大丈夫かと思うくらい、NeSさんは空気をつかんじゃってましたね。もちろんその後も、BATICA常連のKee Roozさんはいつも通りにカマしていたし、Neetzさんもさすがのライブでした。

この日のライブアクトでもう1組紹介したいのは、千葉のクルー・interplay。いなたいブーンバップとか、最近はUKっぽいテイストのビートでラップしているクルーなんですが、昔からずっとBATICAに出ている人たちなので、ホームグラウンド感があってめちゃくちゃ盛り上がってました。

アニバーサリーだからということで、普段はBATICAに出ないようなゲストがたくさん出てくれている中で、日頃からお世話になってるinterplayとかKee Roozさんとか、BATICAの土台となってくれている方たちがちゃんと盛り上げるというキレイな初日を迎えられたと思います。

BEN10からのSpiderWebで爆発

2日目はDJクルーのkan7westと一緒にブッキングした「KAN7WEST FES」でした。「これ俺らが楽しいだけなんじゃないか」と思いつつ、すごく悩んでブッキングしたんですけど、トータルで170人くらい入りましたね。kan7westは、hanauetease、chaoz!!!、ascii、Yohei Tsushimaらを中心とする総勢10名くらいのクルーで、kan7westにしか作れない空気があります。BATICAって、DJを楽しみたい人は1階に降りちゃって、2階はライブアクト中心だから、DJが盛り上がりづらいという構造的な悩みがあるんですが、kan7westがライブアクトの間にやったDJは、シャンパンが3本開くくらいに盛り上がってて感動しましたね。とにかくミュージックラバーな人たちなんですよ。

ライブアクトは一番手のCanSellからカマしてました。彼はこれがBATICA初出演となる福岡のラッパーで、東京でのライブもこれが初めてだったみたいですけど、一番乗りで現場に来て、開口一番「おめでとうございます!」って挨拶してくれて。まずめちゃくちゃいいヤツなんです。お客さんからしたらたぶん一番ノーマークな存在ではあったと思いますが、そのキャラクターでしっかり空気をつかんで、フロアの温度を上げてくれて。彼のおかげでアットホームな空気が生まれてました。

CanSellは、kan7westのhanaueくんにお手本をやらせてから「俺火つけるZippoで」「じっ! じっ! じっ!」というコール&レスポンスをしてたんですけど、フロアの声の大きさに感動しちゃいましたね。相当現場をこなしてないとできない立ち回りだと思います。彼はその後、ずっと前からBATICAにいる人みたいな顔で、朝まで居続けてましたね。どこに行っても愛されるキャラクターだろうと思います。

そのあと、さらに盛り上がりに驚いたのがMADEINBEN10。「YOUNG PRO」(※“ヤング&プログレッシブ”なヒップホップアーティストをピックアップするWWWのライブイベント)にもラインナップされてますけど、ライブを積み重ねる中で、リスナーが着実に増えてるのを感じました。

BATICAには去年9月に初めて出て以来何回か出てもらってますが、毎月成長しているようで、12月のイベント「crux」でめっちゃカマしてたんです。「Tuff as fuck」みたいな代表曲もありつつ、曲の人気で沸かせてるというよりは、ライブ力でカマしている印象で。それをkan7westも観ていたので「今回絶対呼びたいよね」って話になったんです。そしたらラインナップとうまくハマったのか、これまで観てきた中では一番の盛り上がりで。とにかくピュアに音楽をやっているラッパーだと思います。

そして、BEN10からのSpiderWebは、もう“異常”でしたね。なんであんなカッコいいんだろう……っていう。SpiderWebは足立区のクルーで、売れる前は頻繁にBATICAに出ていたんですけど、この1年くらいの間にオンラインじゃなく、オフラインの現場でどんどん人気が出てきて。SpiderWebが所属するクリエイティブチームYeYanのアルバム「YeYan CAMP」が話題になったこともあって、今回はもう爆発してました。

彼らの一番の魅力は、自分たちのスラングを生み出せていること。そういうフックを意識せずに作れちゃう頭のよさとバランス力がある人たちだなと感じます。ワルい人たちに見えますけど、バイオレンスの方面じゃなくて、ただ音楽をやりながら遊んでるという感じで、クリエイティブなんですよね。ファッションや音楽が好きな若者に加えて、ナードな層にも刺さるんじゃないかなと思いますし、これからまとまった作品を出したら一気に跳ねるんじゃないでしょうか。この規模で観れることはもうほとんどないかもしれません。

valkneeが元リリスクhanaと登場、シークレットはベリスモ

3日目は「Brighten」を主催している翡翠くんと僕がそれぞれ案を持ち寄ってブッキングしました。組数が少ないイベントは、組み合わせが命だから、かなり悩んだんですけど、CBS、valkneeさん、Neibiss、okadadaさんの組み合わせはうまくハマったんじゃないかと。Neibissはオープニングアクト後の一番手だったんですけど、一番お客さんが飛び跳ねていて。何をしてもいい空気を作るのってライブがうまい人の特徴だと思うんですよね。CBSはラフさがありつつ、ライブに安定感があって、okadadaさんは50分のミックスでしっかりフロアを揺らしてました。

valkneeさんが2月に出したアルバム「Gear」は、「ここまでキャリアを重ねているのに、まだ違う味を出してくれるんだ」といううれしさがあって、すごくいい作品だったんです。valkneeさんのライブのうまさはもう当たり前なんですけど、MCで「今売れてるラッパーはBATICAを通ってきた人がほとんどで、シーンにとって大事な場所」という話もしてくれて。BATICAは僕の先代が作り上げてきた場所ですけど、15周年のタイミングでそういうことを言ってくれるのは、僕としてもめちゃくちゃうれしかったですね。

あと、この日のvalkneeさんのバックDJは、この数日前に解散ライブをしたばかりのlyrical schoolのhanaさんだったんですよ。リリスク解散直後というタイミングまでは意識してなかったんですけど、この日はhanaさんと同じく元リリスクのreinaさんが1階で一緒にDJをしていたから、リリスクのヘッズがたくさん来てくれて。そこでバックDJをhanaさんにお願いするエンタメ力もvalkneeさんならではというか、いろんな人を輝かせる動き方をしていて共感します。

この日はシークレットアクトとして、VERRY SMoLくんも出演してくれました。彼は「RAPSTAR 2025」のファイナリストだから、日本語ラップを軸にした最終日に出てもらったほうが盛り上がったかもしれないんですが、いろんなジャンルの可能性を秘めてる人なので、この流れの中で観てみたいという自分のエゴで3日目に出ていただきました。あれだけメロディセンスがあって、歌える人っていないですし、どんなビートでもイケると思うんですよ。

シークレットアクトなので、フロアにファンがいない状態で始まったけど、ライブが圧倒的にうまくて。まさに口から音源だと思っちゃうレベルでした。

OMSB×PUNPEE×原島"ど真ん中"宙芳のあの曲が

4日目の「MATSURI」は僕の前の店長が最後にブッキングした企画で、BATICAの関係者なら知り合いしかいないようなメンツのパーティなんですけど、1年でお酒が一番出ましたね。普段「お酒がたくさん出てスタッフが大変だった」と言われる日の倍のお酒が出てました。もう今年これ以上にお酒が出ることはないと思います。

だから僕はバーの手伝いで、ずっとお茶とか氷の買い出しに行ってたんです。観られた範囲で言うと、Flat Line ClassicsはやっぱりBATICAのつかみ方をわかってる人たちで、渋くてカッコいいライブをしていましたね。僕は4代目の店長なんですけど、Flat Line Classicsは、2代目の店長くらいの頃からソロでもDJでもずっと出てくれていて、すごく関係値のあるクルーで。前の店長の最後の企画ということもあって気合いが入っていて、これぞFlat Line Classicsというライブをしてくれたと思います。

OMSBさんは、ビートもラップもドープで、もはや変態でしたね。その変態的なラップのうまさでフロアをガツンとつかむんですけど、歌詞には面白い表現があったり、繊細さも見えたり、日本語ラップのよさを感じさせるライブをしてくれる方だなと。この日は原島“ど真ん中”宙芳さんが根回しをしてくれて、PUNPEEさんが遊びに来てくれて。OMSBさん、PUNPEEさん、原島さんで「MISS U」を披露してくれました。

実はこの曲、原島さんが1年前くらいからずっとBATICAで流してて、BATICAによく来ている人ならみんな知ってる曲だったんですよ。待望のリリースで、これが聴けるだけでもう元が取れるみたいな感じでしたね。あと、この日はSUMMITのほかのラッパーもたくさんフロアに遊びに来ていて。1階で原島さんが「DNA」を流して煽ったら、BIMさんが出てきてフロアがブチ上がってましたね。お客さんやアーティストのおかげで成り立ってるBATICAのカルチャーを感じられる1日でした。

LEXも観に来てニコニコSiero

最終日の「crux」は僕が1人でブッキングした日本語ラップのイベントで、出順が早いほうから言うと、湘南出身の若手18easyが空気をつかんでましたね。フロアを沸かせるバンガーもありつつ、肩の力を抜いて楽しめるよさがあって。キレイなフロウで、リリックも面白くて、普段聴きしやすい曲が多い印象です。「ジョイントの吸い方がアナコンダなんだよ」という曲が特に盛り上がってましたね。

1月に紹介したLillieはやっぱり若い世代をつかんでいて、これからその母数がもっと増えていくんじゃないかと思うし、今回もよかったです。続いて登場した石川・金沢のYamiboi To$は、日本語表現の面白さもありつつ、フィジカルの強さもあって。フックも作れる器用なラッパーで、なおかつ「売れたい」という熱もある。この日、特にカッコよかったのは同郷のYÖSYと一緒に歌った「TAKAMIBAE」で、音源よりライブのほうがいいくらいだなと思いました。RUPRECXNTA改めAndersenもいるし、石川には熱いシーンがありますよね。

そして終盤はkegønくん、Sieroくん、Only Uさんという流れでした。kegønくんは爆発力のあるライブが好きなんですが、ここ数年で落ち着いて安定したライブもできるようになった印象があります。3、4年前にBATICAに出ていた頃は、上京したばかりでめっちゃ若かったし、もうずっと爆発してるようなライブをしてたんです。今はある程度キャリアも重ねて、後輩もできて、アーティストとして大きくなっているのを感じました。

Sieroくんは、2024年から1年半くらいはずっとBATICAでライブをしていたんですけど、今回はひさびさの出演で。最新アルバムの曲に加えて最近はやってないような曲を披露してくれて、懐かしかったです。

Sieroくんは出てきたときからすごかったけど、ステージでの動き方がぎこちない部分もあったんです。でも今はもうありのままの自分を出せるようになっていて。それは本人の成長でもあるし、ファンが受け入れてくれているからというのもあるんだろうなと。この日はLEXさんが遊びに来ていたんですけど、Sieroくんは「どれだけ盛り上げられるか見せなきゃいけないんだよ」とか言いながら、今の代表曲である「ニコニコ」でブチ上げてましたね。

2日目に出演したRyugo Ishidaさんもそうですけど、Only Uさんは僕にとって青春みたいなラッパーで、JUMADIBAさんとかMIKADOさんが参加した最近のアルバム「STORY」もすごく刺さったんです。この日の中ではやっぱりダントツで落ち着いてアダルトなライブをしてましたね。アニバーサリーということも意識してくれていて。お客さんと目を合わせて歌ってくれていました。

Sieroくんとコラボした新曲も披露していたんですけど、Only Uさんが「Sieroはもうバテバテで声枯れちゃってるっぽい」みたいないじり方をして、Sieroくんが「バテてない! ちょっとやめてよ!」みたいに否定する場面もあって微笑ましかったですね。

今月の注目イベント

「MILES」

1月にも開催されたARuMとSSPの企画「MILES」が、5月24日にあります。今回は2人が共同制作したミックステープ「THE BOX」のリリースパーティで、前回と違ってデイイベントなので、前回来れなかった人にも来てほしいです。

「CASK」

28日に「CASK」というイベントがありまして。これは自分がアニバーサリー企画のブッキングでキャパくなったときに、もうどういうお客さんが集まるのかとか、BATICAの歴史がどうだとか関係なく、とにかく自分が好きなイベントやろうと思って制作したイベントです。

Black petrol、ผ้าอ้อม99999、It’s US!!!!、BYORA、Daichi Wagoという、変則的なラップミュージックを作ってる独自性の強い5組に集まっていただきます。皆さん爆発力のあるライブをしている方々ですね。個人的なアニバーサリーおつかれさまイベントではあるんですけど、BATICAは去年ヒップホップの方面でがんばったから、今年はもう少し広く、バンドだったりエレクトロポップだったり、いろんなジャンルの人たちが交差する機会を作りたいという気持ちも込めました。

店舗情報

EBISU BATICA

クラブとライブハウスの両方のよさを引き出し、違った感性と人を紡ぐ新しいコミュニティ作りの場として、多種多様なシーンに対応するイベントスペース。1Fは40名前後、2Fは80名前後のキャパシティで、ドラムセット、アンプ、プロジェクターなども備えている。DJやライブイベント、展示からウエディングパーティに加え、飲み会、結婚式二次会、試聴会、プレス向け発表会、展示会、各種撮影など、さまざまな形態での利用が可能となっている。

EBISU BATICA | Tokyo

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