ロッキング・オン・ジャパンの企画制作による野外ロックフェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」の前半戦が、8月4日と5日に茨城・国営ひたち海浜公園にて行われた。
この2日間の来場者数は合計約13万8000人で、出演アーティスト数は101組。出演者たちはそれぞれ猛暑に負けないパワフルなパフォーマンスを繰り広げた。
■8月4日
総合プロデューサー・渋谷陽一の前説で「すでにこのフェスのインサイダーと言っていい」と紹介されて登場したのは欅坂46。ヒットソング「二人セゾン」でライブをスタートさせた彼女たちは、平手友梨奈を中心としたパフォーマンスで朝イチのGRASS STAGEを盛り上げていく。8月15日にリリースされるニューシングルの表題曲「アンビバレント」では、平手がステージに横たわる熱演でオーディエンスを驚かせた。真昼のGRASS STAGEに現れたTHE ORAL CIGARETTESは、スケール感あふれる「容姿端麗な嘘」「DIP-BAP」でオーディエンスを圧倒。終始ハイテンションなパフォーマンスが繰り広げられ、ステージ前では何度も砂塵が発生するほどの盛り上がりを見せた。山中拓也(Vo)は「『GRASS STAGEなんて10年早いわ』とか、いろいろ言われました」とこれまでの体験を回想し、「自分の信念を貫き通してよかったなって思います! だってあなたたちと今ここで出会えてるからさ!」と観客たちにお礼の言葉をかけた。
炎天下のPARK STAGEに現れた竹原ピストルは「逆の立場だったら真夏の竹原ピストルなんて絶対観たくない」と苦笑しながらも、ライブの鉄板曲「よー、そこの若いの」や新曲「隠岐手紙」を汗だくになりながら熱唱し、ステージ周辺に人だかりを作っていた。昨年に続きSOUND OF FORESTに登場した大森靖子は「ミッドナイト清純異性交遊」「絶対彼女」といったきらびやかな楽曲で集まったファンを歓迎。「PINK」では「私の音楽は祈りです……なので、今日も祈りにきました」「歌に阻害されたかもしれない命が私の目の前に現れたとき、肯定できるようにここにきました」と自身の演奏にかける思いを明かした。最後の「音楽を捨てよ、そして音楽へ」ではバックバンドのシン・ガイアズのソロパートをバックに、大森が「音楽はすべて、あなたのものです!」と絶叫。壮大なムードを作り上げて出番を終えた。
日が傾き始め、涼し気な風が吹くSOUND OF FORESTでライブを始めた筋肉少女帯は、「踊るダメ人間」「ワインライダー・フォーエバー(筋少Ver.)」「元祖高木ブー伝説」など新旧織り交ぜたセットリストでライブを展開。MCで大槻ケンヂ(Vo)は5年ぶりの出演となることに触れつつ、「生き死に関わる問題なのよ! 俺たち全員50歳越えててよ!」「今日の我々のテーマは“生きて帰る”ことだー!」とコミカルなトークでオーディエンスを惹きつけていた。
1日目のLAKE STAGEのトリを務めたのはエレファントカシマシ。フロアは大入りとなり、その様子を観た宮本浩次(Vo, G)は開口一番「よかった、たくさん人入ってて」と安心した表情を浮かべていた。彼らは前半、「Easy Go」「奴隷天国」「RAINBOW」といったパワフルなナンバーを次々披露。途中、宮本と石森敏行(G)がぶつかり合ったり、宮本がパイプ椅子に乗って熱唱したりと、さまざまなステージングでフロアを圧倒した。彼らが最後に披露したのは代表曲の1つ「今宵の月のように」。宮本の柔らかな歌声が、夜のLAKE STAGEを穏やかに彩った。一方GRASS STAGEでは10-FEETがこの日のトリを担当。「帰ろうか迷ってるお客さんをどれだけ止められるかが勝負」と話したTAKUMA(Vo, G)の言葉通り、「VIBES BY VIBES」「1sec.」「goes on」などライブの鉄板曲を連発してGRASS STAGEに大勢の観客を集めていく。「hammer ska」では東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊をゲストに招き、フェスならではのコラボでオーディエンスを楽しませていた。ステージをはける時間すら惜しんでいた10-FEETの3人は、ライブ本編を終えて楽器も置かずにアンコールを開始。最後はテンポ速めで「CHERRY BLOSSOM」を演奏し、90分で17曲を届ける熱演でファンを喜ばせた。
■8月5日
2日目のPARK STAGEのトップバッターを務めたBiSHは「SMACK baby SMACK」「GiANT KiLLERS」と挑発的なナンバーを連発。「BiSH-星が瞬く夜に-」では清掃員(BiSHファンの呼称)とヘッドバンギングを繰り広げるなど熱いパフォーマンスを見せた。続いてPARK STAGEに現れたnever young beachは和やかなトークを展開しつつ、「なんかさ」「気持ちいい風が吹いたんです」「明るい未来」などをプレイ。グルーヴィなサウンドで会場に陽気なムードをもたらした。
My Hair is Badは「初めてGRASS STAGEに立たせてもらってます! ありがとうございます! 大切な曲を」と「真赤」を情感たっぷりに披露。さらに「クリサンセマム」「元彼氏として」を連投し、椎木知仁(G, Vo)のヒリヒリとしたポエトリーリーディングから「フロムナウオン」へとつなげて観客を惹き付けた。「RIJF」初出演のレキシは7月で“完結”したチャットモンチーの参加曲「SHIKIBU」でライブを開始。新曲「GET A NOTE」で観客にタオル回しを煽って「わ! すごいフェスっぽい!」とはしゃぐも、続く「狩りから稲作へ」では「稲穂振れればいいんでしょ? いつからこんなことになってしまったんだろう」と悪態をついて観客を笑わせる。フィールド一面にファンの持つ稲穂が揺れる中、彼は大物アーティストの楽曲を盛り込んだパフォーマンスでGRASS STAGEを沸かせた。
LAKE STAGEのスキマスイッチはライブの定番曲「奏(かなで)」「全力少年」を披露する。ラストナンバー「未来花(ミライカ)」では、大橋卓弥(Vo, G)の澄んだ歌声と常田真太郎(Piano, Cho)による美しい鍵盤の音色に、ファンはじっと聴き入っていた。マキシマム ザ ホルモンは2011年に発表したミュージックビデオでおなじみの「小さな君の手」から「maximum the hormone」へとつなげる流れを再現してファンのテンションを引き上げる。ライブ定番曲「『F』」、フェスではあまり披露されない「中2 ザ ビーム」を挟み、最後は「恋のスペルマ」で観客を踊らせた。
松任谷由実はテンガロンハット、ネルシャツ、ショートパンツに生足というスタイルで、爆発音と共に颯爽とGRASS STAGEに姿を見せる。「こんにちは! 清水ミチコです!」とお茶目に挨拶し「Hello, my friend」「守ってあげたい」「やさしさに包まれたなら」とヒット曲のオンパレードでパフォーマンスを展開。この日、初のフェス出演となったユーミンは「フェスバージン。この期に及んで失うものがあるなんて! 平成最後の夏フェスに滑り込みました」と笑顔を見せる。ボンゴの音色を合図にステージにたいまつが灯り、ファイヤーボールも上がった「真夏の夜の夢」で、ユーミンは腰を揺らして情熱的に歌唱した。なおこの日は林立夫(Dr)、鈴木茂(G)、武部聡志(Key)、松任谷正隆(Key)を含むスペシャルな布陣でライブを届けたユーミン。彼女は若い世代の観客にも彼らの功績を丁寧に説明し、「春よ、来い」から「卒業写真」へとつなげてじっくりと歌声を響かせた。
SOUND OF FORESTのトリを務めたAimerは「皆さんの大切な人を思い浮かべて聴いてください」と透明感のある歌声で「カタオモイ」を届ける。新曲「Tiny Dancers」披露時には、「私の曲にはあまりないアップテンポな曲です。皆さんの盛り上がってる姿が見たくて作りました」と説明し、観客と共にジャンプして一体感を作り上げた。LAKE STAGEのトリを飾ったsumikaは、「ふっかつのじゅもん」「マイリッチサマーブルース」といったアッパーチューンや「まだどこの夏フェスでもやっていない新曲」だという「ファンファーレ」を披露し会場の熱気を高めていく。片岡健太(Vo, G)は「一番来てたフェスなので、LAKE STAGEのトリのこの光景をお母さんに見せたい!」とLAKE STAGE出演を喜び、本編最後はハッピーな空気感の中で「Lovers」を届けた。
2日目のGRASS STAGEのトリを飾ったASIAN KUNG-FU GENERATIONは、1曲目にOasisの「Columbia」をカバー。意外な選曲で観客を驚かせる。日が暮れ始めた頃、アジカンは「サイレン」「無限グライダー」「ノーネーム」を続けて披露し、会場をエモーショナルなムードで包み込んだ。また「Re:Re:」「リライト」などの人気曲が惜しげもなく届けられると、オーディエンスの盛大なシンガロングが発生。壮観な光景がGRASS STAGEいっぱいに繰り広げられた。ライブ終盤、アジカンは昨年発表の「荒野を歩け」を力強くパフォーマンスしたあと、「今を生きて」で豊かなアンサンブルを届け、本編を終了させた。すっかり日が落ち、夕闇が広がる会場では、アンコールを求める観客がスマートフォンのライトを照らし始める。幻想的な景色が広がる中、アジカンは再びステージへ。サプライズで登場したDr.DOWNERの猪股ヨウスケ(Vo, G)と共に「君という花」をプレイし、大盛況の中この日のライブを締めくくった。
写真提供:rockin'on japan